お金と幸せの答えを見つける旅
昼は図書館員、夜はパン工場の工員として寝る間を惜しんで働く一男。一男はバツ1で、愛しいひとり娘の養育費、離婚の原因となった実弟の借金の肩代わり、自分の生活費を稼ぐことに追われる日々な中、宝くじで3億円を当ててしまった。
人生に必要なもの。それは勇気と想像力と、ほんの少しのお金さ。チャーリ・チャップリン
一男はこの言葉を教えてくれた「お金と幸せの答え」を求めて大富豪となった親友・九十九のもとを15年ぶりに訪れる。だがその直後、3億円持って九十九が失踪。再び家族と暮らしたい。それには何としてもお金を取り戻したい。九十九の居場所をかつての仕事仲間に求め、お金とは何か?「億男」になった一男にとっての幸せとは何か?を見つける旅が始まります。「お金と幸せとは」を問いかけている本でした。
お金と幸せの定義
私はお金持ちではないのでお金持ちの幸せというものがわかりません。こればっかりはいくら想像しても無理。持ってみないと分からないと思っています。ただお金はないけれど今、幸せです。それに理屈ではなく、住む家があって、健康で、食べるのにも困っていない。それだけで十分幸せだと思っています。しかし、たまに「今ここに、お金があったらなぁ」と思う事があります。それは、ここ一番、好きなことに躊躇せずお金をつぎ込みたい時です。
お金を貯めるにはどうすればいいか
小説の一文に、簡単にお金持ちになる方法を九十九の仲間、百瀬が一男に言い放ちます。
「ほんまに簡単や。金を使わんと、貯めればええねん」と。
まさに正論。同じことばをちょうど先月、友人から聞きました。お金を貯めるのが上手で、使う時には綺麗で、豪快。
「貯金のコツを教えて?」と聞いたら「女の人は、ネイルやマツエクするやろ」「あれは無駄」「人を見る時どこを見る?」「全身をぱっと見るやろ?」「部分的に見ないやん」「ということは印象が良ければそれでいいねん」「プチ整形も無駄」「部分的にハリがあったら他の皺が目立つだけ」とアラフィフ世代の美容に使うお金を一刀両断。
彼女の整えられたショートヘアは美容室ではなく、1回1000円もしない散髪屋さんで。何年も通っているが一度も女性客と遭遇したことがないのが自慢らしいです。洋服も、アウトレットを更にバーゲンにしたものから選ぶのだそうです。思わず「ええっ!ほんま?」と疑いたくなる驚きの安さで買ったブランドのシャツは、綺麗な花柄模様で良く似合っていました。
信用はお金以上の価値がある
お金と同じ位に大事な物に「信用」があります。特に仕事をしていると信用ほど大切なものはないと思います。例え失敗をしても信用があれば、チャンスはもらえるだろうし、破産したとしても、信用さえあれば誰かが手を差し伸べて道は開けると思っています。「信用」は「お金」に匹敵する価値のあるものです。いやそれ以上かもしれません。
得るべき数十億のお金を失うことを恐れ、それ以上に信用している九十九に裏切られてしまったら。その恐怖に負けて、仲間の千住は裏切り信用を失います。そして会社は解散。
先日カフェでのことです。私の向かいの席で何やらノートを広げペンを片手に熱心に説明をしているご高齢のご婦人がいました。相手は同年代の女性。言葉使いから親しい間柄かと見えました。狭い店内では話が筒抜け。どうやら何人紹介したら、いくらお金が入るだとか。入会金は高額だが、最初に○○万円の商品がもらえるからその分が丸っきり得だとか。年金だけでは生活はできないから他に収入が必要だと。誰それもやっていると幾人かの名前まで上げていました。入会しなきゃ損のように「こんないいものないよ」とギロリと上目使いで相手の女性の顔を見る。
義理で話を聞いているのか女性は椅子に斜めに腰を掛け勧誘している女性に正面を見せてはいません。それは「お金」に振り回されて「信用」を無くしていく瞬間を見ているようでした。勧誘しているご婦人は綺麗に化粧をし、赤い口紅がとても華やかでしたが、どこか毒々しさを感じました。話をさえぎるようにスマホの着信音がなり「大丈夫よ。安心して」と答えていましたが、電話の主の不安さが私の席にまで届いてきそうで、その場から立ち去りました。
「綺麗なお金」「汚いお金」などよく耳にしますが、お金は自体はどれも同じで、単純に「道具」だと思うのです。何億持っていようが使わなければただの紙と同じ。その道具を使う人の心がいかに綺麗か。それによって生きたお金が使えるのではないでしょうか。人生に必要なもの。それは勇気と想像力と、ほんの少しのお金さ。