2019.2.12
石灰石由来の新素材が地球と人類を救う
海に流出するプラスチックゴミが世界的に問題となっています。その量、実に年間800 万トン以上。日本でも、2018 年8月に鎌倉市の由比ガ浜に、絶滅危惧種であるシロナガスクジラの赤ちゃんが漂着し、胃の中からプラゴミが見つかって問題となりました。
プラスチックは石油由来の樹脂から作られる素材で、基本的に自然分解せず紫外線や波で砕けるだけ。それがいわゆる「マイクロプラスチック」となり、有害物質を吸着して魚などに取り込まれてしまいます。人間の棄てたプラゴミが他の生命を脅かし、食料ともなる魚介類を汚染するかもしれないと懸念が高まっているのです。
プラスチックに代わる新素材の製品化が求められる現在、かねてから熱い視線を受けてきた日本発の新素材があります。株式会社TBM が自社開発したLIMEX(ライメックス)(ライメックス)です。石灰石を主原料とするもので、日本で100%まかなえる資源を用いて環境に害を与えず、生分解性プラスチックよりも安く製造できるというのが大きな魅力です。
日本発の新素材LIMEX(ライメックス)と100%バイオ由来の 新素材Plax
TBM がLIMEX(ライメックス)の自社開発を始めたのは2010 年頃で、16 年から販売を開始しました。LIMEX(ライメックス)は石灰石を主原料とする「ストーンペーパー」の一種。通常、1トンの紙を生産するのに20 本の樹木が伐採され100 トンの水が使用されます。しかし、LIMEX(ライメックス)は主原料が石灰石なので樹木の大量伐採が不要で、水も使用しません。石灰石0.6~0.8 トンとポリオレフィン約0.2~0.4 トンから1 トンのLIMEX(ライメックス)シート(紙代替素材)を作れるため、廃棄後に地球に害を与えにくいだけでなく、環境に低負荷な製造工程で作られています。
また、LIMEX(ライメックス)は従来のストーンペーパーを大きく引き離す高い品質を保持しています。その結果、名刺、メニュー表、ポスター、社内向けリーフレットなど、住友生命や三幸製菓株式会社、吉野屋といった大手企業も含め、多くの会社に導入されてきました。名刺にいたっては、ベンチャーから大企業まで2400 社以上が利用しているといいます。
ただ、LIMEX(ライメックス)は石油由来の樹脂を2~4 割含むため、完全な生分解性素材とは言えません。そこで、ポリオレフィン樹脂を100%バイオ由来、かつ100%生分解性素材に置き換えた「生分解性LIMEX(ライメックス)」を開発しています。同時に、グループ会社であるバイオワークス株式会社が開発・製造する100%バイオ由来の新素材「改質ポリ乳酸コンパウンドPlax(プラックス)」の製品化にも着手しました。
イベント、自治体、企業がLIMEX(ライメックス)利用に動き 出す
製造段階や廃棄後の環境負荷を中心に述べてきましたが、実のところ、LIMEX(ライメックス)の真価は半永久的なリサイクルが可能というところにあります。LIMEX(ライメックス)シートの端材やLIMEX(ライメックス)を用いた印刷物を回収・粉砕してペレットにし、プラスチック代替となる成形品をつくるというアップサイクルが可能で、しかも高効率で製造できるのです。もし再生ペレットが白色であれば、それを使って再びLIMEX(ライメックス)シートをつくることもできます。十分な埋蔵量のある石灰石をさらに節約しつつ利用し、製品の廃棄量も減らせるということです。