調査統計では「調査方法」をよく見てください。面接調査、質問票の郵送・回収、電話調査、ネット調査などがあります。今年夏に参議院選挙がありますが、新聞社の世論調査は電話調査なので在宅率が高い高齢者の回答比率が高くなり、高齢者が支持する政党の支持率が高くなる傾向があります。一方、ネット世論調査はパソコンやスマホで回答するので若い世代の回答比率が高くなりがちです。選挙の投票日の「出口調査」は投票所の出口で有権者に直接、投票した候補者を聞く面接調査なので、開票結果と合致する精度は高いと言われています。そのようにサンプルが異なると、調査結果の数字は変わってきます。
受験生にはおなじみの統計数値「偏差値(標準偏差)」にも欠点はあります。平均点数が低い集団の偏差値70と、平均点数が高い集団の偏差値70はサンプルが違うので比較できません。バラツキの影響もあり、ある科目の平均点30~40点台のテストで100点を取った生徒は90以上や100以上の偏差値が出ることがあります。その生徒の偏差値を全科目で平均すると数値が突出した科目の偏差値に引っ張られるので、「自分は実力がある」と錯覚して高い偏差値の学校を受験して失敗するという悲劇を生みかねません。
さらに言えばグラフのトリックにも要注意です。試しにエクセルで10050、10080、10110、10130、10150の数値で折れ線グラフを作成してみてください。こんなグラフができました(図表)
一見すると大幅に増えているように見えますが、それはグラフの10000以下の数値の部分が切り取られているためにそう見えるだけです。実際は、最初の10050と最後の10150の間では9.9%しか増えていません。5で割ると2%以下です。
投資家や就活中の学生は、企業の売上高や利益のグラフを見ても、こんな視覚の錯覚を利用したトリックをちゃんと見抜けるようにしましょう。悪質な企業は、1年おきに飛ばした数字でグラフをつくって落ち込んだ年の業績を巧妙に隠し、「わが社の業績は右肩上がりで成長中」とウソをついたりもします。
図表 数値.xls
「自分は思い込みで判断したりしない!」そんな人ほど要注意。アインシュテルング効果(構え効果)とは。
生産性を高めるために定石化した手法は、時に新しいアイデアの邪魔になってしまうこともあります。これは、心理学で言われる「アインシュテルング効果(構え効果)」が示した、思い込みによる弊害。アインシュテルング効果の悪影響を乗り越えるには、どうすればよいのでしょうか。