2019年6月24日 更新

3Dプリンターによる製造の新しいビジネスモデルとは

3Dプリンターが実際の産業でどう使われているのか、首をかしげる人も多いのでは。しかし、この数年で革新を遂げた3Dプリント技術は企業のものづくりで無視できない技術です。R・A・ダベニー教授による、3Dプリント技術を用いた6つビジネスモデルも見逃せません。

2018年5月、3Dプリンターで造形したミッドソールを用いたランニングシューズをアディダスが発売しました。今までにない外観と複雑な構造のミッドソールの高い機能が話題に。後継となる製品「Stella McCartney x adidas AlphaEdg 4D」は2019年4月に発売され、高い評価を得ています。

消費者ニーズに対応する株式会社ふらここの人形づくり

人形の製造・販売を手掛ける株式会社ふらここでは、若い世帯をターゲットに、小さくて可愛らしいひな人形を製作。原型の製造工程で3Dプリンターを用いることで、何度でも同じ原型を作れるようになり、ニーズに応じた細かな変更も容易になったといいます。

今後の産業における3Dプリント技術の可能性

こうした3Dプリンターによるものづくりについて、リチャード・A・ダベニー氏は「製造業そのものを一新させる可能性を秘めている」と考えています。彼が提案するビジネスモデルは次の6つ。具体的にどのような分野に適用できるのかも説明されています。
大量カスタマイズ生産
顧客のデータや要望に基づいて個別に3Dプリンターで造形する。補聴器、歯列矯正器具、義手や義足など。
大量多品種生産
製品の多様なバリエーションを用意し、3Dプリンターで受注生産を行う。店頭には各バリエーションのサンプルのみを置く。アクセサリーなど。
大量セグメント生産
少ない製品で、数十種類のバージョンのみをバッチ生産する。企業向け普及品、季節商品、売上げに周期性のある製品、短期間だけ流行する製品など。
大量モジュール化生産
製品本体は1種類のみとし、交換可能なモジュールのバリエーションを増やす。アンテナや電子回路などを直接基本ユニットに3Dプリントし、モジュールを組み込みやすくする。自動車、ドローン、スマートフォンなど。
大量複雑化生産
これまでの方法では不可能だった複雑な構造物を造形し製品を展開するモデル。ユニークな形状の実現、内部にセンサーなどを組み込むなどが可能。製造コストを減らしつつ製品の信頼性を高めることができる。アディダスのランニングシューズがこの例。
大量規格品生産
一定の条件を満たすことで規格品を低コストで大量生産するモデル。有機ELディスプレーや生地など。
すでに3Dプリンティング技術は「遊び」や実験の域を超え、実際の製造工程の重要な技術となりました。現在の日本社会では労働人口の減少が問題となっていますが、3Dプリンターの活用で必要な人的リソースを一部補えるかもしれません。また、時間やコストの削減とともに、3Dプリンターの効率的な造形方式では製造に伴う廃棄物の量も減らせるでしょう。
製造を担う会社のリーダーや製造業を応援する投資家にとって、3Dプリンター導入の可能性を考える時期が迫っているようです。
【参考URL】
「ここだけは、押さえておきたい! 3Dプリンターの基礎知識 :キヤノン」、ビジネストレンド、
https://cweb.canon.jp/solution/biz/trend/3dprinter01.html
「adidasが新たな3Dプリントスニーカーを発表」、3DP id.arts、2019年3月30日、https://idarts.co.jp/3dp/adidas-carbon-3d-printed-shoe-stella-mccartney/
羽根田真智「3Dプリンター製ひな人形がママに大うけ」、生成発展「テクノロジーで変革する中小企業の未来」、2019年4月18日、https://change.asahi.com/articles/0002/
リチャード A. ダベニー「大量・多品種・複雑化を実現 3Dプリンティングの進化がものづくりの常識を覆す」、『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2019年4月号』、ダイヤモンド社、pp.100-112
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