2019.5.16
鑑賞者が制作に参加する「参加型アート」
美術(アート)といえば、それを見る人(鑑賞者)は受け身なのがふつうです。
美術展を企画し、国内外の美術館から作品を借りてきて解説文をつけて展示・公開するのは「学芸員(キュレーター)」という専門家の仕事で、美術を鑑賞する人は入場料を支払ってそれを見ることしかできないと思われています。
美術作品を創作するアーティスト、キュレーター、鑑賞者、そして美術作品について評論を書いたり、審査を行う批評家が、完全に分かれて存在しているのが現代の美術界です。
しかしそうではなく、鑑賞者が作品制作の過程に関わったり、展示されている内容の一部を担うような美術作品もいま、現れてきています。それを「参加型アート(Participatory Art)」と言います。
参加型アートには、アーティストが通りがかりの人に頼んで好きな色をつけてもらうもの、一筆加えてもらうもの、鏡に映り込んだ鑑賞者の姿が作品の一部をなしているもの、会場で作品を展示している間にアーティストが鑑賞者の意見を聞きながらどんどん手直しをしていくものなどもあります。
全国のアートプロジェクトにもひろがる
新潟県の十日町市と津南町にまたがる越後妻有地域で今年は4~5月の10連休に行われた「大地の芸術祭・越後妻有アートトリエンナーレ」では、地元の住民が自発的に制作に加わって、アーティストとほぼ同等の立場でアイデアを出しあい、制作の作業を行った作品が見られました。
妻有の住民は共同制作者であり、鑑賞者でもあります。
住民は美術の専門の勉強などしていない「素人」なので途中で予測不能なハプニングが起こることもありますが、それもかえって斬新なアイデアを生み出すかもしれないと、アーティストも住民とのコミュニケーションを楽しみにしています。
八戸市の「南郷アートプロジェクト」、新潟市の「水と土の芸術祭」、近江八幡市の「BIWAKOビエンナーレ」、神戸市の「六甲ミーツアート芸術散歩」など、全国で地域に根差したアートプロジェクトがいろいろ開催されていますが、そこでは参加型アートの作品展示が着実に増えています。