2018.3.9
今度は老人の声が広場に響き渡った。それまで穏やかに話していた声質と違い、迫力のある低音で僕の心を直接鷲掴みするような声だ。
「今すぐ、今すぐ君は病院に行きなさい!行って君の娘の顔を見なさい。
今日、君の娘は手術を受けている」
なぜ、そのことを老人が知っているのか?
僕の頭には疑間が駆け巡ったが、次の老人の言葉が僕のケツを見事に蹴り上げた。
「お金で受け取れないものは、身体で受け取りに行きなさい。貧乏人も金持ちも関係ない。だから今すぐ走るんだ!」
今日、君の娘は手術を受けている」
なぜ、そのことを老人が知っているのか?
僕の頭には疑間が駆け巡ったが、次の老人の言葉が僕のケツを見事に蹴り上げた。
「お金で受け取れないものは、身体で受け取りに行きなさい。貧乏人も金持ちも関係ない。だから今すぐ走るんだ!」
*
はい、わかりました!
ええ、病院の場所は知っています。
ええ、病院の場所は知っています。
これは、タクシー代ですか?
すいません!
すぐに行きます!
すいません!
すぐに行きます!
*
「気にするな。一刻も早く行くんだ」
老人が見送る中、僕は急いでタクシーに乗り込んだ。
運転手に病院の名前を告げると、タクシーは乱暴な音を立てて走り出した。
何も言わないでも急ぎだと思ってくれたのか、道中は猛スピードで飛ばしてくれた。
老人が見送る中、僕は急いでタクシーに乗り込んだ。
運転手に病院の名前を告げると、タクシーは乱暴な音を立てて走り出した。
何も言わないでも急ぎだと思ってくれたのか、道中は猛スピードで飛ばしてくれた。
病院に着くと、もう夜間出入り回しか開いていなかった。
夜間出入り口から中に入ると、病院内はすでに消灯されて薄暗かった。一部にしか明かりはついてなく、その明かりを目指して僕は走っていった。
夜間出入り口から中に入ると、病院内はすでに消灯されて薄暗かった。一部にしか明かりはついてなく、その明かりを目指して僕は走っていった。
そこはナースステーションだった。
「あの、後藤愛子の父です。あ、いや柏木愛子ですかね」
貫禄のある女性看護士がこちらを怪話そうに見てきたが、僕の青い顔を見たら、察したらしく丁寧に受け答えしてくれた。
「いえ、後藤愛子さん、で大文夫ですよ。今日手術で、さきほど終わったばかりです。手術室の前で奥様がお待ちになられています」
看護師に教えてもらった場所まで、長く暗い病院の廊下をただひたすら急ぎ足で向かった。
「あの、後藤愛子の父です。あ、いや柏木愛子ですかね」
貫禄のある女性看護士がこちらを怪話そうに見てきたが、僕の青い顔を見たら、察したらしく丁寧に受け答えしてくれた。
「いえ、後藤愛子さん、で大文夫ですよ。今日手術で、さきほど終わったばかりです。手術室の前で奥様がお待ちになられています」
看護師に教えてもらった場所まで、長く暗い病院の廊下をただひたすら急ぎ足で向かった。
手術室の前に着くと、長椅子にぽつねんと座っている見覚えのある人影があった。
妻だった。
妻だった。