2017年12月21日 更新

〈山本典正〉日本酒で「誇り高いものづくり」の実現を目指す

「お金とは、繋ぐもの。(山本典正)」

2015.11.30
昨今、女性や海外での人気が高まり注目を集める日本酒。しかし、実際の生産量は、この40年間減少し続け、ピーク時に比べると3分の1となっています。

そんな中、7年前に立ち上げた清酒ブランド『紀土(KID、キッド)』の売上を当初の15倍まで伸ばし、世界最大規模のワイン品評会の吟醸・大吟醸の部では2014年2015 年と連続して金賞・リージョナルトロフィーを受賞している、和歌山県海南市の平和酒造。

品質とセールスの両方を向上し続けているチームを率いるのは、専務の山本典正さんです。京都大学経済学部卒業後、東京の人材系ベンチャー企業を経て、ご実家の酒蔵に入りました。

■造り手と飲み手との距離を縮めていく

ー今回は、東京の青山・国連大学前広場で開催されているFarmer’s Marketの一角で開催されている日本酒イベントにお邪魔しました。日本酒や食べ物はもちろん、音楽や器なども楽しめるブースもあり、賑わっていますね。

日本酒マーケット「AOYAMA SAKE FLEA」は2014年9月、2015年6月に続き今回で3回目の開催です。誰でもふらっと立ち寄れることができて、より幅広い方に楽しんでもらうための企画が好評のようです。

ー平和酒造さんからは、山本さんの他に2人の女性蔵人さんがいらっしゃって華やかです。

蔵人には日本酒セミナーやイベント、試飲販売会など、お客様と接してもらう機会に、積極的に参加してもらうようにしているんです。多くの見知らぬ人と接することは皆にとって易しいことではなく、またコストも掛かることですが、メリットが大きいものです。実際に酒造りをしている人の話を直接聞くことによって、そのお客様にとってお酒はより印象深いものとなります。また、お客様の反応や感想を、造り手がダイレクトに吸収し、反映させることによって製品力が向上します。さらに、お客様の「おいしい」の顔をイメージしたお酒づくりができるようになります。

当社には専任の「営業マン」はいません。あえて言うなら、私だけでしょうか。全ての蔵人がお客様と接する経験を持っているからこそ、そういった仕組みが可能となるんです。

■日本酒造りを夢見て入社した大卒の女性蔵人が、クラフトビールを醸す

ー大手以外の酒蔵では珍しく、大学・大学院の新卒採用を続けられていますね。採用にあたっては何を重視されていますか?

人材採用にあたっては、その人の「可能性」を見ています。あらかじめ「こういう役割を担う人が必要だから」と考えることはありません。集まってきた人を見て、面白いことができるようにフォーメーションを組みます。

昨年から始めたクラフトビールの醸造は、その一例です。「ビールを作ろう」という事業計画があったからではありません。図らずもビール好きの社員が入社したことが端緒となりました。蔵での利き酒の会に、彼女はいつもビールを持ってくるんです。
実は私はビールが得意ではなく、自ら進んでビールを飲むことはありませんでした。しかしビール好きの彼女が持ってくるクラフトビールを度々飲むようになり、しばらくたったある夏の暑い日、ごく自然に「ビールが飲みたい!」という感情が湧き上がってきたのです。我ながら驚きました(笑)。そして、彼女の意欲を確認して、ビール醸造を担当してもらい、清酒『紀土』と同じ仕込み水のクラフトビール「HEIWA CRAFT(ヘイワ クラフト)」が生まれました。

東京農工大出身で入社5年目の髙木加奈子さん。 お米作りも愛している彼女は、『紀土』の代表的な 酒米『山田錦』の生産者でもある。

■「ものづくりの人」の成功モデルを作りたい

ー「日本酒の蔵人」を越えた仕事の機会があるというのは、造り手にとって刺激的な環境ですね。

企業もまた一つの生命体です。蔵人一人ひとりのポテンシャルを引き出していくことが、継続的な成長の要と考えています。

日本酒造りのトップは「杜氏(とうじ)」といい、多くの酒蔵では、経営者たる「蔵元」と異なる現場監督の役割を果たしています。杜氏は昔ながらの職人気質の方が多く、当社の柴田杜氏とも数年にわたってディスカッションを重ねました。その結果、今や彼が造り手の皆の力を伸ばしてくれるようになり、新しい芽が続々と育ってきています。私が酒造りそのものからは距離を置いているからこそできることもあるようです。
蔵人には、自身をプロスポーツ選手やミュージシャンと同じと考えるように、と伝えています。好きなことをして生活を営むために何をすべきか、は与えられるものではなく、自ら見つけなければいけません。さらに、期待を寄せてくれる人に、結果で返さなければなりません。我々にとって結果とは、「美味しい」ということです。しかも、必ずしもお客様の望み通りであることが正解ではなく、それ以上、時に、違うアプローチで驚きや感動を与えることも必要です。

日本酒の酒蔵は基本的に世襲制で、販売にも免許が必要な、いわば参入障壁の高い業界です。そのため、外から入ってくる人の成功の青写真というものがありません。私は、日本酒の「ものづくりの人」の成功モデルを作りたいと思っています。成功事例としてモデル化できれば、他も真似し始めるでしょう。外からいい人材が流入してくることが、業界の発展に繋がります。
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