2017年7月11日 更新

会社に必要とされる人は持っている!「自分という会社を経営する感覚」

「トップ人事コンサルタントが明かす いる社員、いらない社員」の著者小笹芳央さんにインタビュー。自分を会社に見立てた「i-Company」の信用を高めれば、人とお金は集まってくる。そして、自由な経営が可能になる、と提案する小笹氏にビジネスマンの生き方を聞きました。

2015.3.28
モチベーションを中心に据えたオンリーワンのコンサルティングを展開される著者。すでに多くの書籍を上梓している著者が、今回は「個人」に焦点を合わせ、自分株式会社を経営する重要性を説く。これからのビジネスマンにとって、必読となる本書の内容をもとに、私たちを取り巻く環境の変化とその対処法について聞く。
―簡単な自己紹介と事業内容をお話ください。

リンクアンドモチベーションという会社は、社名にもありますように「モチベーション」というものに特化した、企業変革のコンサルティング会社です。この分野におけるコンサルティングとしては、オンリーワンの会社となっています。

4つの事業形態を柱として事業を展開しています。
1つ目は、社員向けとなるモチベーションマネジメント事業です。社員のモチベーションをいかに高めていくかという教育研修事業。モチベーションを引き出すような人事制度、評価、給与制度の構築。会社のビジョンや理念を共有するためのイベントやソリューションの展開などを行っています。
2つ目は、採用マーケットをターゲットとしたエントリーマネジメント事業です。モチベーションの高い組織を作るために重要となる、モチベーションの高い人材の採用。あるいは、モチベーションの高い状態で入社いただくための採用戦略の立案や実行支援を行っています。

3つ目は、対株主や対顧客への認知度向上を目的とした企業ブランドの支援事業となるブランドマネジメント事業です。

そして、4つ目にプレイスマネジメント事業として、働く人のモチベーションに大きく影響を与える働く場や環境のマネジメントを行っています。

創業2000年以来7年半、この4つの事業で歩みを続けています。モチベーションが大事だという考え方が受け入れられ、急成長・急拡大しております。

―多くの書籍を執筆されていますが、出版の動機はどういったものなのでしょうか?

私は企業変革というのを本業としています。これには、「企業経営側に向けてのメッセージ発信」とそこに働く「個人の方に向けてのメッセージ発信」という2つの基軸があります。

「企業経営側」へのメッセージは、「これからは、モチベーション・カンパニーを目指しましょう」ということです。企業の経営資源には、人・物・金・情報といろいろありますが、究極的には人材です。中でも「モチベーション」こそが、本当の意味での企業の成長エンジン足り得ると思います。
社員のモチベーションを成長エンジンとするような経営手法を営んでいる会社のことを「モチベーション・カンパニー」と呼んでいるのですが、これからはこうした会社に変わっていくことが必須となる、と考えています。

昔のようにハードや設備が価値を生むのではなく、人やソフトが競争優位性を分かつポイントとなっていることに現れているように、一人一人のモチベーションをどう引き上げるのかが重要になる。だからこそ、「モチベーション・カンパニー」を目指しましょうというメッセージです。

対して、「個人側」へのメッセージは、企業側に依存するのではなく、これからは「i-Campany」を目指しましょうというものです。自分のキャリアや人生を会社に預けきる人生ではなく、どこかに勤めていても、自分株式会社の経営意識を持つ重要性を訴えています。

その上で、「i-Campany」の戦略やビジョン、商品などのクオリティーを高め、人気企業にしてきましょうというメッセージです。
私自身の大きな動機・志は、「社会の活性化」にあります。そのために経営側に対しては「モチベーション・カンパニー」への変革支援をし、働く個人に対しては、「i-Campany」という意識を持って自分を主体的に経営する意識を啓発する。こうした動機の中でも、特に個人側に焦点を当てたのが本書になります。

これからの時代は、「i-Campany」でも多くの会社からオファーが来る会社と、まったく選ばれない会社とに二極化していきます。時代の趨勢の中で、選ばれる自分であるための発想法や切り口をまとめています。
―本書で一番伝えたかったことはどういったことでしょうか?

最も伝えたかったことは、「会社と個人の関係が変わっている」ということです。
戦後復興期から高度成長期までの間、会社と個人はいわば「相互拘束型」でした。お互いがお互いのことを縛り付けていたのです。年功序列型の賃金や終身雇用制度というのは、途中で辞めたら損をするようにできている、いわば社員を縛り付けるための仕組みなのですね。

それはつまり、会社の側も個人に縛られていたということを意味します。一度正社員として雇用したら、終身雇用制度の下、どれほどパフォーマンスが低くても解雇など出来なかった。1990年以前に解雇などすれば、社会的に大変な批判を受けたわけです。こうした両者の「相互拘束型」の関係が、いま「相互選択型」の関係に変わっています。お互いが状況に応じて関係を取り結んだり、必要なくなった時には自由に解消出来る状況になった「流動化」の時代が始まりました。

これは「企業と投資家」の間にも起こっています。これまで系列会社による株式の持ち合いは当然のように存在し、固定化した関係が維持され続けていましたが、この関係にも「流動化」の波が押し寄せました。パフォーマンスの低い株は持っていられないとして、系列の再構成が行われています。
また、「企業と投資家」の関係同様に、「企業と顧客」の関係にも変化が現れています。長年の取引だからという理由で継続していた業務関係に、コストパフォーマンスという発想が入ってきました。買う側の意識変革による「企業と顧客」の関係の流動化です。このような変化の中で、企業にとってもう一つのステークホルダーである「社員」との関係においても起こっています。これがもたらすのが「2極化」なのです。

企業側にとっての「2極化」とは、優秀な個人から選ばれる企業である「モテる企業」と、優秀な人材が流出、もしくは募集しても良い人材が集まらない「モテない企業」への分化です。これは間違いなく企業の競争力に直接的に影響していきますが、こうした変化は個人にも訪れます。これがどこにいっても「いる社員」になる人と、「いらない社員」になる人との「2極化」です。ですから、主体的に「i-Campany」のバリューを高めることが、今の時代の必須事項となったと主張しています。
―本書を読んだ方におすすめの実践法というのはありますか?

「i-Campany」ということを前提にすると、まずは「i-Campany」としてのビジョンを持つことです。自分のビジョンと言われると考えにくい場合は、自分株式会社の顧客、株主、主たる商品力・技術力を考えてみるといいと思います。その整理が終わったら、今度は企業経営と同じように3年後、5年後のビジョンや戦略を立ててみてください。こうした視点を持つことで、なんとなくこなす仕事にビジョンや意義が見いだせ、結果として「i-Campany」のバリューを高めることが出来ると思います。

―実践されてきたお金や時間の使い方をお話いただけますか?

私自身で言いますと、30歳を控えた頃から3年後、5年後の将来を見越して、「i-Campany」のPLとBSを作っていました。年収、家賃、家族構成などを想定すれば、売上と原価が見えてきます。

どうなったら債務超過になるのか。どういう戦略を持てば、良いBSを作ることができるのか。3年後、5年後のPLとBSを作ることによって、「見えない未来」が見えてくるのです。このままのライフスタイルを続けていけば、どんな未来になっていくのかを知ることによって、今後の「i-Campany」の戦略が見えてきます。

私自身も見えない未来を見たことによって、本を執筆するようになったり、様々な戦略の変更を行いました。ですから、ご自身の3年後、5年後のPL、BSを作ってみるということをおすすめの自己投資として提案したいと思います。

さらに、予想される未来とありたい未来とのギャップを実感することによって、自己研鑽に向けた時間とお金の投資が現実味を帯びてきます。私自身もBSやPLを作ってからは、自分への投資として、より一層読書やセミナーに投資する機会が増えていきました。

―本日のような成功を導いた要因とは何であるとお考えですか?

自分はまだ成功しているかどうかは分かりませんが、昔に比べると相対的に成功していると言えるかもしれません。その意味で言うと、「i-Campany」の信頼残高が高まったことが要因であると考えています。

私は、究極的に求めるべきは「i-Campany」の信頼残高だと考えているのですが、それは信頼さえあれば何でも出来るからです。信頼さえあれば、数十億、数百億の資金調達も可能ですし、数十人、数百人、数千人の人を集めることも可能になります。信頼さえあれば、お金も人も集まる。だから事業も出来るという構図であると考えています。

言葉を代えれば、「i-Campany」の信頼残高が高まれば、人・お金が集まり、自由な経営が可能になるということです。これまでを振り返りますと、信頼獲得によって自由を得てきたと言えると思います。

では、その信頼をどのようにしたら獲得できるかと言うことですが、これは「約束」と「実行」です。いつも有言実行で周囲に宣言する。自分の約束したことを粛々と実行していく。そうすると、少しずつ蓄積されていった信頼残高がある時、バブルのように突然ブレイクスルーします。今がある理由を端的に述べると、「愚直に1つ1つの約束を果たしてきたから」ということです。その結果として、若いときに比べると多少なりとも信頼残高が高まったかなと感じています。
―今後の夢や目標をお話しいただけますか?

世の中で初めて「モチベーション」ということを正面に据えた事業を行ってきました。この「モチベーション」に関連する事業の裾野を広げていく、ということが1つの夢になっています。

1962年にセコムという会社が、当時初めて「安全」というキーワードで起業されました。45年たった今、安全関連のビジネスというのは2兆数千億円の裾野まで拡大しました。私たちは40年後の起業になるわけですが、マズローの欲求階層説的に言えば、安全が担保された世の中にあって、次に来るのは自己実現やモチベーションとなります。その意味で、これからは教育研修やレジャー産業なども含めて、いろいろな分野に自分たちのモチベーション・エンジニアリングという技術を広げて、こうした事業の裾野を広げていきたいと思っています。

―読者の方にメッセージをお願いします。

夢の機能とは何か。それは夢を持つことによって「今が色鮮やかになる」ということだと考えています。将来的に夢が叶うかどうかよりも、今日・明日がワクワクと感じられるような夢を持つこと自体の方が大切ではないでしょうか。

夢は叶ってしまえば、その時点で夢ではなくなるわけです。ですから、今を生きるために、今を活き活きとするために夢を持っていただければと思っています。夢を使うという観点で考えてみてください。

―本日はありがとうございました。

(本記事は、2007年10月10日にファイナンシャルマガジンに掲載されたものを再掲載しています)

株式会社リンクアンドモチベーション 社長 小笹 芳央さん

1961年生 大阪府出身。 早稲田大学政治経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。 組織人事コンサルティング室長、ワークス研究所主幹研究員などを経て、2000年株式会社リンクアンドモチベーション設立、同社代表取締役社長就任。 現在、同社を中核にグループ4社による事業を展開。
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