2019.4.23
世界の富裕層の資産運用ポートフォリオは株式重視?日本は現金?
世界の富裕層による資産運用の動向を考える際、キャップジェミニ(Cap Gemini S.A.:世界40か国以上で事業展開中の仏・パリ本拠の総合コンサルティングファーム)による、世界70か国以上2000名を超える富裕層を対象とした調査が参考になりそうです。2017年時点で、純金融資産100万米ドル以上の富裕層の投資リターン率は2年連続で20%超となり、27%強とのことです。世界の富裕層の資産運用において、昨年2018年1Qに最重要視されたのは株式で、資産運用全体の31%弱を占めました。
続いて、現金と現金相当資産が27%強、不動産が17%弱、債券が16%弱、そして、代替投資(外貨、ヘッジファンド、デリバティブなど)が9%強となっています。資産運用のポートフォリオにおいて、世界の富裕層は株式運用を圧倒的に重視していることが分かります。私のこれまでの世界の富裕層に対するイメージでは、不動産と代替投資での資産運用が相当多いものかと考えていましたので、少々意外な結果でした。他方、日本の富裕層の資産運用を見てみると、現金と現金相当資産が45%弱、株式が30%弱、不動産が11%強、債券が10%弱、代替投資が5%弱となっています。
日本人は元来キャッシュ信仰が強い民族ですが、富裕層の資産運用においても、ここまで現金比率が高いとは考えていませんでした。加えて、日本の資産家には「土地持ち」が多いにも関わらず、不動産での資産運用の割合が比較的小さいことも意外です。地方部や山林などの地価が安い不動産を所有する富裕層も多いためかも知れませんね。代替投資による資産運用は世界の富裕層のおおよそ半分の割合、というのは概ね予想通りの結果です。
若年世代(40代以下)富裕層の資産運用は世界でもハイパフォーマンス?
ここで、世界の若年世代(40代以下)富裕層による資産運用も見てみましょう。若年世代の富裕層による投資パフォーマンスは年間38%弱であり、60代以上の富裕層による17%弱を大幅に上回ります(17%弱でも十分なパフォーマンスですが)。資産運用においては、年配の富裕層ほど資産の保全を最重要視することは世界共通です。これに対して、若年世代の富裕層では、リスクテイクを厭わず積極的に資産を増やす戦略を採るケースが多い、と考えられますね。
昨今は新たな資産運用先として、BTC(ビットコイン)、ETH(イーセリアム)、XRP(リップル)など仮想通貨への投資が若年世代の富裕層から注目されています。最近の主要仮想通貨の「爆上げ」とも言えるマーケット状況は、ここ暫く続いていたボックス相場を完全に脱した感がありますが、一抹の恐怖すら覚えます。ちなみに、若年世代の富裕層の71%強は、仮想通貨での資産運用に関する情報を専門家から得たい、と考えているそうです。これが60代以上の富裕層になりますと、僅か13%ほどに激減します。仮想通貨という比較的最近登場した投資対象については、世界の富裕層と言えども、年配者ほど保守的な態度を示していることがよく分かる調査結果ですね。
それでも、今年2月にはスイス・チューリヒ拠点の著名プライベートバンクであるジュリアス・ベアが、スイス・ツーク拠点の仮想通貨銀行SEBAへの出資・パートナーシップ契約の締結を済ませたことを公式発表しています。これは、仮想通貨による資産運用サービスの顧客提供を目的とした経営判断に他なりません。世界の富裕層が利用するスイスの保守的なプライベートバンクですら、仮想通貨での資産運用サービスを本格提供する時代になったとは、実に感慨深いことですね。世界の富裕層の多くが、資産運用のポートフォリオに仮想通貨を組み込む日も間もなくでしょう。
世界の富裕層は資産運用にIT化ニーズが強い?
世界の富裕層に見られる顕著な傾向として、ITテクノロジー(AI含む)と旧来の専門家による資産運用アドバイス(ウェルスマネジメント)を融合させた、ハイブリット型サービスへの需要の高まりがあります。世界の富裕層の50%強は、提供される資産運用アドバイスへのITテクノロジーの活用を重視する、という結果になっています。さらには、こちらも世界の富裕層の50%強が、今後、大手IT系企業からサービス提供されると考えられる資産運用アドバイスについて、期待を表しています。