2020年4月2日 更新

トマ・ピケティの映画「21世紀の資本」

2014年のトマ・ピケティのベストセラー「21世紀の資本」が映画になり、公開前に鑑賞させていただきました。今後の21世紀の経済を読み解く上で意味深い映画ですが、このコロナ・ショックの最中に観ると余計に心に響く作品でした。

2020.4.2

経済格差を生んだ r > gという不等式

トマ・ピケティ氏は2014年に「21世紀の資本」を出版し、過去200年にも渡る膨大な経済データを使って資本主義の進展と経済格差の関係を説明したことで有名になりました。また、その内容もさることながら、膨大なページ数にも関わらずベストセラーになったこと、さらには、この本を読み通した人がとても少ないのではということでも話題になりました。ワイドショーなどでも取り上げられた数少ない経済専門書です。でも、買ったものの途中で挫折したという人も多かったのではないでしょうか。
さて、著者のトマ・ピケティといえば、r > gというぐらい有名な不等式を用いて21世紀の資本主義を説明しました。映画の中でも自ら説明してるように、rは資本収益率で不動産、金融資産によるリターンを表し年率4〜5%程度、gは経済成長率で1〜2%程度というものを表しています。つまり、この不等式は、資本家がますます資産を築き、資本を持たない労働だけに頼っている層は資産をなかなか築けないということを主張しました。その結果、時間ともにどんどん格差が広がり社会構造に歪みが出て、これを是正するには累進資本課税の導入が必要だと提言して締めくくられています。この主張に関しては、発売当初から様々な賛否の意見が交わされており、今後、時間とともに議論が深まっていくことだと思います。この映画に興味深かったのは、このようなピケティの主張ではなくその結論に至った調査内容でした。
その1は、過去の世界大戦が契機となり大きく格差が是正されてきたということです。通常、戦争といえば、戦争特需という言葉があるように、戦争を通じてある特定の産業や資本家に富が集中する、つまり軍需産業の資本家が得をして格差が広がるものだと思い込んでいました。しかし、この映画では戦争を通じて国家は資産家から資金を徴収するなどをすることで強制的に格差が縮まったとされています。また、国家が一致団結し資本主義を推進することで、資産家への高率課税が導入されたり、社会保障制度が導入されるなどの構造の変化もその一端を担いました。最近では戦争が起こらない平和な世界になり、また、これからも戦争が起こらない世界を続くであることから今後は戦争を契機にした格差の是正がなされていないということも示唆しているように感じました。
2つ目は、資本主義が加速した瞬間です。この映画では、サッチャー元英国首相、レーガン元米国大統領の映像が資本主義の加速の象徴として登場しています。まさにこの二人は、それまでの経済学の常識に従い、格差が仮に存在していても経済が成長さえすれば、また、労働者が生産性を向上するれば、いずれその格差は埋まるという自由資本主義政策の推進を強力に行いました。一方で、ピケティは、この自由資本主義が格差を埋めるという考え方自体が間違いだと主張しています。それどころか、自由資本主義は格差の拡大を促進するとしています。私は、そのどちらが正しいということを結論付けるよりも、資本主義に関する考え方にも多様性があることを知ることのほうが大事であると感じています。
ちなみに、個人的にこの映画における一番の盛り上がったシーンは、レーガン大統領が「Make America Great Again!」と選挙演説で訴えかけているシーンです。この言葉は、ここ最近も米国選挙戦で聞いた気がします。映画では、この時期を境に資本家が収益を得る機会が増え格差が広がってきたとして取りあつかっていますがレガノミクスの終わりも寂しいものでしたが、現在のトランプ相場の終焉を迎えつつある今ではあまりにも類似しているように感じました。

歴史は繰り返す運命にある

映画の中では、さまざまな音楽や歴史的な映像を交え資本主義の流れを伝えていますが、とても勉強になりました。その中でも、ポイントになるのは格差社会は幾度となく繰り返されることだと思います。つまり、今後も社会情勢の変化によりその格差が広がることも縮まることもあるのではないかと思います。
この歴史が繰り返される背景には、戦争もそうですが、長期に渡る米国金利の低下傾向が大きく関係していると考えています。金利が低くなることで資本を有するものが借り入れを有効に活用し資産を増やすことが実現されてきました。しかし、低金利が進み定着した後の世界はだれも体験したことのない世界です。また、今回の新型コロナウイルスは、トランプ大統領はその状態を「戦時中」と表現し、メルケル首相は「第二次世界大戦以降最大の危機」と戦争に匹敵する出来事になりつつあります。
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渋谷 豊 渋谷 豊