2017年12月21日 更新

〈にしのあきひろ〉実はまだプロローグにすぎない―『えんとつ町のプペル』で僕が本当に伝えたいこと

「信じぬくんだ。たとえひとりになっても」。 そんな、静かでありながら、刺激的なフレーズで始まる『えんとつ町のプペル』。制作期間4年半。総勢35人のクリエイターの「完全分業制」という常識破りのスタイルによってこの絵本はこの世に誕生した。

STAGE編集部:そう言われると、理由が気になります(笑)
たぶんこの絵本が2、3年後には映画になるので、そのときか、その手前ぐらいに『えんとつ町のプペル』という小説が出るので、そこで明らかにするんですけど、えーとね、えーと、結論は「お金」なんです。
STAGE編集部:お金! それはかなり意外です。
『えんとつ町のプペル』っていうのは超、超、超、経済のお話なんです。

1920年か30年かに、ドイツの田舎のほうの町で使われた地域通貨で「ゲゼルマネー」っていうのがあるんですけど。僕、世の中のお金のなかで一番面白いなって思ったお金がそれなんです。

ゲゼルマネーって、まあ言ってしまえば「腐るお金」なんですね。時間が経ったらどんどん価値が下がっていく。

りんごでも靴でも鞄でも、世の中のものはすべて時間が経てばどんどんどんどん価値が下がっていくのに、お金だけは不老不死じゃないですか。いまのところ。それを1回やめようぜ、お金もちゃんと歳をとらせて腐らせていこうぜっていうのが「ゲゼルマネー」なんです。あれは確か、シルビオ・ゲゼルっていう人が作っちゃって、実際に地域通貨として使われたんですが、それやっぱりよくて。腐っていくお金なので、最初は1万円だったのが来月には9,900円になっちゃって、その翌月には9,800円になっちゃう、っていう感じにどんどんどんどん価値が下がっていく。そうすると、みんなどんどんどんどんお金を使うんですよ。

そうすると、その町はすげえ盛り上がっちゃうわけです。それをよしとしなかったのが、お金を作る人、国側の人ですよね。銀行にお金を預けて利子で生きている人たちからすると、このお金が出回っちゃうとよろしくないということで、つぶしたんですよ、これ。で、今僕たちが使っているような不老不死のお金で行けってなって。でもそうすると途端に失業者ばっかりになっちゃうんです。
STAGE編集部:興味深いお話ですね。
何が言いたいかっていうと、えんとつ町はそのゲゼルマネーで回っているっていうことなんです。閉ざされた町のなかで、みんなどんどんどんどんお金を使って、すげえ盛り上がってるんです。

えんとつ町の支配者は、何もいじわるをしてこの町の人たちをここ閉じ込めたわけではなくて、外の経済が入ってきちゃうとこの町が殺されてしまうから、町を守るために隔離したっていうことですね。
STAGE編集部:守るために、隔離したと。
それは本当に、守るためですよ。だけど主人公のふたりはそんなこととはつゆ知らず、外に飛び出せって出て行くんです。外の世界を見ようっていうことで。これが果たして正義かどうかっていうのは難しいところですよね。町の閉塞感から、閉じ込めた人がすげえ悪い奴みたいな感じに思えるかもしれないけれど、外に飛び出すことが勧善懲悪になるわけでもなくて、ただ正義の折り合いがつかなかっただけの話。

■あれ、日本がそうじゃんって

STAGE編集部:なぜ、「お金」をテーマに据えたのでしょうか。
やっぱりいろいろ見ていくと、全部「お金」だなと思うんですよ。戦争とかの揉めごとも結局お金だなって、なんで僕たち人間は自分の生活を便利にしようと思ってお金を生んだのに、いつから主導権をお金に持っていかれたのかなって。僕、ちょっとそこが気持ち悪くて。
STAGE編集部:うーん、本当ですね。
絵本の中には出てこないですけど、えんとつ町の支配者は、「お金の奴隷解放宣言だ」「もう1回主導権を人間に取り戻そう」って、えんとつ町を作ったんです。それは、いいことだと思います。なんかその、「守るためにはこんな方法もあるよ」っていうのを提案したんです。だから、経済の話なんです。
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