起業する夢を支援し、日本にイノベーションを起こしたい

インタビュー

株式会社オプトホールディングの創業者であり、代表取締役社長CEOの鉢嶺 登氏は、「成長に挑戦する人や企業を応援して、次代の繁栄を築くプラットフォームになる」という夢=ミッションを掲げます。起業家にして、起業を応援する事業の代表でもある氏の生き方に学びませんか。

株式会社オプトホールディングの創業者であり、代表取締役社長CEOでもある鉢嶺 登氏に、起業の経緯や企業としての今後の目標、そして「社員の幸せこそ重要」という企業理念に込められた想いなど、 熱く語っていただきました。

3年で会社を辞めて起業することを決めていた

エントランスにはグループ企業のスマートなロゴが並ぶ。

STAGE編集部:もともとは不動産業界で働かれていたそうですが、そこからダイレクト・マーケティング業での起業に至ったのにはどんな理由があったのでしょうか?

もともと3年で会社を辞めて起業することを決めていたんです。起業するなら、何も失うことのない20代か、その業界でのノウハウをたっぷり培った40代のどちらかだと思ったのですが、40代まで待てない。住宅ローンもないし、結婚もしていない20代のうちに起業しようと最初から心に決めていました。

不動産業界には3年しかいなかったので、経歴も人脈もぜんぜん足りない。ですから、不動産業での起業ははじめから考えていませんでした。「初期投資のかからないビジネスってなんだろう」と考えていた時に、アメリカでダイレクト・マーケティング業が伸びていることを知り、「これはこれから日本で伸びるだろう」とダイレクト・マーケティングでの起業を決めました。

STAGE編集部:起業されてから今までの間で、ご自身の目標や夢にはどのような変化がありましたか?

上場までは明確な目標がありました。「3・3・3計画」という、3年後に売上30億、利益3億を達成しようという明確な目標です。社内がこの目標に向かって一体化してやっていました。

STAGE編集部:そして、2004年にジャスダックへ上場しています。

上場してからは、周りからの見方が大きく変わりました。金融機関にしても取引先にしてもそうですが、良くも悪くも日本の場合は、ブランド力や信用力を見られますから。例えば、どなたかに会いに行きたいといったときにも、以前はなかなか会ってもらえなかったですが、上場後は誰にでも比較的会えるようになった。これは大きかったですね。

ただ、これは反省になるのですが、「上場はあくまでもひとつの経過ポイントでしかない」と以前から言っていたものの、上場後に明確な目標があったかというと、やっぱりない時期がありました。この時期はあまり良くない時期でしたね。

その後、「事業創造プラットフォーム」という新たな目標を設定することができて、いまはまたそれに向かって邁進できています。そういった意味では、起業時から振り返ると目標は変わってきていますね。規模感としての目標もずいぶん変わりました。

成長に挑戦する人と企業を応援する

STAGE編集部:オプトは、複数の異なる事業を持っていますが、今後、特に注力していきたい事業はなんでしょうか?

2015年の4月からオプトホールディングと、従来のネット広告のオプトを分社化しました。そして、ネットマーケティング事業と投資育成事業と大きく2つの柱を据えて、それをホールディング全体で見ていくことにしたんです。

この2つをあわせたものを、我々は「事業創造プラットフォーム」と呼んでいます。「成長に挑戦する人や企業を応援して、次代の繁栄を築くプラットフォームになろう」というのがホールディングとしてのミッションです。

企業の成長を大きく捉えたときに大事なことは、「人」「モノ」「お金」と3つあります。我々にとっての「モノ」を提供しているのがマーケティング。ですから、マーケティングを通じて成長企業を応援しています。

それ以外に「人」の面と「お金」の面。この2つを加えてサポートしていくと、企業は俄然成長しやすくなる。そこで、人のサポートと、出資。この3つによって日本経済が繁栄していくような成長企業をどんどん生み出していこうというのが、大きな目標になっています。

STAGE編集部:投資育成事業は、マーケティング事業とは少し違った分野かと思いますが、いつごろから取り組んでいたのでしょうか?

マーケティング事業で上場した後、今まで約10年間125件、約20億円の投資実行をしてノウハウを積んできました。その過程でつかんだノウハウを活用し、ネット業界の人脈等を活かす事で、強みが完成しました。

そこで、従来のベンチャーキャピタリストの方とうまく協力をすることによって、お金のサポートと経営のサポートの両方を行なっていく、という形を目指しています。

STAGE編集部:投資育成事業をやっていくうえでは、将来性や成長性のある会社に出資をすることが不可欠ですが、それを見抜くポイントは?

結局は、「社長」そのものだと思います。

ベンチャー企業ですので、その社長がどんな会社を作ろうとしているのか、その志の大きさ、夢の大きさ、世界観とか、どんな社会を作ろうと思っているのか―—。こういうところが非常に重要だと感じています。

どんなに優れたビジネスモデルであっても、熱い想いや強い意思がないと会社が成長し続けることは難しいですし、なかなか上場はできないと思います。

上場は簡単ではないので、当然うまくいかないことのほうが多いのです。それを続けられるかという意思の強さが必要だと思います。

「自立」のなかに社員の幸せがある

STAGE編集部:企業理念の中に「社員の幸せこそ重要」とありますが、普段、社員に対して特にどんな想いを持って接していらっしゃいますか?

起業時から振り返ると会社としての目標はずいぶん変わりましたが、実は 「作りたい会社像」というのは起業当初から全く変わっていません。

社員、顧客、株主のどれが大事なのかという議論はいろいろありますが、私の中では社員がとても大事です。働きやすい環境、休みを取りやすい環境づくりはもちろんですが、成長したい、勉強したいという人のサポートを積極的に行なっています。

STAGE編集部:今回、新たな社員研修として「お金の教養」を身につけるためのライフプラン講座や資産運用講座を導入されました。このような背景にはどういった想いがあるのでしょうか?

私の中では非常に強い想いがあります。「社員の幸せこそ重要」といっても、幸せって人それぞれですよね。そんな中で「社員の幸せとは何か」と考えた時に出てきたのが、一言で言うと「自立」でした。

では自立とは何か、と考えたときに、「職業的自立」と「経済的自立」と「精神的自立」。この3つを成し遂げれば、必然的に幸せになれるのではないか。そういう仮説を持っています。

「職業的自立」というのは通常、会社が行なっている研修であったり、若い人たちにどんどん責任のある仕事を与えたりと、比較的提供しやすいですよね。ですが、「経済的自立」と「精神的自立」というのはなかなか難しい。どうしても社内の研修プログラムだけだと「職業的自立」に偏ってしまっているという一面がありました。

どうしたら、「経済的自立」や「精神的自立」を支援するプログラムを提供できるのかな、とずっと考えていたときに、ご縁もあって「お金の教養スクール」という形で研修を導入することができました。

STAGE編集部:ずっと前から「お金」に関する研修を提供したかったと。

実は、私自身も、有名な「金持ち父さん、貧乏父さん」という本を読んで、かなり影響を受けたので。あの本に刺激を受けて、実際に会社も作りましたしね(笑)。

以前は、私自身が講師になって「株式投資講座」をやってみたこともあるくらいです。ただ、そもそも投資したくても資金がないという社員も多く、若い人にはなかなか難しくてうまくいきませんでした。

ですが、年々結婚率や平均年齢が上がってきて、30歳を過ぎて将来の自分のライフプランを真剣に考える社員も増えてきました。そうした年代の社員にとっては、生活とお金のことは切っても切り離せないですよね。社員にとってお金の悩みが出てくるタイミングなのかな、と感じていたので、今回の研修に非常に期待をしています。

周りの利を考えるほうが、自分の考え方も大きくなる

STAGE編集部:これから起業したいと考えている人たちに対してどんなことを伝えたいですか?

大きく分けて2つあります。

一つ目は「ぜひ起業して下さい」ということです。

日本は、起業するのにすごく恵まれています。こんなに起業に失敗しても生きていける、完全なセーフティネットがある国はそうそうありません。日本に生まれただけでかなりアドバンテージがあるので、ぜひ起業してほしいです。

もう一つは、周りの資源をどんどん使ってほしいということです。

オプトの社員にもこれまで「どんどん起業しなよ」と言ってきましたが、実際に起業して会社を大きく成長させることができている社員は非常に少ないんです。 その間にコツコツと信用を積み重ねてきて、顧客基盤を作っていくわけですが、非常に時間がかかってしまうのです。

自分自身も、起業してから軌道に乗って安定的に黒字化できるまでに7年かかっています。インターネットビジネスの世界で7年というと、「一昔前」。それだったら、オプトのビジネスの基盤や資産を使って起業をしたらどう?株についての責任も担保するよ、と社員にも言っています。社内でも、ビジネスプランをブラッシュアップする研修プログラムを作っていますし、そのプランで実際に起業してもいい。

社員だけでなく、外部で起業したいという人とビジネスプランとのマッチングも始めていますので、私たちの持っている資源を使って、あまり大きなリスクを持たずに短期間でテイクオフ=起業できる選択肢として、見ていただけたらいいな、と思っています。

社内にある「オプ図書館」。 役員それぞれのおすすめ本が自由に借りられる。

STAGE編集部:自らのビジネスにとどまらず、人や企業の成長を応援することにこだわる理由は?

自分だけの利を考えるよりは、周りの利を考えているほうが、当然自分の考え方も大きくなるし、まわりの人もついてきてくれますね。

私は本が大好きで、社内にも自由に本が借りられる「オプ図書館」を設けているのですが、中学1年の時にデール・カーネギー著の「人を動かす」という本を読んでとても感銘を受けました。そこから自分のことよりもまわりの人たちのことを考える、というベースができたのではないかと思います。

STAGE編集部:「周りの利」とは、分かりやすく言うとどういうことなのでしょう?

私の中でベースになっているのは「日本」なんです。昔から戦国武将が大好きなので、その影響もあるのかもしれません(笑)。

ですから、私の中のベースの思考の単位として「日本をどう良くするのか?」というのが常にあります。人と企業の成長を応援することで、日本にイノベーションを起こしていきたいというのが私の夢です。

鉢嶺 登さん

株式会社オプトホールディング代表取締役社長CEO

1967年6月生まれ。千葉県出身。1991年、早稲田大学商学部卒業。森ビル株式会社にて3年間勤務の後、26歳の時に米国で急成長しているダイレクト・マーケティング業を日本で展開しようと株式会社オプトを設立。eマーケティング事業に特化することで、2004年にジャスダックに株式公開。2013年には東証一部上場を果たす。 株式会社オプトホールディング http://www.opt.ne.jp/holding/

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