2019.5.16
1.シュリーマンの修業時代
ハインリッヒ・シュリーマンは、1822年ドイツ・メクレンブル州ノイブコウでプロテスタント牧師の子として生まれ、この小さな村で過ごした少年時代に、父が物語る古代ギリシャの詩人・ホメロスの叙事詩「イーリアス」に描かれたトロイやギリシャ先史時代の英雄達の伝説に心躍らせていました。
ホメロスについては実在した人物か判然とせず、彼の叙事詩「イーリアス」に叙述された古代都市トロイについても伝説上の都市とされていて、少年シュリーマンはいつの日かギリシャ先史時代の遺跡を自らの手で発掘することを夢見るようになったのです。
(1)シュリーマンの夢を信じる幼友達ミンナとの淡い初恋
子供ながらも将来の夢を語るシュリーマンを近所の遊び仲間は誰もが馬鹿にしました。ただ、近隣のツァーレン村のマインケ家の姉妹はいつも熱心にシュリーマンの話に耳を傾け、わけても妹のミンナは心から理解してシュリーマンの将来計画にうなずくのです。
そのうちにシュリーマンとミンナは互いに好意を抱き、幼心に永遠の愛とシュリーマンの夢への忠誠を誓い合いました。
(2)シュリーマン家の没落と雑貨店での見習い奉公
1833年、シュリーマンの父エルンストは女性関係の不行跡から牧師職を依願退職する羽目になりました。このため一家は経済的に困窮し、高等教育の道が閉ざされたシュリーマンは小都市フュルステンベルクの小さな雑貨店の見習いとなり、ミンナとの仲も引き裂かれます。
雑貨店の雇い主ヒュックシュテットは、厳しいながらも誠実にシュリーマンを徹底的に鍛え、シュリーマンもこれに応え、彼のもとで「勤勉に働くこと」「どんなに辛くても仕事を怠けない」美質を身につけます。
(3)ロシアで開花するシュリーマンの商才
五年有余の雑貨店での仕事で身体を壊したシュリーマンは、オランダ・ベルギーで貿易商会の事務職を転々とした後、ロシアに貿易販路をもつシュレーダー商会に就職し代理人としてサンクトペテルブルグに派遣されました。
サンクトペテルブルグに赴任したシュリーマンは、代理人としての仕事の傍ら、個人的に卸売商の仕事を始めます。ロシアで需要の多いインディゴ商品に目をつけ、アムステルダムで培ったインディゴ貿易に関する知識と人脈を活かした取引は、目論みどおり着実に成功を収め、シュリーマンは経済的に成功した商人としての地歩を築いていきます。