2019.2.8
父親の絶対支配からの逃亡と瓦解
新潟で生まれ地元の進学校から津田塾大学へ進学した南場智子は、在学中、米国のブリンマー大学に奨学金で留学し、大学卒業後はマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社、1990年ハーバード大学でMBAを取得後復帰したマッキンゼーで役員に就任するも、その後独立し、1999年に株式会社ディー・エヌ・エーを設立しました。
そんな華やかな経歴の影には、常に「絶対権力を持つ父親の支配」がつきまといます。「女に教育は必要ない」という男尊女卑的な考えを持った父親に恐怖すら覚え、逃げるように東京へ、そしてアメリカへと渡った彼女でしたが、そんな父親と決して縁を切ることはなく、離れた父親と手紙の交換で瓦解します。地道に彼女の生き様を認めさせたことが、彼女の人生において第一の勝利と言えるでしょう。
ヒト資源の重要性に着目
彼女が設立した会社DeNAでは、禁止事項の多かった父親に抗うかのように、「これをやったらダメ」という制限を全く設けず、社員に全幅の信頼を寄せ、年齢・職歴に関係なく実力に応じて仕事を任せています。社員自身がプロデューサーであり、「ヒト・モノ・カネ・情報」の経営リソースの重要な駒として、行動力を持った人材を重視しているのです。こうした社員の才能を自由に発揮できる職場環境が、モバゲーなどの大ヒット商品を生み出し、次々と斬新な新規事業を立ち上げ続ける秘密でもあるのでしょう。
彼女自身、トップレベルの経営にはロジカルな議論や意思決定、合理的な判断は不可欠と認めつつも、世の中に「喜びと驚き」といったエモーショナルな部分も必要であると感じ、直感的な発案、飛躍的なアイデアを生み出す社員が不可欠と言います。つまり、「頭がいい」だけではなく、多様な強みを持つ人が実力を発揮でき、個性を最大限生かせる職場環境を目指しているのです。
リーダーとして見据える未来
創業当時は4年間も赤字が続き、暗いトンネルで模索していたDeNA社でしたが、土俵をモバイルにシフトしすると、「モバオク」「モバゲー」などが次々にヒットし黒字に転向させました。一時は夫の看病のため一線を退くも、2015年に会長職に復活し、横浜DeNAベイスターズのオーナーにも就任します。
2013年に発売された自叙伝「不格好経営」では、何度も絶体絶命になりながらも良き仲間に恵まれ、常に周りに助けてもらって危機を乗り越えるなど、経営者としての魅力が伝わってきます。リーダーとして重要な「意志決定」については、「不完全材料でも早く決定し、早く動いた方が勝つ、そして一度決めたら後悔しない。」と言い放ちます。社員の自由意志を尊重し社員への感謝と愛情を忘れず、「迷わない」「先送りしない」「後悔しない」の3原則を軸に、チームを引っ張る南場氏の周りには自然と魅力的な企業戦士が集うのです。
彼女の次なる目標は「脱ソーシャルゲーム依存への挑戦」です。今年創業20周年を迎えるDeNAは「De20」という記念プロジェクトを立ち上げ、「お客様に喜びを届ける」をテーマに、世界一の新規サービスが誕生することでしょう。