2019年2月17日 更新

鳥獣戯画を見てひとこと、どんな言葉? 感性を磨くアート研修

アート研修の目的は、今ビジネスにおいても重要視されている「感性」を磨き表現能力を開発することです。感性が磨かれると人生は豊かに彩られるでしょう。今回は「ことばを増やして鑑賞力を養う」です

『鳥獣戯画 猫又と狸』(河鍋暁斎 一面 19世紀 河鍋暁斎記念美術館蔵 無断転載禁止 [『河鍋暁斎 その手に描けぬものなし』展展示期間 3月6日~3月31日]

2019.2.17
この作品の感想を、形容詞をつかって教えてください。
数年前の夏、「うらめしや」展という展覧会に関わりました。
うらめしや・・・ご想像通り、幽霊画を集めた展覧会。暗い照明、青白く浮かぶ掛け軸には幽霊が並ぶ、これぞ日本の夏、という趣ある展覧会でした。幽霊たちは、みな恨めしげな眼つきで・・・そういえば、「うらめしい」って、最近会話でも文章でもさっぱり聞かない言葉ですね。
「うらめしい」①恨みに思われる ②残念だ、情けない(新選国語辞典 小学館)。古い日本映画やドラマでは、つれない男性に向かって「もう、あなたってうらめしいわ」などという女性の台詞など聞いた気がします。情けない、憎い、けれどそこに相手への愛着が微妙に含まれる感じ。うらめしや・・・絵画となった幽霊たちの、繊細な心の内が感じられます。でも今後、本格的に「うらめしい」が使われなくなったら、もしかしてそんな心の機微を捉えられなくなるのかしら?将来、幽霊画展覧会は「むかつくわ展」あたりになっていたりして・・・
自分を振り返っても、作品鑑賞時はじめ、日常で感想を表現する使う語彙が本当に減っている事に気付きます。特に、思い当たるのは形容詞。幽霊画やばい。ピカソやばい。国芳の猫、かわいい。ほぼやばいとかわいいに集約(今のところエモいは使用語彙外)しているかも。
うらめしい同様、やばいにまとめてしまった繊細な印象や感情をきちんと意識して表現していかないと、いずれそれに該当する感情自体をなくしてしまうのでは・・・?そんな気がして静かに反省。日常から、できるだけ豊かな形容詞使いを目指そう、と思った夏でした。
gettyimages (31166)

今月の作品は・・・

さて冒頭の作品です。あらためてご紹介しましょう。
『鳥獣戯画 猫又と狸』(河鍋暁斎 一面 19世紀 河鍋暁斎記念美術館蔵)。
河鍋暁斎(かわなべきょうさい)は、江戸から明治にかけ活躍をした絵師。まずは7歳で浮世絵の歌川国芳、その後狩野派に学びました。風刺を交え江戸の庶民生活を見つめる、いってみればサブカルチャーな浮世絵と、常に画壇に君臨、伝統の真っ向正統派である狩野派。暁斎は、その合間に、双方のスタンスや画風を吸収し融合し、且つ時にせめぎあいながら、独自の世界をむくむくと創り上げていった人です。「何派です」というシンプルな肩書がつけられない、変幻自在絵師。
これは、そんな暁斎が動物を描くため、題材を「鳥獣戯画」にとった“下絵”の一部(どうりで紙がつぎはぎされていたり、まだ着色されていない感じが残っていますね)。
「鳥獣戯画」といえば、京都高山寺に伝わる国宝。12-13世紀の古い作品ですが、数年前の展覧会では、擬人化されたウサギやカエルが長い絵巻物に展開する世界に「かわいい~」が殺到。アニメやフィギア化もされていますから、一度は見たことがあるのでは?
gettyimages (31174)

題材はその「かわいい」鳥獣戯画・・・のはずですが、なんでしょうかこのあやしいヤツラは。描かれているのは、猫、タヌキ、手前にはイタチとモグラ風の動物。赤いチャンチャンコを着こんだ猫の尻尾は2本(猫又と呼ばれる妖怪です)だし、なにしろそろって皆眼つきが悪い・・・異次元の生き物の眼ですね。そんな眼をしてのこのポーズ。常軌を逸した盛り上がりで踊る4匹(特に一番手前のモグラ氏の陶酔感・・・)。タヌキは頭に葉っぱを乗せていますから、今から何かに化ける前の高揚のようにも見えます。
驚くのは、この動物たちが、言葉で意思疎通できそうなキャラクターを確立しながらも、あくまで実物に忠実な動物の姿であること(猫の尻尾こそ2本ですが)。暁斎の、驚異的な記憶力で対象を記憶し再現する写生力は、当時“画鬼(がき)”と称されたそう。細密な動物画そのものであるのに、まんがキャラクターのような「性格」や「感情」まで感じさせるのは、暁斎の画力ならではです。
眼を合わせたら異界に取り込まれてしまいそうなあやしい妖怪たち。なのになぜか友達にもなれそうな気がする親しみ・・・暁斎の動物の「あやしい」を漢字にするなら、単に不審な「怪しい」よりも「妖しい」。妖しく、ほほえましく、ついかまいたくなる愛おしいヤツラなのです。
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