2017年12月7日 更新

〈佐渡島庸平〉〜「ワクワクする」を起点に企画する〜「宇宙とお金」インタビュー[第1回]

「宇宙とお⾦」というテーマで、株式会社コルク代表の佐渡島庸平さんにお話を伺いました。

2017.11.30
佐渡島さんは名だたる作家の信任厚い敏腕編集者として、宇宙やお⾦など、普遍的であるが故に難しいテーマに挑み、⾒事、⼤ヒットに導いています。出版最⼤⼿の講談社を5年前に退社し、⽇本ではまだ珍しい作家エージェンシー(株式会社コルク)を⽴ち上げました。

■「ワクワクする」を起点に企画する

STAGE 編集部:宇宙を⽬指す兄弟を描く「宇宙兄弟」、⾼校⽣が投資の世界に⾝を投じる「インベスターZ」。どちらも佐渡島さんが⼿がけた⼤ヒット作です。はじめに漫画のテーマを決めるのは作家ですか? それとも編集者である佐渡島さんですか?
佐渡島さん:ケースバイケースですね。『宇宙兄弟』の場合は、僕が作者の⼩⼭宙哉さんに「宇宙どうですか」と持ちかけました。
『インベスターZ』の場合は作者の三⽥紀房さんからです。三⽥さんが「この前アメリカを旅⾏したんだけど、スタンフォードって、投資が⼤学によって⾏われていて、その運⽤益で経営をまかなっているんだよね。それを全部⾼校⽣がやってるっていう設定だったら⾯⽩くない?」と。「それ、めちゃくちゃ⾯⽩いですね」という流れでした。僕⾃⾝お⾦と向き合うことが、あまりなかったんですが、そのときは会社を作って1年経ったばかりの時期だったので、お⾦と向き合うのは「いいなぁ」って思えたんです。
漫画の始まり⽅は、「株をどう運⽤すればいいか」とか、実⽤的な情報を⼊れていくのかな?と僕は思っていたんですけど、三⽥さんが「いやいや。そもそもまず〈お⾦とは何か〉から考えようよ」と⾔ったんです。
そこで、僕なりに〈お⾦とは何か〉について調べていくと、すごい勉強になりました。
STAGE編集部:『宇宙兄弟』の時は、なぜ宇宙をテーマにしたかったのですか?
佐渡島さん:ちょうど、『ドラゴン桜』※が終わった後だったんですね。
『ドラゴン桜』の制作過程では、教育関係の⼈たちにたくさん会って取材しました。緻密に取材した上で作品を作ろうとすると、その業界の関係者にたくさん話を聞けます。教育関係の次はぜひ宇宙⾶⾏⼠にあって、どんな⼈なのか、話を聞いてみたいなと思ったんです。「取材するのが楽しいジャンルがいいなぁ」って、まず思ったんですよ。とても個⼈的な理由ですが、僕が取材していて楽しければ、それを受け取る読者も楽しいはずですから。

『ドラゴン桜』©三⽥紀房/コルク

『ドラゴン桜』という漫画によって教育界の流れがすごく変わったということを体感でき、エンターテイメントには社会を変える⼒があるなと感じました。⽇本全体が⾼齢化で元気を失っていく中で、何が国全体をワクワクさせることができるのかなぁって考えていたんです。
僕はアメリカを史上最もワクワクさせたのって、⽉⾯着陸じゃないかなって思って。研究者は、⽉⾯着陸はもう科学的意味はないって⾔うんですけどね。研究の流れだと、もう⼀回⽉⾯着陸してみようという話は⼀切ないというので、ならば、漫画の⼒でできないかと思いました。漫画を読んで、みんなが⽉⾯着陸を⾒たいっていう気持ちになって、本当にもう1回「それ」が起きたら、よりワクワクするんじゃないかなと。
僕は⽉⾯に⽇本⼈が⾏くっていうのは⽇本⼈の⼼に⼤きいワクワク感と、何か根拠のない⾃信を⽣み出すような気がしています。みんながそれを望むきっかけになるような作品になると⾯⽩いなと思ったんですよね。

■⼈は「よくわからないもの」を信じることができる

STAGE 編集部:さて、今回のお題なのですが「宇宙とお⾦」共通項を探すとしたらどこでしょう。
佐渡島さん:どちらもよくわからないものですよね。宇宙がビックバンでどんどん今も拡張しているとかって⾔われてもよくわからないですよね。⼀⽅、このお⾦、1万円札っていうそのモノもこれが1万円札なのか、1万円の価値って何なのかわからないですよね。宇宙もお⾦も「よくわからないことを信じることにしている」っていうところだけは共通してるような気がします。
宇宙はもしかしたら科学的ファクトがあるけれど、お⾦というのは信⽤の貸し借りしかない。お⾦というのは、ただただ幻想の結果であるというか、幻想の産物であるという考え⽅もできます。この信⽤がお⾦じゃない形で可視化されていったら、「お⾦は幻想だ」じゃなく、宇宙と同じように、何か科学的になっていくのだろうか、という予感もする。ただ、もはやお⾦っていう概念も⼤きく変わろうとしているなと思います。
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