2019年9月19日 更新

入金までの時間差を利益に変える、知られざる金融ビジネス「ファクタリング」

「ファクタリング(債権買取業務)」は、売掛金など請求の債権を買い取って資金を供給する金融手法で、日本の産業界でもバブル崩壊後、約束手形にとって代わるように普及しました。給料の前借りの代役になる個人向け「給料ファクタリング」も登場しています。

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2019.9.19

ファクタリング(債権買取業務)とは?

あなたは給料日前にピンチになって会社から「給料の前借り」をしたことはありますか? 本来は給料日に支払われる給料を、会社に頼んで一部でも前倒しでもらうわけですから、社内規定で利息はつかなくても「借金」です。給料日、今月の支給額から前借り分が差し引かれることで「返済」されます。多くの会社では給料の前借りは将来の退職金が担保になっています。

一方、出張旅費の「仮払い」は会社からの「預かり金」です。出張から帰ったらすみやかに交通機関やホテルの領収証を会社に提出して精算し、お金が余ったら返します。

もし、ピンチなのに会社の都合で、社内規定で「給料の前借り不可」「出張旅費は立て替え払い、精算時に領収証と引き換えに渡す」だったら、どうしますか?
友だちに頼み込んだら数万円を数日間、借りられるかもしれません。友だちにしてみれば「金額は数万円で少ない」「期間は給料日、精算日までの数日間」「会社から給料が入るのは確実なので返済のアテは確実」という理由で、友だちのよしみで利息を取らずにお金を貸してくれるかもしれません。
その友だちの役割を"赤の他人"の業者が果たし、一時的な資金ニーズに応えるのが「ファクタリング」です。日本語で「債権買取業務」と言います。毎月の給料や、立て替えで払った出張旅費は、難しく言えば会社に対して請求してお金をもらう権利「債権」です。それを業者が買い取ってお金を渡します。
しかし、友だちと業者では二つ、大きな違いがあります。一つは業者は必ず手数料(利息)を取ることで、あらかじめ手数料を差し引いてお金を渡します。もう一つは、原則的に給料日や精算日に業者は貸した人からの返済を待ったり集金するわけではなく、貸した人の会社に請求して集金するということです。
「いくらうちの会社がケチでも、そんなことをされたら自分はクビになる」と思うかもしれませんが、債権を会社に請求する権利はそれを買い取った業者に移っているので、法律上は間違ってはいない行為です。

日本でファクタリングが成長してきた理由

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わかりやすく給料の前借り、出張旅費の精算の例で説明しましたが、企業間のビジネス上の金銭のやりとりではファクタリングは頻繁に利用されていて、企業の一時的な資金繰りのニーズに応えています。

たとえば病院経営では、金融機関がファクタリングで健康保険の「診療報酬請求権」を買い取ると、病院には手数料を差し引いて即金払いします。薬剤などの仕入れや職員へのボーナスの支払いなどで今すぐに現金がほしい病院は助かり、金融機関は手数料収入が得られます。後日、診療報酬の支払日が来たら、金融機関は病院に代わってそれを受け取り、即金払いした金額分を清算します。

診療報酬は社会保険診療報酬支払基金の審査に時間がかかるので支払日は「診療月の翌々月21日」と決まっていて、診療日から最長83日です。その時間差を埋めるサービスを提供して手数料を稼ぐのがファクタリングです。
問屋の小売店への売掛債権でも、建設業で下請けの元請けへの売掛債権でもファクタリングが活用され、資金ニーズに応え経済活動を円滑にしています。ファクタリングは銀行や信用金庫が設立した金融機関系の業者だけでなく独立系の業者も営業しています。経済産業省も資産の4割程度を売掛金が占めている中小企業の効果的な資金繰りの手段として、その普及を後押ししています。
日本ファクタリング業協会によれば、日本の買取ファクタリング残高は1995年は約1,600億円でしたが、2003年は約8,000億円と8年で5倍に急成長しました。背景には売掛債権をめぐる法制度の整備と、取引で約束手形が使われなくなり手形の割引による資金調達が行われなくなったことがあります。
1998年に債権譲渡特例法が施行され、2001年に売掛債権担保融資保障制度ができ、インターネット上の電子決済も普及。さらに2016年の下請法改正で下請代金の支払条件は原則現金になり、手形払いでは手形割引料を元請けが負担するルールができました。手形には取引金額に応じて収入印紙を買って貼る必要があり、そのコストと手間も嫌われて手形から現金へのシフトが大きく進みました。
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