2018年8月29日 更新

〈高濱正伸〉「生きる本能」が目覚める教育で、“メシが食える大人”を社会に送り出す

首都圏を中心に「花まる学習会」を展開する高濱正伸さん。その教育への熱い想いは、教室に通わせている保護者だけでなく、教育界へも新たな風を呼び込んでいます。「花まる学習会」の経営の傍ら、全国各地での講演会、公教育の改革、教育書の執筆、そして授業や野外体験の引率など、縦横無尽に舞台をかけまわる高濱さんのエネルギーの源を探りました。

STAGE編集部:講演会などでも、お母さん方から圧倒的支持を受けていらっしゃいますね。

やっぱり哺乳類は圧倒的にお母さんのほうが大事に決まっているんです。オスはたいてい、産みつけたらどこかに行ってしまう。人間は「結婚」という制度でなんとか保っているけど、本質的にはお母さんは、おっぱいをあげられるっていう一点で絶対勝てない存在ですから。

僕は、スーパーマンだなと思う人にお会いする機会があると、小さいころの遊びとか、家族とか、勉強の方法とか、いっぱい聞くんですよ。そこで見えてきた一大特徴は、お母さんの存在がひときわ大きいということ。

平等主義で頭でっかちに考えると、いや、お父さんも、と思うかもしれないけど、動物の原点に返って考えてみれば、授乳の時代から、お父さんはかわいそうですけどどうでもいい存在。そういう意味でお母さんのほうが子どもにとって影響力が大きいから、教育者としてはお母さんに太陽でいてほしいと思うんです。

STAGE編集部:最近では「イクメン」も増えていますが。

お母さんがなんでイライラするかっていうと、昔のような地域のつながりが薄くて孤独だというところに根本的な問題があるんです。お母さんたちだって、専業主婦であれば、
対等に家事をやってほしいと本心では思っていないかもしれない。ただ、「俺ら外で働いたんだ」ってふんぞり返られると腹が立つんです。

その一点がわかれば、「大丈夫?」「何かやろうか?」って言ってくれるだけで全部問題は解決するかもしれない。イクメンであることが必要というよりも、むしろ想いみたいな部分かもしれません。

以前は、父親学級で「ただいまって家に帰るときに、うなずきながら入れ」「奥さんの話にうなずき続けろ」って言っていました。それはそれで効果があったんですけど、今は毎朝妻が幸せでありますように、って祈りましょうって(笑)。日々これを習慣にしておくと、なんかあったときに「大丈夫?」っていう台詞が自然に出ると思うんです。それさえできていれば、靴下を置きっぱなしにしても、奥さんはチッって言いながら全部やってくれます。面白いでしょ?

女性は、お母さんになった途端に基本的に獰猛になるんです。子どもを立派な大人に育て上げるためには、噛みつくことを避けては通れないから。このことを、夫も「『お母さん』という最高にいい存在になったんだな」と前提としてわかっていればいいんですよ。

キーボードの前に立つ姿も様になる高濱さん。 講演会ではお母さんたちに歌をプレゼントする。
STAGE編集部:最後に、今後やってみたいという夢や目標をお聞かせください。

僕は今、56歳なんですけど、体を鍛えていますし、70歳で元気なじいさんもいっぱいいますから、とりあえず日本の教育をたくましい教育に変えるということを本気でやっていきたいと思っています。

本業の花まる学習会は、会社ですから社員を幸せにしながらしっかりとやり遂げないといけない。でも、その先の、お金がないから塾に行けない子どもたちにもちゃんと手を当てるということが、一番大事な部分。そこは公立の学校を本気で変えるっていうことでアプローチしたいなと思っています。

「公教育を変革する」という山は、簡単には登れないです。次から次へといろんな壁がありますから。でも、僕が失敗しても、想いを持って育てた教え子もいっぱいいますし、その次のやつ、その次のやつが僕の代わりに来てくれるから大丈夫ですよ。

STAGE編集部:ありがとうございました。

花まる学習会代表 高濱正伸さん

1959年、熊本県生まれ。東京大学大学院卒。学生時代から予備校等で受験生を指導する中で、学力の伸び悩み・人間関係での挫折とひきこもり傾向などの諸問題が、幼児期・児童期の環境と体験に基づいていると確信。1993年に「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を重視した学習教室「花まる学習会」を設立。その後、小学4年生~中学3年生を対象に、「本格的な学習方法」を伝授する学習塾「スクールFC」を設立。子ども達の「生き抜く力」を育てている。 NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。算数オリンピック委員会理事。 花まる学習会 http://www.hanamarugroup.jp/
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