2018.10.10
筑波大学準教授でありながらメディアアーティストとして活躍し、時代の寵児とも言われる落合氏ですが、彼の「将来の仕事について」の考え方をもっと詳しく知りたいと思ったところ…ピッタリのテーマの書籍を発見。ホリエモンこと堀江貴文氏との対談をまとめた『10年後の仕事図鑑』。
AI、仮想通貨、モチベーション格差、働き方など様々なテーマについて、激動の近未来をどう生きればいいのか?両氏の率直な意見が交わされていました。今回はその中でも印象に残った話を中心にまとめてみました。
「人間の仕事が激減するタイミング」とは?
ディープラーニングをしながら急速に発達している人工知能ですが、現在のところできるのは、画像処理と音声認識まで。つまり映像から指名手配犯を探し出すような「目」と「耳」はあるけど、実際に作業をする「手」はありません。しかし、この先ロボットとAIが組み合わさり単純作業を担うことができるようになった時、私たちの仕事はいよいよ激減すると言われています。
しかし、すべての作業が一瞬にしてAIにとって代わるのかというとそうではなく、まずは「半人力、半AI」の段階に入るといいます。例えば、介護業界では本来ケアサービスのために存在するスタッフが人の搬送や輸送に多くの時間を削られ労働力不足に悩まされていますが、AI搭載ロボットにより負担を減らそうという研究が進んでいます。
回転ずしの「くら寿司」も、席の案内などの接客は人間が、注文や食べたお皿の枚数のカウントなどは機械が行うことで仕事の効率化が進んでいます。このように、まだAIにはできない「おもてなし」部分を人間が担うことで仕事は確保できるうえ、面倒な作業はAIがやってくれるわけですから、「不当に搾取されたと感じる労働者」たちがより効率的に働けるメリットもあるのです。
もしも、AIに職が奪われてしまったら?
オックスフォード大学准教授のマイケル・A・オズボーン氏が発表した「雇用の未来」の論文では「あと10年で消える職業・無くなる仕事」のリストも話題になりましたが、実際に自分が働いている仕事がAIによる作業効率化の末に無くなってしまう可能性はゼロではありません。ですが、堀江氏はこの論文を「血液型占いのようなもの」と一蹴。
「AIに仕事を奪われるかもしれない」と未来の心配をするよりも、これからの働き方に目を向けるべきだといいます。そして、そのポイントを両氏は次のように紹介しています。
「自分にしかできない状況」を創り出そう!
落合氏は、あらゆるものに市場原理が働き最適化される時代に必要なのは、なにも特殊能力を伸ばすことではなくて「複雑な仕事をかけ持ちすること」でいいと説きます。落合氏自身、大学教員であり研究者、経営者、メディア技術を用いたアーティストを掛け持ちしていますが、これを並行して行うAIは開発するのに莫大なコストがかかるはず。その結果「だったら落合にやらせておけ。」となるのだといいます。
能力を磨くのには限界もあるので、掛け持ちして「自分の価値を複雑化する」ことで唯一無二の存在になる作戦。これは将来の働き方の参考になるのではないでしょうか?では、堀江氏はどうでしょう。
自分の価値は「仕事ではなく趣味で生み出せ」!
堀江氏は、単純労働はおろか経営者の仕事ですらAIに代替される時代において目指すべきは「本気で遊ぶように働く人」だと言います。その代表的な存在はユーチューバーですが、彼らに共通するのは「作業にハマっていること」。つまり、好きなことに没頭しているうちに唯一無二の存在になり、それを仕事にしている人々です。
現在、会社に雇われて働いている人が急に「好きなことを仕事にしなさい」と言われてもなかなか思考の切り替えが難しく「そもそも好きなことがない」と嘆く人もいるかもしれませんが、没頭してはじめて好きという感情が芽生えることも多いので、まずは興味がある事を突き詰めてみるのはどうでしょうか?
「未開の地を築くのはいつだって人間である」
今のところAIはゴールを与えれば人間には太刀打ちできないスピードと精度でそれを処理するのに「これがやりたい」という動機を持ちません。つまり、モチベーションを持って働けるところに人間の役割があり、その手段としてコンピューターがあると考えれば、少なくとも技術に使われることはありません。
例えば、職人技術も将来的にAIや3Dプリンターが代替すると言われていますが「より良い作品を作る」というモチベーションさえブレなければ作業の効率化にAIを利用できたり、技術を組み合わせて新しいプロダクトができたりするかもしれません。このようにAIや最新技術と向き合うことで、10年後の仕事の在り方や、自分の働き方を考えてみると良いのかもしれませんね。
本書は「お金」や「幸福」についても論じられていますが、特に「未来の仕事、働き方」に関わるAIの話題を中心にまとめてみました。本書を読めば、少なくとも「AIに仕事を奪われる」という考えは変わり、将来の働き方を考えるきっかけになり得る一冊だと思います。