2018.11.23
FRB当局者から慎重発言が相次ぐ
米国中間選挙が終わってからも、米国は12月にも利上げが行われ、また、2019年にも3回の利上げがあるということが市場コンセンサスになっていました。そんな中、FRB当局者から2019年度を占う大事な発言が連発されました。しかも、景気見通しという重要なヒントを備えて。
1 )クラリダ副議長が公の場で初発言
2018年11月16日にFRBのクラリダ副議長がCNBCのインタビューに対して「米金利はFRBが中立金利(2.5%〜3.5%)と見なす水準に近づいている」との見方を示しました。この発言をきっかけに市場関係者の間に米国が2015年から開始した引き締めサイクルが近く終了するのではないかとの思惑が広がりました。ちなみに、クラリダ副議長は今年の8月に上院議員から副議長指名を受けたばかり。つまり、この日の発言は初めての公の場での発言となり市場関係者に注目されていた中での「ハト派」発言でした。
2018年11月16日にFRBのクラリダ副議長がCNBCのインタビューに対して「米金利はFRBが中立金利(2.5%〜3.5%)と見なす水準に近づいている」との見方を示しました。この発言をきっかけに市場関係者の間に米国が2015年から開始した引き締めサイクルが近く終了するのではないかとの思惑が広がりました。ちなみに、クラリダ副議長は今年の8月に上院議員から副議長指名を受けたばかり。つまり、この日の発言は初めての公の場での発言となり市場関係者に注目されていた中での「ハト派」発言でした。
2 )カプラン・ダラズ地区連銀総裁が慎重発言
カプラン連銀総裁は、TVインタビューで市場見通しに対して慎重な発言を行いました。「米経済は自身の予想よりも力強く推移しているものの、来年はトランプ政権の税制改革による恩恵が薄れるほか、世界的な経済情勢が軟調になるなどの向かい風にさらされる」との見方を示しました。このカプラン総裁は、ヘッジファンド出身の学者、また、米国ゴールドマン・サックスの元副会であったことから経済見通しに明るいことで知られています。
カプラン連銀総裁は、TVインタビューで市場見通しに対して慎重な発言を行いました。「米経済は自身の予想よりも力強く推移しているものの、来年はトランプ政権の税制改革による恩恵が薄れるほか、世界的な経済情勢が軟調になるなどの向かい風にさらされる」との見方を示しました。このカプラン総裁は、ヘッジファンド出身の学者、また、米国ゴールドマン・サックスの元副会であったことから経済見通しに明るいことで知られています。
3 ) パウエルFRB議長も追撃の発言
パウエル議長が世界経済の見通しについて慎重発言で追撃しました。FRB当局者がどの程度のペースで利上げを実施すべきか検討する中で、「世界経済の成長鈍化が懸念事項として台頭している」との認識を示しました。
パウエル議長が世界経済の見通しについて慎重発言で追撃しました。FRB当局者がどの程度のペースで利上げを実施すべきか検討する中で、「世界経済の成長鈍化が懸念事項として台頭している」との認識を示しました。
さて、このようなFRB当局者からの重要発言が続き米国10年金利は3.2%から若干低下。2019年以降は、利上げスピードが鈍化するのではないかとの思惑が広がりました。これだけの関係者がそろいも揃ってこのような発言をすればだれでもそう思うはずです。
2019年6月の専門者会合
さて、このような少し厳しい発言が続く中、FRBは11月15日に金融政策の枠組みを2019年に再点検すると発表しました。実はこの発表の真意については明確にされてません。そのため、市場関係者の間でも今の時点での解釈は様々といったところです。例えば、トランプ大統領からの「引き締め」非難をかわすためだとか、国民に対する正しい政策判断を行っていることをアピールするためのものであるとか。
しかし、この再点検の真意は、「2019年の経済情勢を見越した対応」なのではないかと考えられます。その理由は2つあります。
1 )利下げ余地が少ない
2015年から開始された米国の利上げは、今年で3年目を迎えました。その結果、現時点では政策金利は2.25%まで上昇してきました。しかし、過去と比較してみるとこの金利水準はすごく低位であり、政策当局者からすれば「利上げしてもここまでしか上げられない」、「もし景気が後退したら利下げの余地があまりにも少ない」といった不安だらけであることが間違いありません。世界経済を牽引してきたFRBとしては、過去の景気後退局面では約5%もの利下げを断行し景気の下支えをしてき歴史から、少なくとももう1%は利上げしたかったという本音が聞こえてきそうです。だからこそ、この状態で景気後退を迎えることだけは絶対に避けたいと考えていると思われます。
2015年から開始された米国の利上げは、今年で3年目を迎えました。その結果、現時点では政策金利は2.25%まで上昇してきました。しかし、過去と比較してみるとこの金利水準はすごく低位であり、政策当局者からすれば「利上げしてもここまでしか上げられない」、「もし景気が後退したら利下げの余地があまりにも少ない」といった不安だらけであることが間違いありません。世界経済を牽引してきたFRBとしては、過去の景気後退局面では約5%もの利下げを断行し景気の下支えをしてき歴史から、少なくとももう1%は利上げしたかったという本音が聞こえてきそうです。だからこそ、この状態で景気後退を迎えることだけは絶対に避けたいと考えていると思われます。
2 )しかし経済情勢に変化の兆しが見え隠れし
このようにFRBが十分な備えをする前に、好調であった世界経済に変化の兆しが見えてきました。例えば、中国経済の減速、テック企業の業績見通しの悪化など。また、IMFなども調査機関も見通しを下方修正しています。一方の米国はといえば、物価は2%上昇、賃金上昇率や不動産価格も上昇、雇用も完全雇用状態とインフレの兆しが見え隠れしています。今のFRBの心境は、「利上げもしたい、でも、利上げで世界経済の減速のキッカケを作りたくない」という、とてもとても悩ましい状況に置かれているのでないでしょうか。
このようにFRBが十分な備えをする前に、好調であった世界経済に変化の兆しが見えてきました。例えば、中国経済の減速、テック企業の業績見通しの悪化など。また、IMFなども調査機関も見通しを下方修正しています。一方の米国はといえば、物価は2%上昇、賃金上昇率や不動産価格も上昇、雇用も完全雇用状態とインフレの兆しが見え隠れしています。今のFRBの心境は、「利上げもしたい、でも、利上げで世界経済の減速のキッカケを作りたくない」という、とてもとても悩ましい状況に置かれているのでないでしょうか。