【IPO研究】6/19メルカリ上場が異次元すぎる。営業赤字でも公開時時価総額は4千億円!

経済
フリマアプリで有名なメルカリが6月19日に東証マザーズに上場します。

19日に大注目のユニコーン企業「メルカリ」の上場!

フリマアプリで有名なメルカリが6月19日に東証マザーズに上場します。

上場前の投資家の株式購入の引き合いも強いようで途中に公開価格の仮条件が上方修正されるということもありましたが、メルカリに増資資金で入る調達額は最大約630億円という、公開時の時価総額は4千億円超の予定です。

時価総額4千億円というのはピンと来ないかもしれませんが、現在マザーズで時価総額トップのミクシィが約2千5百億円ですので、マザーズでトップの時価総額に躍り出る見込みです。

マザーズに上場するベンチャー企業はIPO時の時価総額が数十億から数百億円が主流ですので、設立5年の会社にして破格の上場サイズというということになります。

未上場企業で時価総額10億ドル以上のベンチャー企業を(米国発祥の言葉なのでドル換算で語られます)、幻の珍獣になぞらえて「ユニコーン企業」と呼びますが、日本では数少ないユニコーン企業としてメルカリのIPOはかねてより注目されていてメディア等でも色々な観測がありましたが、このたび満を持してのIPOとなりました。

読者の多くの方もメルカリを使用したことがあるのではないでしょうか。

1千万人がアプリを利用し、2018年1~3月の四半期の3ヶ月間で約1千億円の流通額を誇っています。

形態に違いはあるものの類似していてよく比較で出される国内最大のネットオークションのヤフオクの3ヶ月間の流通総額は2千~2.5千億円程度ですから、猛烈に流通額が追い付いています。なお、ヤフオク自体も伸び自体は微増なものの流通額は増加しており、メルカリの台頭はヤフオクの市場を食ったわけではなく、スマホの普及に伴って「手軽にフリマアプリで身の回りの品を売買」という新たな市場を創ったと言えます。

(メルカリ目論見書より)

アプリを使ってユーザーが売買した流通額の10%の手数料がメルカリの収益になります。

2016年6月期は売上が122億円、昨年2017年6月期の1年間で年間2千億円以上の流通量をさばき、売上が前期比1.8倍の220億円です。本年度の2018年6月期は前期比1.6倍の358億円になる見通しだと発表しています。2017年7月~2018年3月までの9ヶ月間での売上高は261億円で進捗率は73%ですので、見通しに対して概ね順調な進捗になっています。

実は営業赤字のメルカリ

これだけの収益を上げていて、めちゃくちゃ利益が出ているのかと思うところですが、実は赤字で、昨年2017年6月期の営業利益はマイナス27.8億円となっています。本年2017年7月~2018年3月までの9ヶ月間ではマイナス18.9億円の営業赤字です。

この主な理由は、メルカリは米国等でも日本と同じ「メルカリ(Mercari)」のサービス展開を行っていて、海外事業がまだまだ立ち上がっておらず、先行投資の段階にあるためです。目論見書によると、累計ダウンロード数で日米合計の34%が米国ですが、流通総額では全体の6%しかありません。

表の登録MAUというのは、アプリをダウンロードしたユーザーのうち1ヶ月に一度以上メルカリを使用したユーザー数ですが、ここだけ米国の内訳の情報がありません。流通額を見る限り、米国でもアプリのダウンロードはされているが、まだまだあまり使われていない状況のようです。

メルカリが日本と米国でどのような収益構造になっているかは詳細開示はありませんが、米国事業は子会社で行っています。連結決算の情報と、国内事業はメルカリ本体会社単体の情報に近いものと思われます。正確には国内にも複数の子会社があり、国内子会社の業績は連結に含まれますので、連単差分イコール海外にはなりませんが、ひとまず連結と単体の差分を海外業績と推定することにして見てみます。

業績動向(△はマイナス=損失を意味します)

2016年6月期 連結 売上122億円 営業利益△0.4億円、単体 売上122億円 営業利益32億円、連単差分(海外?)売上0億円 営業利益△32.4億円

2017年6月期 連結 売上220億円 営業利益△27億円、単体 売上212億円 営業利益44億円、連単差分(海外?)売上8億円 営業利益△71億円

2018年3月期(9ヶ月)  連結 売上261億円 営業利益△18億円(*単体は当年度の経過の数値の開示なし)

このように見ると、国内では大きな利益を出していますが、海外で事業拡大のために国内利益以上の販管費を使っているということです。

海外では売上はまだあまり立っていませんが、従業員数は連結596人、単体400人で、連単差分(多くは海外?)は196人ですので、日米の事業規模の差に比べて米国での人員をかなり積極的に採用して増やしている様子が窺えます。

もう1つのキーポイントはテレビCM等の「広告宣伝費」を巨額に使っていることです。

2016年6月期 連結68億円 単体54億円 連単差分(海外?) 14億円

2017年6月期 連結141億円 単体102億円 連単差分(海外?) 39億円

2018年3月期(9ヶ月)  連結64億円(*単体は当年度の経過の数値は開示なし)

メルカリはサービスリリース後すぐから未上場ベンチャーの中では巨額な資金調達をし、大量のテレビCM等に広告宣伝費を使ってサービスの知名度を上げ、積極的な優秀なエンジニアの採用やサービス自体の改良・強化と合わせて短期間に他の追随を許さない領域にまでサービスを拡大してきました。当初メルカリよりも先行して類似サービスをしていたフリルというサービスは既に楽天に買収されています。

昨年は国内に年間で100億円ものレベルで広告宣伝費を掛けています。海外は国内に比べれば少ないものの、それなりに大きな広告宣伝費を使っているようです。

メルカリ単体で、2017年6月期の広告宣伝費+営業利益は146億円です。広告宣伝費を大量に掛けているからこそ流通額が拡大・維持されるので簡単に急激に減らせるものでもないでしょうが、売上212億円に対しては驚異の利益率と言えるでしょう。逆に売上収益の約半分の48%を広告宣伝費に突っ込んでおり、サービス拡充のアクセルの踏み込み方がかなり凄いとも言えます。

メルカリの売上はユーザーが使った流通総額によるものではありますが、利益は広告宣伝費の使用額によって大きく変わるので、売上はともかく利益に関しては予想にちょっと足りなくても広告宣伝費の予算管理で比較的予想に当てに行きやすい業態ではあります。

実際のところは分かりませんが、業績予想で利益を開示することによって、このような単年度の利益予想を当てに行くために短期的なコストコントロールをすることは事業の本質ではなく、事業環境の変化に柔軟に対応し先行投資に踏み込むべきタイミングで踏み込み、より長期的な高成長のために先行投資を躊躇するべきではないと経営者は考えているのでしょうか。

カテゴリ特化型のアプリのリリースや新たなシェアリングサービスのリリース、金融業のメルペイや仮装通貨への参入の公表、関連サービスへのベンチャー投資など、多くの新規事業も行っています。ネットサービスの成否は行くべきタイミングに合わせて資金をどう投下するかが重要です。

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