2018.12.14
ドル円の年間変動幅は歴史的な狭さ
2018年の米ドル円(以下、ドル円)相場は、年間の振れ幅が歴史上で最も狭い幅で終える可能性が高くなってきました。2018年のドル円は112.70円でスタートししばらくは水準を維持していたものの徐々に下値を切り下げる下落基調に入り3月26日に2018年の最安値104.56円につけました。このドル円下落の背景は、日米政策当事者のスタンス変更に対する懸念とドル円の需給バランス調整の2点だとされています。
お屠蘇気分の抜けない1月9日に日銀より長期国債の買い入れオペを減額するという公表がなされ日銀の金融政策が正常化に向かうのでいないかという空気が市場を一気に取り巻き今後の円高要因として認識されました。そのため、日本の長期金利(10年)は約1ヶ月をかけて0.05%から0.10%まで徐々に上昇しました。たった0.05%の上昇かと思う方も多いのではないかと思いますが、長らく継続すると思われていた低金利が急に跳ね上がっため動揺が大きかったようです。また、この同じタイミングで米国財務長官のムニューシン氏が1月24日にドル安容認の発言を行ったことが拍車をかけ日米の金融政策当事者発のドル安円高がスタートしました。
これをきっかけに市場関係者はドル円の需給バランスの調整に入ります。2018年当初、シカゴ先物市場では円売りポジションが大量につみあがっており、いつでもそのポジションの解消、つまりドル売り円買い(=ドル安円高)が起こりやす状況ではありました。そんな状況下で、1月以降の日米当局から発せられるドル安円高要因だけではなく、米国の雇用統計、平均賃金の高い伸びを背景にした米国10年金利の急上昇による世界同時株安も加わったことで円売りポジションはまたたくまに解消され、3月初旬には円買いのポジションの方が積み上がるまで投機筋のポジションはドル売り円買いに逆転しました。この流れで2011年3月より続いている円安トレンドに終止符が打たれ100円割れを予想する声も多く聞かれるようになりました。
しかし、この流れは長くは続きませんでした。それは、引き続き米企業の業績拡大期待と雇用状況の堅調さを背景にFRBの金融政策ガイダンスがドル金利の先高感を演出していたことで日米の金利差が拡大するという見通しが市場を支配しドル高へドレンドは切り替えしていきました。また、すごいなぁと思うのは、これだけ日米貿易摩擦が懸念されるなかでも米国の企業業績や雇用が堅調であったことからドル円は年の後半はほとんど動きがなくなりました。10月3日には今年のドル最高値である114.54円を記録しましたがそれ以降も114円〜111円のレンジで収まっています。ということで、2018年のドル円の変動幅はなんと9.99円。とても変動が少ない1年となりそうです(12月7日時点)。
さて、この値幅が狭くなった背景ですが、実は2018年のドルと円は主要通貨の中で1番目と2番目に強い通貨でした。欧州の経済不安、原油価格の不安定、中国経済への懸念などから自然とドルと円への選好が高まったことでドルと円が共に強くなる傾向が高く、結果ドル円が共にパラレルに動くことが増え、変動幅が一気に狭くなりました。対年以降はどうなるのでしょうか。
過去20年間のドル円の変動幅は約17円
さて、歴史的にはどの程度ドル円は年間で変動してきたのでしょうか。確認してみると、1996年から2016年のドル円の平均変動幅は約17円です。また、2017年も11.29円と歴史的に変動幅が狭いことから話題になりましたがそれ以上に2018年の変動幅が狭くなりました。ちなみに2016年6月に行われた英国のEU離脱、いわゆるブレグジットのときは、たった1日でドル円が7.93円(98.76円〜106.69円)も動き大騒ぎになりましたが、ここでもその変動の幅の狭さが実感できます。
ところで、2019年のドル円は今年と同じように狭い幅に収まるのでしょうか。1970年前半以降から現在までのドル円の平均年間変動率は約14%程度。これをベースに2019年のドル円を予想すると楽しいのではないでしょうか。例えば現水準を中心として14%程度円安か円高か?とか。
ちなみに為替動向のトレンドは、ほぼファンダメンタルズと需給により決定されます。世間で注目されている2019年のキーワードは、
1)米国の金融政策の変更
2)日本の長期金利動向
3)日米物品協定の行方
4)リスクオフの台頭
5)消費税引き上げ
6)原油動向
7)米国企業の業績見通し
2)日本の長期金利動向
3)日米物品協定の行方
4)リスクオフの台頭
5)消費税引き上げ
6)原油動向
7)米国企業の業績見通し