こうして考えると、消費者側からの視点ではわからなかったポイント制度の意図が浮かび上がってきます。言い換えるとしたら、消費者は5円、10円の割引きを受けるかわりに、「お店の選択の自由」と「商品購入の気軽さ」を失っているとも言えます。
このように物事を一面だけではなく、消費者側と販売者側の二面から見ることを「両面思考」と言います。物事を両面から考える癖をつけると、目の前の利益に左右されずに正しい判断ができるようになります。ぜひ、両面思考をする癖を身につけるようにしましょう。
わずかなポイントと引き換えに失う最大のものとは!
ポイントでの割引目的で、つい気軽に作ってしまうポイントカードですが、実はあなたの大切な個人情報をまるごと企業に教えてしまっています。カードの仕組みを通じて、企業はユーザーの年齢や性別、居住地、職業といった属性情報はもちろん、いつ、どこで、何を、どんな決済手段で買い物をしたか、どんな嗜好、生活スタイルなのかといったデータまで、事細かに収集しているのです。
そして、たくさん集めて分析し、ターゲットを絞ってダイレクトメールを送ったり、ニーズをとらえた商品開発を行ったり、効果的なマーケティングを行うのに利用しています。もちろん企業が集めた情報は、法律に則って厳密に管理されることになっていますが、それも保障があるわけではありません。
なにより、あなたに届いているダイレクトメールはあなたが欲しいものをデータ分析したうえで送られてきたもので、あなたはそれに釣られて買い物をしてしまっている……これは非常に怖いことではないでしょうか。
ポイントカードをたくさん持っていると、不自由になります。ポイントに影響されて余計なものを買って損をしたり、身に覚えのない会社からのダイレクトメールが送られてきたり、時には情報漏えいの被害を受けたりと、イヤな思いをするデメリットのほうがはるかに大きいのです。メリットとデメリットを理解したうえで持つカードは必要最小限にとどめ、ポイントカードにコントロールされないショッピングを賢く楽しみたいものですね。
泉 正人
ファイナンシャルアカデミーグループ代表一般社団法人金融学習協会理事長
日本初の商標登録サイトを立ち上げた後、自らの経験から金融経済教育の必要性を感じ、2002年にファイナンシャルアカデミーを創立、代表に就任。身近な生活のお金から、会計、経済、資産運用に至るまで、独自の体系的なカリキュラムを構築。東京・大阪・ニューヨークの3つの学校運営を行い、「お金の教養」を伝えることを通じ、より多くの人に真に豊かでゆとりのある人生を送ってもらうための金融経済教育の定着をめざしている。『お金の教養』(大和書房)、『仕組み仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など、著書は30冊累計130万部を超え、韓国、台湾、中国で翻訳版も発売されている。一般社団法人金融学習協会理事長。