2018.6.23
およそ400ページに渡りお金のしくみを解説するという正直ちょっと難しそうな本でしたが、注目した理由はこれまで本質を理解していなかったインフレ・デフレについて学べそうだったこと。さらに海外の経済人から見た「日本のバブル崩壊」、そして「アベノミクス」の評価にかなりのページが割かれていた点。第三者の中立的立場からの指摘を読んでみたかったからです。
「アベノミクス3本の矢」は正しい方向に放たれているのか?日本がインフレになりにくい特殊な事情など、日本経済を学べるのはもちろん、そもそもお金とは何なのか?さらに、アメリカで起きたリーマンショックやビットコインの登場が世界経済に与える影響まで、幅広い知識を得ることが出来そうです。
お金の役割は3つ!これが揃えば○○もお金に!
世界の国々が独自に発行している「お金」。この「紙切れ」を価値ある物と交換するためには、3つの役割を果たす必要があります。1つは価値の物差しとなる「会計単位」としての役割。2つ目は「価値貯蔵手段」としての役割。支払いを受け入れたら、その購買力を後で用いることができなければなりません。そして最後が「交換手段」として使えること。
逆を言えばこれらの条件を満たし、かつ利用者が信用している物ならば紙幣や硬貨の代わりになることもできます。例えば、アメリカの刑務所では囚人たちは現金の所有が認められていませんが、なんと売店の「サバ缶」をお金として使用しているのだとか!サバ缶はおよそ1ドルで売られているためドル計算がしやすく、保存がきいて持ち運びがしやすい。上記の3つの役割を果たしているからこそ囚人が安心して取引きに使えるわけです。
その他、アフリカではプリペイド式携帯電話の「残りの通話時間データ」をお金代わりにすることもあるのだそうです。お金そのものに価値が内在する訳ではないのに取引きが成り立っているのは本当に面白いですね。
さて、お金の本質に触れたところで、インフレについての興味深いお話です。
お金のイリュージョン?インフレが引き起こす「貨幣の錯覚」
「インフレは、生産に比べてお金の量が目に見えて急激に増加した時に生じるもので、生産単位当たりのお金の増加が急激であるほど、インフレ率は大きい。」これは1976年にノーベル経済学賞を獲得したフリードマン氏の言葉。物価が上昇して同じ貨幣で買えるものが少なくなる=貨幣の価値が下がるというのがその仕組みです。
そして著者は、インフレを考慮した調整をしていない「名目」値と、考慮した「実質」値なるものがあることをハリウッド映画の興行収入ランキングを使って解説します。ハリウッドが発表している興行収入の上位5位を占める映画は
・スター・ウォーズ/フォースの覚醒(2015)
・アバター(2009)
・タイタニック(1997)
・ジュラシック・ワールド(2015)
・アベンジャーズ(2012)
・スター・ウォーズ/フォースの覚醒(2015)
・アバター(2009)
・タイタニック(1997)
・ジュラシック・ワールド(2015)
・アベンジャーズ(2012)
しかし、このランキングには「からくり」があり、それは映画チケットの価格上昇を考慮していない「名目」値だという点。例えば1939年に『風と共に去りぬ』が大ヒットした時、映画チケットは50セント。当時1億ドルの興行収入をあげるのは、2015年に1億ドルの興行収入をあげるよりもはるかに難しいことでしたが、この点が考慮されていないのです。