2019.4.5
結局のことろ世界経済を左右しているのは米国の金融政策と中国経済
みなさんの記憶に新しいと思いますが2018年2月と10月に米国株式市場は大きく下落しました。その原因は米国長期金利の急上昇だとされています。
それ以前の2017年米国株式相場は、政策金利こそ利上げが開始されていましたが歴史的に見て低金利の環境下にあったことから強気相場を形成していました。しかしこの強気相場の裏では、2016年12月の利上げ開始、2017年のFRBバランスシートの縮小といった超緩和的な金融相場からの卒業による相場の変調が徐々に進行していました。
それからも市場環境は目まぐるしく変わりましたが、FBRは金融政策の正常化を目指し粛々と利上げの継続、そしてバランスシートの縮小を行ってきたのですが、2018年12月以降の株価の大幅下落(市場の催促、催促相場)に屈する形で2019年1月からハト派的政策へとかじを切り、そしてついに2019年3月20日のFOMCで2019年の利上げなし、12月終了予定の資産縮小も前倒しして9月に終了と市場に対して満点の回答を行いました。
しかし、市場はそれでは満足しませんでした。イールドカーブが逆イールドになったからだとか、経済見通しが明るくないから緩和政策を選択したんだなどといった理由を並べ、株価の見通しに対してあまり強気にはなれないようです。
今回はこのような市場の動きに対する分析ではなく、FOMC後のハウエル議長のコメントに注目すべきことがありました。これについて考えて見たいと思います。それは、パウエル議長の「インフレという観点では悩んでいない」、「インフレの低下圧力は大きなチャレンジ」というものです。
これによるとパウエル議長は現時点であまりインフレを懸念していないようです。しかし、市場の反応は異なります。このインフレを助長するようなFRBの政策転換は将来的にはバブルを形成することになります。
新聞等ではイールドカーブの逆転(10年と3カ月の金利)が話題になっていますが、5年と30年の金利差はFOMC後に逆に広がりをみせており将来の長期金利の上昇(インフレ率上昇)を示しています。私がこの時点でお伝えしたいのは、今回の政策転換で市場はインフレに注目をし始めているということです。
と、ここで、一旦米国金融政策の話は中断して中国経済の現状を確認してみたいと思います。最近は、中国の経済減速についての報道が増えていますが、そもそも中国の景気後退は2018年の初頭から始まっています。今に始まった話ではありません。ましてや米中貿易戦争がきっかけではありません。
中国は、持続的な成長を目指し2017年から過剰設備投資と過剰債務の整理を粛々と進めてきました。その結果、今回の景気減速が始まったとされています。実は、2014年から2016年にも同じような取り組みが行われその時も景気後退を招きチャイナ・ショックが起こりました。
今回、景気後退の兆しを受けて中国政府は国債の発行増、預金準備金の引き下げなどの緩和的な金融政策による経済対策を行い復調を目指しています。しかしながら、このような金融政策だけでは6%以上の経済成長をこれからも維持できるかは疑問です。そもそも成長自体が鈍化し始めている中国において、これまでの高成長を維持するのは更に強力な財政出動などが必要になると市場は捉えています。