2019年11月7日 更新

【特別講演】竹中平蔵と考える私たちのお金の未来

⽵中平蔵⽒は、経済財政計画担当⼤⾂、⾦融担当⼤⾂、郵政⺠営化担当⼤⾂、総務⼤⾂を歴任し、⼩泉内閣を⽀えました。現在も政策アドバイザリーを務める⽵中⽒が、キャッシュレスが導く私たちの未来について提⾔します。(「お⾦の教養フェスティバル2019」基調講演より)

2019.2.5

キャッシュレスが導くもの

今⽇のフェスティバルのテーマが「キャッシュレス」だと伺いました。⽇本はまだまだ現⾦主義ですが、実はキャッシュを使っていると、ビッグデータがたまらないわけです。このビッグデータをためていくためには実はキャッシュレスというのはどうしても通らなければいけない道です。キャッシュレスは便利ですが、便利かどうかということを超えて、第4次産業⾰命のインフラとして、このキャッシュレス化が⼤変重要になっているのです。
AI、ロボット、ビッグデータ、そういうものが寄り集まって今までとは全く違う産業や社会を作る、今、そういう時代になりつつあります。私たちは積極的にこの第4次産業⾰命の中で勝者になっていかなければいけない、ということだと思います。

平成を振り返る。30 年で⽇本はどう変わったか

平成30年間をまとめると、世界も⽇本も実はものすごく変化をしました。⽇本の⼈⼝は、途中まで少しずつ増えて、途中から少しずつ減って、平成元年と今とでは、⽇本の⼈⼝はほぼ同じです。⼀⽅でアメリカの⼈⼝は、過去30年で30%増えました。イギリスの⼈⼝でさえ15%増えました。⼀⾔で⾔うならば、この30年間、世界は⼈材の取り込み競争をやってきた、ということです。それに対して⽇本はこれに背を向けてきた。この差は極めて⼤きいです。1⼈当たりの⽣産性が全く同じでも、⼈⼝が3割増えればGDPは3割増えます。⽇本はデフレを放置して、⼈⼝の取り込み競争に背を向けてきたということです。
アメリカにはGAFA(ガーファ)という巨⼤な企業があります。グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン。ここで働いている主要メンバーの多くが、移⺠か、移⺠の⼦どもだという⾵に⾔われています。例えばスティーブ・ジョブズ。スティーブ・ジョブズは2011 年に亡くなりましたが、iPhone やiPad をお持ちの⽅も多くいらっしゃると思います。これらは全部スティーブ・ジョブズがアップルCEOの時に作ったものです。彼はお⽗さんがシリアから来た⼈で、アメリカはそういった⼈材の取り込み競争をやってきましたが、⽇本はそういうことをしてこなかったわけです。
この30年間で私たち⽇本⼈の平均労働時間は15%減りました。⼀部では、過労死に象徴されるような企業があることも事実でそれはしっかり取り締まらなくてはいけませんが、⽇本⼈が働き過ぎだなんて世界中の⼈は思っていません。⽇本の製造業の⼈の平均労働時間は、ドイツやヨーロッパよりは⻑いですが、今はアメリカより短い、韓国と⽐べると3割も短い。決して働き過ぎではありません。
そして、この30年間で⽇本の貯蓄率は⼤きく変わりました。平成元年、⽇本の家庭の貯蓄率は20%近くありました。先進⼯業国の中で最も⾼かったのです。今は⽇本の家庭の平均貯蓄率は、年によって変動しますが3〜4%で、スペインと並んで最も低い国の1つになりました。貯蓄率が下がったのは実は⾼齢化です。⾼齢者というのは、所得は少ししかありませんが、⽣活するための消費はします。この場合の貯蓄率はマイナスです。ですからリタイアした⼈の数、⾼齢者の数が増えると、マイナスの貯蓄率の⼈が増え、⽇本全体でみると貯蓄率は下がってくるわけです。
これがこの30年間に起きた結果です。「⽇本⼈は⻑時間働いて、そしてすごくお⾦を貯めている」。そんなことはもう決してありません。

ビッグデータを制するものが世界の覇者となる

このヒントになるのが、昨年1⽉のダボス会議でのメルケル⾸相のスピーチです。
「これからの経済競争は1にも2にもビッグデータの競争である」と。
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