2017.12.22
海の向こうの大減税
インフレが近づくと考えられる1つ目の要因は、海の向こうの大国、米国の税制改革です。米国議会は12月22日に閉会し、大型減税を含む税制改革法案が上下院で可決されました。
この税制改革法案の骨格は、連邦法人税率を2018年1月から35%から21%に引き下げたり、海外子会社からの配当収入への課税を撤廃したりといったもの。米国の大企業にとっては恩恵の大きな法案です。また、個人税制も、最高税率が39.6%から37%に引き下げになり、相続税も撤廃するという、なんとも富裕層に優しい法案です。ちなみに、日本では富裕層から税収を増やす方向に邁進中ですが。
さて、この大型の減税ですが、レーガン大統領のレーガノミクス(1986年に成立した減税法案)から30年ぶりの大型法案と言われています。このレーガノミックスによる減税と政府支出の増大は、景気を大いに刺激しました。ベトナム戦争から10年経過し、インフレと不況にあえいでいた米国は急速に自信と活力を取り戻しました。一方で、このようなレーガノミックスには影の面もありました。それが、「双子の赤字」です。
好景気により国内消費は刺激されましたが、海外からの大量輸入によって輸入超過となり貿易赤字が急速に膨らんでいきました。また、減税などにより財政赤字も一気に悪化しました。結果として、大量の赤字国債を発行することになり、半端ではない財政赤字が積み上がりました。この、貿易赤字と財政赤字が双子の赤字です。
ちなみに、レーガン政権発足時の1981年1月の政府の債務は9,000億ドルでしたが、レーガン大統領が退任する8年後の1989年1月には、なんと3倍近い2.6兆ドルまで膨れ上がっていました。
この財政の悪化により、米国債券の信頼は損なわれ、結果として米国の金利は押し上げられました。それにつれたドル高が進行し(金利が上がるとその通貨は上昇します)、1978年には1ドル=176円だったものが1982年11月には1ドル=278円まで上昇する急激なドル高相場となりました。
さて、今回の大型減税を受け米国の10年金利はどうなったかというと、2.3%台から2.5%まで一気に上昇しました。これが大型減税で米国の景気を織り込んだものなのか、それとも米国の財政赤字が拡大することによる悪い金利上昇なのかは来年明らかになるはずです。
原因はどちらにしても、この金利上昇は日本にどのような結果をもたらすのでしょうか。
これについては、「ドル高、円安」になる可能性が高いと考えられています。そして、輸入国である日本は、円が安くなると自然と物価が上る体質です。そう、今の瞬間、耳を澄ませば、「ジングルベルではなくインフレの足音」が聞こえてくるかもしれません。