2017年7月6日 更新

三種の神器よりも「新額歴社会」の3つの力

熱狂的な盛り上がりを見せるハロウィンも無事に終了し、街は徐々にクリスマスムードになっていくなか、夜の会食に出かけてきました。街は多くの人で溢れ、外国人観光客で賑わいを見せていました。人混みをかき分けながら、どうにかお店にたどり着くと外の喧騒とは違い、意外や意外、お店の中に空席が目立ちました。決して人気のない店ではないはずなのにと、違和感を覚えました。

2016.11.15
熱狂的な盛り上がりを見せるハロウィンも無事に終了し、街は徐々にクリスマスムードになっていくなか、夜の会食に出かけてきました。街は多くの人で溢れ、外国人観光客で賑わいを見せていました。人混みをかき分けながら、どうにかお店にたどり着くと外の喧騒とは違い、意外や意外、お店の中に空席が目立ちました。決して人気のない店ではないはずなのにと、違和感を覚えました。

実は、この違和感は間違いで、この閑散としたお店の状況こそが新たな社会をリアルに映し出していることが、私の所属するファイナンシャルアカデミーグループの調査で明らかになりました。しかも、若者がお金を使わないとされている時代背景の真相にたどり着き、そこには新たな社会「新額歴社会」が存在していることがわかりました。今回は、この「新額歴社会」についてお伝えできればと思います。
最近、「若者が消費をしなくなった」「消費意欲が少ない」などといった記事やニュースを見かける事が多くなってきたと思いませんか。2016年10月20日に日本百貨店協会が発表した同年9月の全国百貨店売上高は、前年同月比で5.0%も売上がマイナスになり、7ヵ月連続で前年度の実績を下回りました。気温の高さや、外国人観光客の消費額減少など、売上不振の理由を複数の要因で説明がなされていましたが、どうやらそれだけが理由ではなさそうです。

また、総務省が1959年から5年毎に発表している「全国消費実態調査」というものがあります。2016年6月に発表された調査によると、30歳未満の世代は「お金を使わない」傾向が強いという結果が出ていました。確かに、そのお店の状況を思い出してみると、若者といわれる世代の姿が少なかったように見えました。

このように、若者のお金を使わない傾向が強くなっているという結果を見ると、普通は「使えるお金が減っている」だから「消費が減っている」といった因果関係で説明されてしまいがちです。しかし、さらに実態調査を読み進めると、30歳未満の未婚男性の可処分所得は1980年代後半から一貫して増加傾向であり、また、30歳未満の未婚女性の可処分所得もつい最近まで増加傾向だということがわかりました。

つまり、消費意欲が一番盛んであったとされるバブル期と比較しても、30未満の未婚の男女とも可処分所得(使えるお金)は増加しており、「使えるお金がないから、今の若者はお金を使わない」といった説明が間違いであると結論づけられるわけです。

そうなると、今の若者の「使える手元のお金が増えても消費は控える」という、その理由をどうしても探りたくなってきます。
ここで、「社会的な構造の変化に合わせてお金の使い方が変わってきている」と仮説を立てて検証してみたいと思います。

以前、日本の若者が大人になるための「3種の神器」とされるものがありました。諸説ありますが、「車」「酒」「海外旅行」がその3種の神器といわれ、大量消費時代の象徴とされていました。このような3種の神器が浸透した背景には、自分と他人の「差異」を誇示するために便利なツールであったからだといわれています。誰もが振り返るカッコいい外車に乗って、夜景を見ながら高級ワインを飲んで、天国にいちばん近い島に旅行に行ってブイブイいわせるなど、他人との「差異」を示すことが自己顕示欲を満たすものでした。しかし、バブルの崩壊をキッカケに、1990年代前半以降「この他人との差異にいったい何の意味があるのか?」という感覚が若者を中心に芽生え、「三種の神器」離れが浸透していきました。今や、車、お酒、海外旅行離れは、統計上の数字で明確に証明されています。

また、同時期に浸透した高学歴社会の象徴「三高」時代も終焉を迎えました。それは、バブルの崩壊により、「学歴が高い」「背が高い」「年収が高い」といった3項目が高いことと、社会において豊かな生活を送ることの「因果関係」が成立しないということが、現実社会で証明されてきたからです。

このように、バブル崩壊による数多くの崩壊はありましたが、一方で収穫もありました。それが、今回ファイナンシャルアカデミーグループの調査で明らかになった新たな社会構造「新額歴社会」の誕生です。

その背景は、「経済成長や国の社会保障に自分の将来を任せる」のではなく、「自分の将来は自分で築く必要がある」ということに気付いたことです。バブル崩壊をキッカケにこのことに目覚めた若者たちが、約25年もの時間をかけて価値観を築き上げました。

つい10年数年前までは、高学歴で大企業に入社し、退職まで高い年収を得ることで将来豊かに過ごすことが可能な世の中でした。しかし、グローバル化の浸透により企業は淘汰され、ITの発展による効率化で雇用は喪失され、AIの予想を上回る成長による職業喪失の危機などにより、この社会構造が崩壊していきました。大手企業も例外なく倒産し、正社員の数は減り非正規雇用が増える。国際的に優位性を失った日本の製造業の地位は失落し、新興国に取って代わられる。こんな時代です。

であればと、限られた収入の中で、自分の収入の管理をきちんと行い、投資・貯蓄に対しても高い意識を持ち生き抜く、と行動を起こした人たちが作り上げた社会観念、これこそが「新額歴社会」なのです。
また、調査の結果、この先駆者たちは「3つの力」を持ち合わせていることがわかりました。

「経験力」・・・外見を磨くより経験にお金を使い、内面を磨ける力が高い
「貯蓄力」・・・年収が低くても、将来に向けて賢くお金を貯蓄できる力が高い
「投資力」・・・過去の学歴に囚われず未来の成長の為にお金を使える力が高い

実は、この3つの力が必要とされるのは、社会的な背景の変化で説明が可能です。

英国オックスフォード大学のオズボーン教授によると、10〜20年後には、現在存在する職業の47%がAI(人工知能)により奪われると論文で発表しています。これからを生き抜くために、AI(人工知能)に勝る数少ない力として「経験力」を高める必要性があります。

国税庁の民間給与実態調査によると、1997年の平均給与所得は466万円でしたが、それから下落傾向は蛍光しており、2015年には平均給与租特は415万円まで下がりました。このような現状で、給与の増加に淡い期待を抱くことには無理があり、「貯蓄力」が当然必要になります。

また、フランスの著名経済学者であるトマ・ピケティにより経済の成長率より資本の成長率が高いと研究結果が公表されています。このことを考えると、経済の成長に依存しない「投資力」は必要不可欠です。
さて、今回の調査の中で特に印象的であったのが、Tシャツ一枚の購入でさえ、「3つの力」が高い人と、そうでない人の差がはっきりと出たということです。「3つの力」が高い人は、Tシャツを安く購入することだけではなく、資産という認識を持ち将来的に価値の上がる、売却可能なことも考えた上で消費行動をしていたのです。これは、大変興味深い結果です。大量消費世代は、「値段」のみを判断材料とし消費を行いますが、「新額歴社会」で生き残る層は、明確に「価値」にフォーカスして行動していることが判明しました。

このような消費行動が正しいことは、7兆円の資産を一代で築いた米国の著名投資家のウォーレン・バフェット氏の言葉でも裏付けすることが可能です。

「値段は自ら支払うもので、価値は得るもの」

お金を賢く扱う人は、価格だけで判断するものではなく、自分に価値を与えてくれるものを買うことの必要性を伝えた賢人の言葉です。

以上のように、仮説であった「社会的な構造の変化に合わせてお金の使い方が変わってきている」は、若者の意識調査を基に検証した結果、賢いお金の使い方をする層が増えているということで間違いなさそうです。
皆さん、この若者の行動をどのように感じたでしょうか。パソコンや英語が社会に出始めた時を思い出してみてください。最初の頃は、パソコンと英語を学ぶ必要性があるのか、また、社会に広く普及するのか、それぞれ懐疑的な意見が多く聞かれました。でも実際はどうでしたか。今、パソコンや英語が必要ないという意見は全く聞けません。それどころか、子供に学ばせたいことNO1です。私は、賢いお金の扱い方も、これらと同じ道をたどると確信しています。いや、調査結果を見る限りでは、もう既に広がり始めているといえます。このような流れを、若者だけのものだと無視するか、自分にも取り入れるかはあなたの判断次第です。

さて、ハロウィンの話に戻ります。ハロウィンの経済効果は約1,200億円とされ、バレンタインデーの1,100億円を超えているそうです。だからこそ、あれだけ盛り上がるわけですね。しかし、クリスマスの経済効果は、なんと7,000億円。約6倍に近い規模です。ということで、これから皆さんの財布の紐が一番緩む時期を迎えるわけです。

せっかく消費意欲が一番沸いてくる季節なので、買い物する際は「価値」のあるものだけに限定し、同時に「3つの力」を意識しながら過ごしてみてはいかがでしょうか。いずれにしても、どの分野でも覚悟を決めて人より早くトライする人が「元祖」や「先駆け」と呼ばれ、その人達がいつまでも社会的な価値を維持していることをお忘れなく。

渋谷 豊 ファイナンシャルアカデミーグループ総合研究所(FAG総研) 代表

シティバンク、ソシエテ・ジェネラルのプライベートバンク部門で約13年に渡り富裕層向けサービスを経験し、独立系の資産運用会社で約2年間、資産運用業務に携わる。現在は、ファイナンシャルアカデミーで執行役員を務める傍ら、富裕層向けサービスと海外勤務の経験などを活かし、グルーバル経済に関する分析・情報の発信や様々なコンサルティング・アドバイスを行っている。慶応義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。 ファイナンシャルアカデミーグループ総合研究所 http://fagri.jp/ ファイナンシャルアカデミー http://www.f-academy.jp/
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