2020年8月4日 更新

富裕層の関心は常に一歩先を行っている

今年に入り新型肺炎が拡大しています。その拡大や状況についていは逐一ニュース番組や新聞で報告され、多くの人が関心を持っていますが、もちろん富裕層もその拡大可能性や被害者に対して心配を持ちつつ、それだけでなくそれに加えて一歩先の展開に関心を持ってることがわかりました。

2020.2.28

中国共産党支配への影響

新型肺炎が経済への影響が大きいことは周知されていますが、一部では中国の共産党一党支配に重大な影響を与えるのではないかとの意見がちらほら聞かれるようになりました。報道番組では、武漢で起こった新型肺炎を初期段階で情報隠蔽を行ったことなどで習政権が国内で批判されている、関係した幹部の更迭を繰り返す執行部をトカゲに尻尾切りをしたなどの報道が繰り返されているようですが、このように責任論だけではなく、このような事象が歴史的な変化をもたらす可能性があることを知っておくべきだと思います。その一つにチェルノブイリ原発事故が旧ソ連崩壊のきっかけとなったことを連想する人がいるようです。
チェルノブイリ事故は発生直後、当局者などによって事実が隠蔽されていました。事故発生から2日後にようやく世界に事実が広がることになりましたが、そのきっかけもソ連当局からなされたものではなく、スウェーデンからの報告によるものでした。スウェーデンの原発所から高い放射線量が検出され、それが自分たちのものでないことが判明し調べていくとチェルノブイリからのものだということが分かったのです。スウェーデン政府からソ連に問いただして初めてソ連が事故発生を認めたとされています。このような重大な事象を隠蔽する体制も事故と同じように非難の対象になりました。
この悲惨な事故を反省し教訓としたゴルバチョフ大統領(当時)は急進的なペレストロイカといわれる改革を押し進めことになりました。このペレストロイカの始まりはチェルノブイリにおける事故が原因ではありませんでしたが、ソ連の政治体制の矛盾を明らかにするには十分な役割を果たし改革が加速したとされています。ゴルバチョフ大統領により1986年のチェルノブイリ事故から進められた改革は、1991年にペレストロイカに反対するソ連共産党の守旧派であった当時副大統領のゲンナジー・ヤナーエフと8人の保守派の高官たちによるクーデターを誘発したといわれています。チェルノブイリ事故から5年後の1991年8月19日のことです。しかし、このクーデターは国民の抵抗により数日で収まりましたが、同時にゴルバチョフは国民の信任を失い最終的に共産党体制の崩壊とソ連という国家の解体をもたらす結果になりました。その後の体制が良い体制になったかは評価が分かれるところです。
それでもソ連共産党書記長だったゴルバチョフ氏は回想録で(『ゴルバチョフ回想録』新潮社)、この一連の流れを次のように書いています。「チェルノブイリ原子力発電所の事故は、わが国の技術が老朽化してしまったばかりか、従来のシステムがその可能性を使い尽してしまったことをまざまざと見せつける恐ろしい証明であった。それと同時に、これが歴史の皮肉か、それは途方もない重さでわれわれの始めた改革にはねかえり、文字通り国を軌道からはじき出してしまったのである」と。
当時、世界を二分したアメリカとソ連。その大国として君臨していたソ連が、チェルノブイリという多くの犠牲を伴う大惨事をきっかけに改革が進み、最終的にはその改革により既得権益を守りたい守旧派のクーデターに会い体制が変わりました。この歴史が再び繰り返されるのか、それともソ連固有の問題なのか可能性は低い話ではありますが一歩先を読む人はテールリスクとして関心を高く持っています。

価値観や社会構造の変化へのきっかけになる可能性

他にも新型肺炎をきっかけに色々な変化の兆しがみえます。例えば、テレワーク。新型肺炎が国内で拡大を続けていることで大手企業からテレワークの導入が進められていますが、NTTグループでは時差出勤やテレワークの実施を20万人もの従業員に推奨をしました。具体的な導入方法はNTTの各グループ会社に任されているようですが、NTTという大手企業が実施したことで今後追随する企業が多く出てくることが期待されています。
政府には自分たちが旗を振ってみたもののあまり推進されなかったテレワークが、新型コロナウイルス感染症への対応で民間主導により推進されたという皮肉を自覚してほしいものですが、今年開催予定の東京五輪での公共交通機関の利用者が増加すること、それにより公共交通機関の乗降者数は10%超増えるとことを考えると交通混雑を避けるためにもいかなる理由であれテレワークの推進が進みそうなのはプラス材料かと思います。ちなみに、2012年のロンドンオリンピックでもロンドン市内の企業の約8割の企業がテレワークを実施し、これにより交通混乱を回避できたとされています。今まであまり広がりを見せていなかったテレワークも導入する企業が増えるきっかけになるかもしれません。
この話で終えると一歩先を行くわけではありません。富裕層や事業家のような先を読む人たちは、このテレワークの推進が「経済や構造の変化に与える影響」に対して関心を高めています。例えば、労働参加率の向上です。総務省によれば、専業主婦がテレワークの形態であれば5割の人が労働参加に興味がありとするとしています。また、あるシンクタンクのレポートによると専業主婦の半数である320万が労働市場に参画し、平均的な年間労働時間(約1,700時間)と生産性(約4,600円/時間)のもとで働くとすると25兆円もの経済効果が期待できると算出しています。GDP比で4%もの影響力です。さらに、移動に制限のある人や高齢者の労働参加も可能になり、その数字はさらに高くなることが予測可能です。それだけにとどまらず、テレワーク先進国である欧米では生産性の向上、マネジメント能力の向上、導入業種の余地拡大、オフィスや自宅以外の場所での勤務などに影響が及んだとされています。旧態然とした企業の経営のあり方に大きく影響が及びそうです。
さらに、さらに先を読むと、英ロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏らが著した「ライフ・シフト」の内容が本当に浸透する可能性があると考えられます。人生100年時代に備える動きが強まり、教育、仕事、引退の順に優秀な人材がレールの上を一斉に走るように仕組まれた「3ステージ」の人生の送り方から、複数のキャリアを渡り歩く「マルチステージ」の人生の歩み方へシフトし始めるかもしれません。このように大きく社会構造が変化すれば、社会保障制度の変化や商習慣の変化にも影響を与えます。その変化の兆しをビジネスに活かせば「一歩先を行った」将来性の高いビジネスに関与することができます。数年前のクラウドビジネスやビジネスコミュニケーションツールなど。ライフシフトの浸透で新たなビジネスモデルが生まれる可能性が高そうです。
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渋谷 豊 渋谷 豊
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