2020年1月21日 更新

より上質の暮らしを・・・アーティストたちの夢をたどる「モダンデザインが結ぶ暮らしの夢」展

同じ機能の商品が並ぶ中で、「デザインが気に入った」――こう言って何か選ぶ事、よくあると思います。衣類はもちろん、家具、電化製品から文房具に至るまで、身の回りのものたちの選択に “デザイン”は大きな要素です。

2020.1.20
そんな私たちの日常につながる、“日本のモダンデザイン”に注目した展覧会があります。
『モダンデザインが結ぶ暮らしの夢』展。

まず・・・“モダンデザイン”って?

辞典には「産業革命以降,機械と技術と資本が台頭してきたヨーロッパの近代におけるデザイン」とあります。それまでの伝統的な“装飾”に対し、工業の発達で可能になった大量生産に対応する、合理的で機能美を重視したデザイン。幅広い分野に関連しますが、身近なところでは、現在私たちの暮らしを囲む工業製品の “プロダクトデザイン”、その源流といえるでしょうか。
では、

「暮らし」の「夢」ってなんだろう?

この展覧会で紹介されているのは、
ドイツ人建築家、ブルーノ・タウト(1880–1938)。
ボヘミア(チェコ)出身の建築家アントニン・レーモンド(1888–1976)とフランス人のインテリア・デザイナー、ノエミ・レーモンド(1889–1980)夫妻
デザイナー、剣持勇(1912–1971)
家具デザイナー、ジョージ・ナカシマ(1905–1990),
彫刻家、イサム・ノグチ(1904–1988)
という6人のアーティスト。そして群馬・高崎の実業家、井上房一郎(1898–1993)
それぞれ単独で展覧会が開かれるような大物ばかり。
確かにモダンデザイン関連の人たちですが、一見ばらばらな感じも・・・
実は彼ら、同じ時代に同じ「夢」を抱いて活動、交流していたのです。
その夢とは?
優れたデザインと機能は、生活を豊かにする――海外発祥のモダンデザインを通じて、この日本で、日本人の暮らしや風土になじんだ、新しい上質な暮らしを実現する事。
今でこそ当たり前の、各企業でデザインされ量産された暮らしの道具。
でも日本では昭和の初め頃まで、道具は手作り・手工業の世界でした。そこに世界の潮流として押し寄せてきた工業化、近代化。暮らしの道具は量産が可能になり、日本人の生活が大きく変わり始めます。
手工業品と量産品、日本の伝統と西洋の文化・技術・・・様々な「これまで」と世界の新しい潮流を、アーティストとしてどんな風につなげて、ここ日本での「これから」を創っていくのか?
タウトやレーモンド夫妻が来日したのは、日本がそんな大きな変化に直面した折でした。彼らは日本建築や工芸に近代性を見出し、「日本の伝統や地域の特性を尊重しながら、新しい時代に適合したモダンデザイン」を指導、発信しはじめます。
工業生産における「デザイナー」という役割を日本に伝えたタウト。レーモンドは、日本の風土を生かしたモダニズム建築を数多く形にしました。彼らの活動を支援したのが、井上房一郎です。国の職員としてタウトの教えを受け、その後ジャパニーズ・モダンを牽引するデザイナーとなった剣持勇(あのヤクルトの容器は彼のデザインですよ)。レーモンド事務所に勤め、戦後アメリカと四国・高松を行き来して、味わいある木製家具を作り続けたジョージ・ナカシマ。拠点のアメリカから戦後再来日したイサム・ノグチは、剣持の協力を受けたり、レーモンドと協業したり、日本で活発に活動します。日本ならではの素材、和紙と竹をつかった照明「あかりシリーズ」は、みなさん一度は見たことがあるのでは?
アントニン・レーモンド「新スタジオ」1963年、撮影:斎藤さだむ
Antonin Raymond, New Studio in Karuizawa, completion 1963, Photo: Sadamu Saito
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