2019年1月16日 更新

富士山の名画に描かれた旅の記憶を読み取ろう!【アート研修】

アート研修の目的は、今ビジネスにおいても重要視されている「感性」を磨き表現能力を開発することです。感性が磨かれると人生は豊かに彩られるでしょう。 今回は「名画で感じる旅の記憶」です。世界遺産となった富士山にこめられた記憶とは?

出典:国立国会図書館デジタルコレクション

2019.1.16
この作品に描かれている風景について教えてください。
お正月休み、三連休とどのように過ごしましたか?
旅行や帰省・・・SNSにはそんな旅先の写真がたくさんあがっていましたね。スマホやネットで「今見ているコレを記録したい、見せたい」欲求が手軽に満たせるようになり、SNSはほぼ見るだけ、のわたしのスマホにさえ、訪れた先々での写真が溢れています。
家族や友人と過ごす時間や、モノの記録にはとても便利な写真機能ですが、後日見返した時、個人的に「なんか違う・・」といつもへこんでしまうのが、風景の記録。
これはもちろん、わたしの使用機材と写真撮影のセンスや技術の問題が大きいのですが、同じ風景を撮影したプロカメラマンの写真を見ても、作品として素敵であるとは別のところで、「私の記憶とは違う・・・!」
あの時朝日に輝く海を見たときの、頭のてっぺんから下に抜けていくような衝撃、くつろぎや開放感。風景の記憶は、単に「きれい」というだけでない何か・・それを見たときの自分の心の動きを含めての記憶、という要素が強い気がします。スマホの画像に残すのはなかなか難しいようです。

2019年の第1回めの作品は…

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『川瀬巴水版画集』より

これは、川瀬巴水(かわせはすい 1883 - 1957)の版画作品『富士川』。
巴水は、江戸の浮世絵が衰退したのち、大正時代に再興した新しい浮世絵版画「新版画」の立役者。旅先で見た風景を原画とした作品を数多く制作し、「旅の版画家」とも呼ばれています。特に富士山は、様々な地点からの姿を作品にしており、こちらはそんな一枚。
新年のひとりアート研修初めは、お正月休み、移動に東名高速や東海道新幹線を利用した人の多くがスマホをかざしたと思われる縁起物「富士山」です、が・・・
この作品、年賀状に使われる「一富士二鷹~」や「ご来光」というめでたいイメージのイラストとは、少々趣が異なりますね。また富士山モティーフの作品といえば、葛飾北斎の『富嶽三十六景』が有名ですが、北斎富士山の力強さと比べると、この作品は非常に控えめで静か。
ゆるやかに広がる河原には、誰もいない。わずかに響く川のせせらぎと鳥のさえずり。林の向こうには、遠い空と富士山。山肌を染める桃色は、おそらく次の瞬間には色を変えてしまうのでしょう。二度と見ることができない、この時間だけの風景です。
みなさんは、どこかを旅して印象的だった風景を頭の中で思い出すとき、(写真には映りこんでいる)実際は周囲にざわめいていたはずの観光客の姿が消え、音も消え、その風景だけが記憶として蘇ること、ありませんか?
巴水が版画にした風景の多くは、万人が知る名所旧跡・・・でありながら、その作品には、非常に個人的な、心に刻まれた思い出としての風景を感じます。
芸術家というフェルターを通して抽出された見る側の感情エッセンスが絶妙に混ぜ込まれた、「描く」作品ならではの風景記録・・・自分が撮った写真を見返すよりも、その時の光景が鮮やかに蘇り沁みてくる。行ったことのない場所でも、なぜか懐かしい・・・

この実にほどよく心地よい郷愁には、僭越ながら、巴水にくいね!と言いたくなってしまいます。そして、存在があまりにも圧倒的でとても太刀打ちできないあの山が、ようやく自分だけのものになったような・・・巴水の富士は、そんなちょっと贅沢な気持ちにもさせてくれるのです。
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