2019.12.
お金持ちの資産家に多い仕事は「経営者」
少々古いものですが、日本の資産家の仕事実態を知る好著に、わが国有数の経済学者である橘木俊詔・森剛志の両氏による共著、「日本のお金持ち研究」(日本経済新聞社・2005年出版)があります。
こちらによれば、高額納税者(年間3,000万円以上)である資産家は、30年間以上一途に自身の専門分野の仕事を極めてきたようなタイプが多い、とのことです。
仕事内容で見ると、最多は企業家(ビジネスオーナー)であり、次いで開業医とのこと。この2つの職業だけで、高額納税者の半数近くを占めることは驚きです。言わずもがなですが、「サラリーマン社長」や「勤務医」ではありませんね。開業医も広義の「経営者」ですので、日本の資産家は経営を仕事にしている方が多い、と言うことができそうです。
確かに、名門の中高一貫私立学校では、親の職業は企業経営者、開業医、老舗商店の跡取りなど、広い意味での「経営者」が多い印象はあります。通っていた方であれば、多くが頷かれるのではないでしょうか。しかも、この手の「経営者」は、常に仕事のことを考えており、ビジネスとプライベートの境が曖昧なことも特徴です。
数ヶ月間も仕事から離れて海外のリゾート地で過ごす方など、日本の資産家では少数派です。実際問題、所得源泉のトップは「労働所得」であるとする資産家の方が最多であり、半数近くを占めています。他方、「不労所得」は2割ほどに過ぎませんが、年齢が上がるにつれて、その割合が増加する傾向にはあるようです。
資産家になるような方は、現役時代は自身の仕事を愛し、一途に励んできた広義の「経営者」が多いのですね。
信念を持って仕事に励むことはお金持ちへの近道?
加えて、親世代からの相続の有無は、資産家が所有する資産高とはあまり関係性がない、というのも大変興味深いところです。実際に資産家のお話を聞いてみると、「才能の有無はお金を稼ぐ力には関係なく、自身の信念こそが大切である、」という趣旨を述べられる方が圧倒的に多いのだそうです。
ちなみに、資産家になるために重要な要素は、「心身ともに健康であること、」「自身の仕事を愛していること、」「正直な人間性であること」が、聞き取りトップ3です。一方、「有名大学を卒業していること、」「何でも要領良くできること、」「IQが高いこと」は、資産家になるためには重要でない事柄とされています。
結局のところ、資産家の皆さんは、自身の仕事にシッカリ取り組んだ結果として潤沢なキャッシュフローを手にし、それを効果的に節税・運用して時間経過を味方に付け、大きな資産を形成するに至っていると考えられるのですね。偶然による投資の成功や、思い掛けない高額の相続により、にわか資産家になることもあり得ますが、長続きはしない傾向です。