2019.6.4
成人発達理論をベースにしたリーダーシップ小説
やがて私は、なんとかこの理論を1人の女性が自分らしいリーダーシップを発揮するまでの内的な葛藤も描いた小説仕立てで表現できないものか、と思うようになりました。中略
筆を進めて参りますと、成人発達理論をベースにしながら、これまでに「わたしを生きるあなたを生きる」という理念を探求した中で学んだ様々な気づきや知恵も、たっぷりと盛り込むことになりました。
205ページより引用
本著は小説仕立てでストーリーが進みつつ、真のリーダーシップについて考えさせられる一冊になっています。
著者は、株式会社Coreleadの代表取締役で、有冬C&Cコンサルティングの代表を務めています。メーカーで総合職を3年間勤務した後、外資系人材派遣会社へ転職し、その後独立。自らのコアな願い(理念・志)から周りに影響を発揮していく、戦わないのに無敵のリーダーシップ「コアリーダー」の育成に取り組んでいます。
著者は小説家ではありません。しかし、ストーリーに描かれているさまざまな課題は、実生活で日々仕事に向き合っている人やリーダーとして手腕を発揮していくことを望まれている人にとって、身につまされる内容。実践的なビジネス指南書であるといえるでしょう。
なお、本著の監修・解説を加藤洋平氏が務めています。加藤氏は、知性発達科学者であり、人材開発コンサルタントです。人間の発達や学習に関する研究の成果をもとに、大手企業の人材育成プロジェクトを支援。ラーニングセッションや成長支援コーチングを提供している人物です。
ストーリーの区切りごとに成人発達理論に基づいた加藤氏の解説がつけられているため、読みやすい一冊になっています。
体験を通してリーダーの俯瞰力は高まる
それは「俯瞰力」というものです。2人の会話の中では、特に俯瞰力を「視野の拡大」と「感情の客体化」という2つの観点から取り上げていました。
55ページより引用
主人公は主任である青木美智子という女性です。結婚して夫と二人暮らしの主人公が30代なったある日、直属の男性課長に呼び出され、将来管理職を目指してみる気はないかと打診されるところからスタートします。
主人公が勤める会社は、女性の場合、昇進しても係長止まり。課長になっている人は数える程しかいないという環境設定です。多くの日本企業の状態に近しい状況でしょう。
周りに気を使いつつ、さまざまな業務をサポートして業績を上げる手腕に長けている主人公。それは今の状況だから力を発揮できているのであり、立ち位置が変わればいろいろと面倒になっていくのではないか。
良好な社内の人間関係に満足しているのに、管理職を目指すことで周りから浮いてしまうことへの不安、部下をきちんとリードできるかという不安、女性の自分が本当に管理職を務めることができるのかといった不安。心によぎるさまざまな不安要素について、課長に対して主人公は正直に相談します。
良好な社内の人間関係に満足しているのに、管理職を目指すことで周りから浮いてしまうことへの不安、部下をきちんとリードできるかという不安、女性の自分が本当に管理職を務めることができるのかといった不安。心によぎるさまざまな不安要素について、課長に対して主人公は正直に相談します。