2018年11月29日 更新

ブロックチェーンによって・生まれるサービス・消える会社

ブロックチェーンの応用の範囲は金融に限られているかというと、そうではありません。ブロックチェーンは金融以外の様々な分野に利用が可能ですし、今そういった実験的な試みがなされています。一部は実際にサービスが利用できるようになっています-----未来の産業の姿を「ブロックチェーン革命」著者・野口悠紀雄が解き明かします。(FLOC ブロックチェーン大学校イベント基調講演より)

2018.11.28

Uber やAirbnb がなくなると予想されるわけ

まず第一番目はシェアリングエコノミーです。
Uberによってタクシーのサービスを行うとか、Airbnbで部屋を貸すサービスを展開するということです。それらのシェアリングエコノミーサービスは今経済を大きく変えつつありますが、今のシェアリングエコノミーは過渡的な存在なんです。


なぜかというと、今のシェアリングエコノミーは最初にお話しした集中型の情報管理によって運営されているからです。例えばUberというものは、Uberという主体がいて、その主体がスマートフォンにサービスを提供しています。これは中央集権型の仕組みです。Uberが王様です。Airbnbもそうです。


でも、通貨に関してブロックチェーンを用いて自動化できたのと同じように、シェアリングエコノミーに関しても今UberやAirbnbがやっていることをブロックチェーンを用いて自動化できるんです。
ですから、将来はシェアリングエコノミーは中央の管理者は不要になり、自動的に運営されるようになる。UberやAirbnbは過渡的な存在だということです。ああいうものは無くなってしまうだろうということです。


そういうことになれば、シェアリングエコノミーの範囲は、非常にいろいろな分野に広がります。車や部屋だけではなくて、いろいろなものを対象にしたシェアリングエコノミーが必要になるだろうということが考えられます。このために必要な仕組みとは「鍵」、ロックなんです。


例えば、旅行者がAirbnbアパートを借ります。その場合に、その鍵を利用者に渡す必要があるわけです。今の仕組みでは、物理的なキーを利用者に渡すんです。実際にそこに行って渡すとか、それは面倒くさいから、玄関のシートの下に置いておくとか、植木鉢の下に置いておくとか、およそ信じられない古くさいことをやっているんですが、先日、そのサービスをコンビニで代理するという記事が新聞に出ていました。これは非常に斬新的なサービスだとありましたが、これも本当に古くさい、どうしようもない仕組みです。


これをブロックチェーンで自動化できます。利用者がスマートフォンでお金を送ると、そのスマートフォンをドアに当てれば鍵が開くようにすればよいのです。スマートロックといいます。その仕組みをブロックチェーンで運用する。スマートロックはブロックチェーンで運用されて、したがってシェアリングエコノミーは完全に自動で運営されるということになります。このための実験がいろいろなされているんです。

IOT の普及にはブロックチェーンが不可欠

もう一つは、IoTがあります。IoTとはインターネットオブシングズ(Internet of Things)、物のインターネット。今考えられているIoTの仕組みでは、集中型の処理が考えられています。誰か管理者がいて、クラウドで情報を管理しようというわけですが、これは最初にお話した3つの問題を抱えています。


まずコストが高い。IoTが広く普及するためには、特に家庭電化製品のようなものをIoTに繋げるためには、コストが安い必要があるんです。今のような仕組みでは成立しないだろうと考えられています。


もう1つの非常に深刻な問題は、安全性の問題です。IoTが非常に広がっていくと、家庭電化製品のようなセキリュティが完全でない仕組みがIoTの仕組みに入ります。すると攻撃者は一番弱いところを入り口にして、全体のシステムを攻撃する可能性があります。


IoTについて、全ての物をインターネットに繋げると説明されることがありますが、こんな馬鹿なことはありません。全ての物を繋げる必要性もないし、コストが高くなるし、安全性がめちゃくちゃになるし、そんなことはあり得ません。トースターをIoTに繋げたらおいしいトーストができるかというとそんなことはないんです。全く経済的な功利を欠いた議論です。


それはともかく、IoTをどういう情報システムで運営するかは大変重要です。今の集中型の仕組みでは運営できないだろうと考えられています。そのためにはブロックチェーンで解決すると考えられています。IoT にはブロックチェーンが必要である、ということです。

改ざんできない履歴を作ることができる

もう1つは、文章の存在証明、商品の存在追跡があります。今、商品の履歴追跡といえば、ダイヤモンドが挙げられます。ダイヤモンドというのは、人口のものを排除するためにどこで産出されてどういう経路を通ってここの店に来ていますという、履歴が大変重要だそうです。このダイヤモンドはどこで産出されてどういう経路で今ここにありますという事を記録する仕組み。ブロックチェーンでその記録を維持すれば、そこに書いてある情報は正しいので、従って商品の履歴の追跡ができるということになります。


日本でも、自動車のタイヤの中古品で、いつ生産されて誰が使ってどうなったかという重要な情報を記録するために、ブロックチェーンの応用がなされています。


あるいは、食品の履歴の追跡です。特にこれは中国で大きな問題らしいんですが、いつ作られて産地がどこで云々、そして今ここにある。そういう履歴を追跡していく仕組み、それをブロックチェーンでやろうということがなされ始めています。


このように商品の履歴追跡に利用が始まっているんですが、それだけではありません。1つ重要なことは、文章の存在証明です。過去のある時点にある内容の文章が存在したということを証明する仕組みです。これはすでに現在利用可能です。


例えばあるアイデアをある時に考えたとします。そのことを確かにそういうことを考えたんだっていうことを証明する必要がある場合が多いんです。そのためには特許という仕組みがありますが、特許を取るのは大変です。もっと簡単に、確かに一年前にこういうことを考えていましたということを証明したい。その文章のハッシュを取って、それをブロックチェーンで記録していきます。そして、今ある文章とそのハッシュを取って、そのブロックチェーンに記録されているハッシュと比較して、一致すれば両者は同一の文章であるということが証明できます。


このような、過去のある時点において文章が存在したということを証明するサービスがすでに提供されています。これは特に公文書の管理にとっては大事なんです。


財務省が公文書を改ざんした事件がありましたが、あれはブロックチェーンのこのサービスによって簡単に防止できます。全ての公文書のハッシュを取ってブロックチェーンに記録しておく。国会に出した文章がこの元の文章と同じかどうか両者のハッシュを比較すればいい。違っていたら途中で改ざんされたということになります。ですから公文書の管理にブロックチェーンを利用することは大変重要なことなんです。この仕組みはすでにエストニアでは導入されています。エストニアでは政府が勝手に過去の歴史を改ざんすることができなくなっていますということを、エストニアの政府は自慢しています。イギリスも導入を検討しています。日本ではブロックチェーンを用いれば簡単にできることを利用しろという声が起こりません。大変残念なことです。

「予測市場」をブロックチェーンが担うと先物市場は不要になる

もう1つ、ブロックチェーンの応用できる仕組みとして、予測市場があります。予測市場とは、将来起こりそうなことに賭けをすることです。当たったら賞金が貰える、こういう仕組みです。予測市場というのは昔からありました。昔からありましたが問題があると思われてきたんです。何故かというと、予測市場を管理している管理者がいるんです。彼らが不正をする可能性があるわけです。管理者のことを胴元といいますが、賭をする胴元が悪いことをする可能性があって、これまでの予測市場は信頼ができませんでした。従って、インターネット上の予測市場は各国で規制の対象になりました。


ところが、ブロックチェーンを用いて、この予測市場を自動的に運用できるんです。そうなると胴元がいなくなってしまうんです。いなくなるから不正もありません。だからブロックチェーンを用いる予測市場は新しい予測市場になるというわけです。悪いことができない予測市場になる。何故これが重要かというと、それは予測市場が、現在金融が行っている仕事のかなり多くを代替するだろうと考えられているからです。


今金融が行っている仕事の大変重要なことにヘッジングがあります。将来起こる不確実なことに対してヘッジしようという。


例えば大豆を作っている農民がいます。もし何かの理由で収穫の時に大豆の価格が暴落してしまったら、大損ですよね。そこで、そういう問題に対処するために先物市場があります。今年の秋の大豆の価格に対して先物で売っておいて、ヘッジするわけです。このように先物市場は、金融の大変重要な役割なのです。


でもヘッジングは予測市場でもできるのです。例えば、今年の秋に大豆の価格が下がりますと発表すればいいんです。実際に下がったとすれば、その時に持っている大豆の価格が下がるので損をします。でも賭では勝つわけです。下がると賭けたわけですから。そうすると実際の大豆の損失を、予測市場の価値で補填できます。これがヘッジングです。つまり先物市場と全く同じ事を予測市場でできるのです。予測市場の方が先物市場より沢山取引を、はるかに柔軟な方法でできます。


もしこういうことが実際に使われるようになれば、金融の世界は大きく変わります。今の金融の非常に重要な機能、ヘッジングという事をブロックチェーンを用いて自動的に行えるようになる。それによって先物市場もデリバティブもオークションも必要なくなってしまうのです。そういう意味で、予測市場は大変重要な意味を持っていると考えられます。

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〈次の更新は12月5日(水)の予定です〉







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