2018.1.12
いよいよ三号店、四号店のオープン当日。
新店舗の前には行列ができました。これは、大谷が使った手の真似をしました。知り合いに声をかけてもらって、朝から行列を作ってもらいました。この勝負は絶対に負けるわけにはかなかったので、一番最良だと思えることに金を惜しまずに使ったのです。
さらに、この二店舗には、もうひとつ特徴がありました。販売するおにぎりをクリームおにぎり一本に絞ったのです。旧二店舗でもおにぎり別の売り上げ比率は相変わらずクリームおにぎりが圧倒していましたし、作業効率やコストの面でも、クリームおにぎりだけに絞った方が結果が出やすいと考えました。
新メニューもクリームおにぎりのバリエーションを葉山に作ってもらいました。『焼きクリームおにぎり』、『梅クリームおにぎり』、『鶏クリームおにぎり』、『元祖クリームおにぎり』の四種類です。
初日は、想定通りの額が売り上げとなりました。これ以上にないくらい最高のスタートだったと思います。ここで実績を残せば米角のブランド化も一気に進む。
―――しかし、そうはなりませんでした。
二日目の売り上げは、初日の額とほぼ同じでした。そして、一週間、この状態が続きました。しかし、三週目を過ぎるころから、少し異変を感じ始めました。どれだけ頑張っても一週目の売り上げを越えられなかったのです。
葉山と新マネージャーが僕の所にやってきて、対策会議をすることになりました。
「社長、売り上げが思ったよりも伸びないんですが……、すいません、私の考えた新おにぎりが、あまり評判が良くないみたいで」
「社長、売り上げが思ったよりも伸びないんですが……、すいません、私の考えた新おにぎりが、あまり評判が良くないみたいで」
不安がる葉山たちに、僕は精一杯の笑顔で答えました。
「いやいや、新しい店というのは、やはり周辺に浸透するまで、時間がかかるものだよ。ここは踏ん張りどころだよ。できることは色々やっていこう!」
「いやいや、新しい店というのは、やはり周辺に浸透するまで、時間がかかるものだよ。ここは踏ん張りどころだよ。できることは色々やっていこう!」
口では、そう言いつつも心の内側にはダラダラと脂汗をかいていました。今までの二店舗では経験したことのないプレッシャーを感じていたのです。
(よりによって、この二店舗の売り上げが振るわないなんて……。だって、今までよりもずっと人通りが多いし、メインの客層のサラリーマンやOLだって沢山そばを歩いているじゃないか)
「……大谷に相談してみるか」
(よりによって、この二店舗の売り上げが振るわないなんて……。だって、今までよりもずっと人通りが多いし、メインの客層のサラリーマンやOLだって沢山そばを歩いているじゃないか)
「……大谷に相談してみるか」