2019年4月5日 更新

2月の元FRB議長グリーンスパン氏のコメントに注目

3月20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で2019年の利上げ見通しが「ゼロ」となる見通しが示されました。市場の期待通りにFRBがハト派的な姿勢を示したにもかかわらず市場は落ち着きを見せていません。市場の不安定さの原因の一つが2月に報じられたグリーンスパン氏のコメントの中で見つけることができました。

財政悪化はいつもインフレを呼び起こす

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この言葉は、元米国FRB議長のアラン・グリーンスパン氏によるものです(2019年2月のブルームバーグ社のインタビュー)。このニュースによると、グリーンスパン氏は、「政界を始め多くの人が財政悪化が進む段階でリスクに無頓着なのはいつものこと、なぜならば、財政悪化は原因であって問題そのものではないからだ」とし、さらに、「そして、問題そのものはタイム・ラグを置いて、しかし必ずやってくる」、「政治システムが対処するのは、最終的に財政赤字がいつものとおりインフレを生んだ時になってからだ」とコメントしたそうです。
私がこの記事を読んだのは2月でした。その時は、確かにその通りだなぁということで軽く読んでしましましたが、ここ数日の状況を踏まえると深い意味を感じるようになりました。
金融緩和に再び舞い戻った米国、中国、欧州、そして日本。その金融緩和による景気浮揚の賞味期限は市場の反応を見ていると短そうです。やはり、今や米中欧日の全ての国が財政政策を積極化せずには経済の活性化、または維持ができなくなっている状況に追い込まれたと言えます。
このことを知っていただきたく米国と中国の今の状況を前述しました。米国はFBRが催促相場に負けインフレを容認する政策に舵を切り、結果として今後の金融政策の自由度を失いました。今後の米国経済に活力を与えるのは財政政策しか残っていないかもしれません。その結果、米国の財政悪化が加速しそうな予感がします。一方、中国も現在は緩和的な金融政策にて経済の立て直しをはかっていますがやはり積極財政は不可欠な経済状況といえます。そしてこれは欧州も日本も同じ状況です。世界的に将来はますます財政悪化への一途をたどる可能性があります。
もし、今は懸念されていないインフレの芽がこの政策転換により財政悪化を通じて育ち始めるとすれば、将来長期金利が予期せぬ上昇をする可能性が高まります。長期金利の上昇は、世界各国の中央銀行が経済の鈍化に配慮して緩和的な金融政策を維持することができなくなることを意味し、結果、政策金利の引き上げを余儀なくされる可能性が高まります。そうなると緩和的金融政策に支えられた相場は厳しい状況におかれます。
経済のマエストロ(指揮者)と称賛されたグリーンスパン氏は、米国の現状を見定めて、今回のハト派への変更を予想しコメントしたかもしれません。緩和的な金融政策に一喜一憂するのではなく、俯瞰的な相場観でインフレの兆候に注意を払うことが一歩先を行く投資家になることだと思います。
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渋谷 豊 渋谷 豊
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