2019年6月6日 更新

6月施行の改正消費者契約法で「ノークレーム・ノーリターン」は消える?

6月15日に改正消費者契約法が施行されます。契約に「消費者からの解除権」を放棄させるような不当条項がついていたら契約を無効にする規定が強化されます。個人間売買の「ノークレーム・ノーリターン」はその範囲外ですが、民法572条では無効にされます。

2019.6.6

6月15日施行の「改正消費者契約法」とは

6月15日、1年前に国会で可決、成立、公布された「改正消費者契約法」(正式名は「消費者契約法の一部を改正する法律」)が施行されます。
消費者契約法は、事業者と消費者の間で交わされた契約について、不当な勧誘で締結した契約や、不当な条項がついている契約は、後で契約の取消しができたり、契約そのものが無効になると定めています。目的は、事業者に比べて情報の量や交渉力で劣っている消費者を保護することです。
今回の大きな改正点は、次の3つです。
1 不利益事実の不告知による取消しの要件の緩和
2 取消し得る不当な勧誘行為の追加
3 無効となる不当条項の追加
1は、故意でなくても「重大な過失」なら取消しができるようになります。わざとでなくて「うっかりしていて、大事なことをお知らせするのを忘れていました」(=ほとんど故意に近い著しい注意欠如)では、もう通用しなくなります。
2は、不安をあおる商法や、いわゆるデート商法、霊感商法などを締め出します。
3は、契約に「消費者からの解除権」を放棄させる条項、事業者に解除権の有無を決定する権限を付与する条項がついていたら、契約自体を無効にするというものです。事業者からの解除権を付与する契約も、その理由によっては無効になります(消費者が保佐または補助開始の審判を受けた場合)。
このうち、ふつうの消費者にとってけっこう身近にあるのは3の「無効となる不当条項の追加」の、契約の「消費者からの解除権」を放棄させたり、それに制約を加える条項でしょう。くわしく言えば「契約の目的物に隠れた瑕疵(かし)があることにより生じた消費者の解除権を放棄させる条項」で、全部にせよ部分的にせよ、消費者に対する「瑕疵担保責任」を回避しています。2016年の改正でも不当条項を挙げて無効とされましたが、今回、不当条項がさらに追加されます。

「ノーリターン・ノークレーム」の可否は?

改正消費者契約法で無効とされる、消費者からの解除権を放棄させる言葉としておそらく最も広く知られているのは「ノーリターン・ノークレーム」でしょう。それに「ノーキャンセル」が追加されることもあります。日本語に直訳すると「返品不可・苦情不可(・解約不可)」です。
この言葉は、ネットオークション大手の「ヤフオク」や「ラクマ」にはあふれています(「メルカリ」は規約で禁止)。出品者が「ノーリターン・ノークレームでお願いします」と書いているものは簡単に見つかります。外来語だと柔らかく聞こえますが、落札者からの返品も苦情も一切受け付けませんという、けっこうきついメッセージです。
出品者がこう書きたい気持ちも、わからなくはありません。中古品は、住宅でもクルマでも家電製品でも衣類でも、あら探しをしようと思えば、いくらでもできてしまうからです。虫眼鏡がないと見えないような細かい傷やささいな不具合(「瑕疵」)を指摘されて苦情を言われたり、カネを返せと言われたり、返品されて送料を負担させられた苦い経験を持つ出品者が、懲りて「ノーリターン・ノークレーム」と書いているのかもしれません。
では、6月15日の改正消費者契約法の施行に伴い、「ノーリターン」と消費者に契約の解除権を放棄させているこの言葉は「ヤフオク」「ラクマ」などから消えてしまう運命なのでしょうか? 実は、そうとは言い切れないある事情があります。
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