2018.1.29(2019.11.15更新)
日本でサーバント・リーダーシップが叫ばれてから早10年
サーバント・リーダーシップは1970年代にアメリカのロバート・K・グリーンリーフによって提唱されました。グリーンリーフは、ビジネス現場での経験に基づいてマネジメントの研究・開発、教育を行った人物で、組織人として生きる道を、生涯にわたり探求しつづけました。「真のリーダーはフォロワーに信頼されており、まず人々に奉仕することが先決である」というリーダーとメンバーの信頼関係に基づいた支配しないリーダーシップを強調。
日本にもこのアイデアが輸入され、特に近年は企業や人事部門からの注目度も上昇しています。サーバント・リーダーシップの必要性や重要性を訴えるためにNPO法人サーバント・リーダーシップ協会が2004年に設立され、グリーンリーフの主著も邦訳されました。
では、同協会設立から既に10年以上が経過した現在、日本にサーバント・リーダーシップは根づいてきているのでしょうか。
では、同協会設立から既に10年以上が経過した現在、日本にサーバント・リーダーシップは根づいてきているのでしょうか。
現場の部下達はなかなかサーバント型上司に巡り会えない
2015年、『エン転職コンサルタント』が同サイト利用者1,380名を対象にアンケートを実施しました。その報告によれば、サーバント型リーダーと働きたいと答えたのは回答者全体の実に77%。内訳を見ると30代で80%、40代で78%、50代以上で74%となっており、若い人ほどサーバント・リーダーシップについて肯定的な見方をしているといえます。
部下の立場である彼らにとってサーバントリーダーの大きなメリットは、「メンバーが活躍しやすい環境が作れること」。管理職がメンバーを理解してその可能性を引き出せることや、メンバー一人ひとりの個性や価値観、要望を尊重してくれることなども重視されています。
しかし、希望は現実と一致していません。現在もしくは直近の上司がサーバントリーダーかどうかについて、回答者の64%がNOと答えました。これだけサーバントリーダー(サーバント型リーダー、サーバント・リーダーシップ)という言葉が広まってきても、肝心の現場で巡り合うのはまだまだ難しいというのが実状のようです。
サーバント型リーダーの問題点「いい兄貴問題」
サーバントリーダーが陥りやすい問題として、「いい兄貴問題」が指摘されています。「いい兄貴問題」とは、チームリーダーが親身になってメンバーの細かいタスクや雑用、面倒なタスクを引き受けてしまうことで、リーダーとして本来やるべきことができず、ビジョンの提示や意思決定という重要な役割を全うできなくなってしまうというもの。メンバーに「奉仕」し、現場の細々としたことを引き受けているだけで、仕事をしているつもりになってしまうという問題です。そのようなリーダーでは、メンバーのフォロワーシップも弱まり、メンバーを自分のもとに引き留める力も失ってしまいます。
実は、『エン転職コンサルタント』が行った先述のアンケートで興味深い点があります。それは、グリーンリーフがリーダーシップで重視した先見性や洞察力、チーム内で能力を補完し合うこと、奉仕の精神については、日本のビジネスマン達はあまり注目していないという点。「メンバーが活躍しやすい環境がつくられる」ことを全体で57%の人が、「一人ひとりの個性や価値観、要望を尊重する」ことを全体で33%の人がサーバント型リーダーのメリットとしてあげているのに対して、「正しいことを見抜く力がある」は19%、「互いにないものを補いつつ、互いに支え合える人間関係を大事にする」が17%、「相手に対する思いやりや奉仕の精神を常に念頭に置いている」は16%だったのです。