2017年12月21日 更新

〈渡部 建〉新たな挑戦と継続が、未知なる世界を拓く

「お金とは、通知表のようなもの。(渡部 建)」

STAGE編集部:デビュー当時のままだったら、今の自分たちはなかったということですね。

「もともと不器用だし、キャラクターもないし、しゃべり下手なんですよ。ゴルフで喩えると、ドライバーが全然飛ばなかったから、それを諦めてスコアメイクだけを考えることで上達できた。もしドライバーが飛んでいたら、気持ちはいいかもしれないけれど、スコアがまとまらなかった。

2010年頃から、昔では考えられなかったかもしれないですが、『芸人さんがやっていない仕事を全部やろう』がテーマになったんです。FMラジオの帯番組からスタートして、毎年、人が持っていない資格を取るとか。そうすると、みんなに『何やってんだ?』って突っ込んでもらえるんですよね。不思議なもので、お笑いから離れれば離れるほど、お笑いに跳ね返ってくるんです」。
STAGE編集部:最近は、趣味のグルメの仕事も多いですよね。

「もともと食べることは好きだったんでけど、これもJ-WAVE『PLATOn 』でのタベアルキスト・マッキー牧元さんとの出会いが大きいですね。

ただ、少しグルメがわかってきたかなというぐらいの時、あまり詳しくない人が『焼肉はここが一番!』みたいなこと言っていたんですよ。『いやいや、何軒行ってそれを言っているの?』と思ったんですけど、よく考えると自分も同じ延長線上にいるんだなって気づいたんです。

それを反面教師にしようと、とにかくお店に行きまくることにしました。やっぱり10軒行っての1位よりも、1,000軒行っての1位のほうがいいですよね。ピンからキリまで食べないと『この値段でこの質で』って言ってはいけないなと。それからは本当に年間何百軒と食べ歩いています。

よく『趣味が仕事になっていいね』とか言われるんですけど、仕事になったら真剣にやらなきゃいけないという考え方。すごい影響を受けたのが、イチローさんのドキュメントです。『年間200安打を打つのはすごく大変ですよね。努力が要りますね』という質問に『僕は年間200本打つことを決めたので、その過程のことは努力でも何でもないですよ』と言っていて、これをやらなければと思いました。」

STAGE編集部:仕事だから真剣に年間何百軒回ると決めて回っていると?

「ルールにするというやり方です。あと、誰かに『いいお店知らない?』と言われたら必ず紹介するというルールも決めました。めちゃくちゃ面倒でメリットもないんですけど、どんな忙しい時でも必ず紹介しています。1度ルールを決めたら、そこに対する感情が無視できるので、もう“店紹介マシン”になって答えています。

体を張るロケのときにも「ロボモード入ります」と言って、疲れたとか眠いという感情を捨てて、淡々と言われた通りやるというメソッド(笑)。このロボモード理論を今タレントさんの間ですごく流行らせています。

今、長距離走も始めているんですけど、これも同じです。辛いと思った時に辛いと考えずにネガティブな感情を放棄すると、意外と誤魔化せてうまく続けられるんですよ」。

単なる“好き”だけでは人の心を動かせるまでにはならない。自分にルールを課しそれをやり続けることで頭一つ抜きん出ることができる。たまたま手にしたグルメキャラを独自の方法論で突きつけることで、芸能界きってのグルメと言わしめるまでに昇華させた。

■食べることにかけるお金と時間のコストは“投資”

STAGE編集部:借金をしていた頃から比べて仕事も収入も増えたと思いますが、その使い方というのは?

「やっぱり食費はかかりますね。日本に生まれたからには四季を楽しみたいので、旬のちゃんとしたものを食べようと思うとそれなりに費用がかかります。これをどう捉えるかですけど、“食費”と考えると寂しいので、将来への“投資”だと考えています。自分を育成しているという意識です」。

STAGE編集部:いいものを食べることにはお金を惜しまないということですね。

「美味しいものに関してもロボモードですよ(笑)。値段は考えないようにしています。シェフに『これがありますけど、どうします?』と言われれば、全部乗ります。今、お金を使わなきゃいけないところは“そこ”だと思ってるので」。

STAGE編集部:いまお金を使った分が、後から返ってくると。

「そうですね。今はマネージャーにお願いして仕事より飲食店優先のスケジュールを組んでもらっています。最初は仕事に支障が出るのは怖かったし、事務所も反対でしたが、そうやって多少無理してでも食べることに“投資”をしたら、いいものを食べながら、仕事もうまく回って、運動もできて、結果的に時間をうまく使えるようになりました」。

ひとつの道を極めるためには中途半端ではいけない。仕事よりも飲食店に行くスケジュールを優先するなど、無謀とも言える挑戦に出た。時間が制限されお金もかかる。だがそれによって誰もが知るグルメキャラという確固たる地位を築くことができた。

■新しいことにチャレンジすると、時間はゆっくりと流れる

STAGE編集部:時間の使い方にもこだわりはありますか?

「必ず新しいことにチャレンジする時間を設けることですね。脳のメカニズムで、歳を取ると経験したことばかりになるから時間の流れを早く感じるそうなんです。子どもの頃は初体験が多いから長く感じて、大人になると経験したことばかりなので時が経つのが早く感じると。

つまり、新しいことをやらないと、人生はあっという間に終わる。だから人生でやっていないことをやるということをまた自分に課すルールにしました。大変ですけど、これまでやってなかったことをやると、充実した時間を過ごせ豊かな気持ちになるんですよ。時の流れをゆっくり感じるためには、自分のできることだけをやらないで、ちょっとだけ負荷をかけることも必要なんです。」
STAGE編集部:新しく始めたことが、意外なことに活きたりするものですか? 

「例えば、今ランニングを始めたんですけど、旅の楽しみが1個増えましたよね。旅もご飯も温泉も好きだけど、観光にはあまり興味がなかったんですよね。歴史が全然分からないから。でも、全国各地のお城の周りを走ることが楽しみになったんですよね。そこから今度はお城に興味が湧くようになりました。そうやって興味が増えていくと、人生が楽しくなるし豊かになると思うんです。」

かつては、借金しながらしか生活できず、芸人として落第点を取っていた渡部。だが、悪いところは素直に認め、プライドを捨てて新たな分野に挑戦し続けた。手にしたお金を出し惜しみすることなく“投資”した結果、他の誰でもない独自の地位を築き上げることができ、それが収入にもつながっている。渡部にとって、お金はさながら自分への通知表ともいえる。

歳を取れば取るほど、初めてのことに挑戦するのは腰が重いもの。だが勇気を出してその一歩を踏み出せば、その先には未知の世界が待っている。渡部はこれからも未知への挑戦を続けることで人生を楽しんでいくに違いない。
「お金とは、通知表のようなもの。(渡部 建)」

芸人 渡部建さん

1972年、東京都八王子市出身。神奈川大学経済学部卒。1993年、高校の同級生だった児嶋一哉とお笑いコンビ「アンジャッシュ」を結成。緻密な計算に裏打ちされたスタイリッシュな勘違いコントで人気を博す。またグルメ・高校野球・心理学…など幅広い知識を活かし、バラエティ番組で活躍。テレビ・ラジオの司会者としてもその才能をいかんなく発揮している。
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