2019.2.15
自他ともに認める「メモ魔」で、双方向メディア「SHOWROOM」を立ち上げた今注目の企業家、前田裕二氏の場合は違いました。彼はメモを記録として残すというより「アイデアを生み出すこと」に利用し、さらに「自信を知ること」や「夢を実現する力」まであると言うのです。
エジソンやアインシュタインなどはメモを活用していたことが知られますが、便利なツールであふれるこの時代になぜ、前田氏はメモの力をそこまで信じているのか?その考えをまとめた新著『メモの魔力』を読み、メモが持つ力の秘密に迫りたいと思います。
「メモの5大パワー!」メモはスキルアップに活用できる「魔法の杖」
「メモこそが人生を大きく変革した『魔法の杖』であると直感している」
メモが持つ力に絶対的な信頼を寄せる前田氏ですが、その理由として、メモを活用することで様々なスキルアップにつながることを挙げています。その力とは大きく5種類あり…
①知的生産性が増す。
②情報獲得の伝導率が増す。
③傾聴能力が増す。
④構造化能力が増す。
⑤言語化能力が増す。
②情報獲得の伝導率が増す。
③傾聴能力が増す。
④構造化能力が増す。
⑤言語化能力が増す。
①はメモを「記録」としてではなく、新しいアイデアや付加価値を生むために取ることで、より生産的になることができるというもの。本書の最重要項目でもあります。②は自分にとって有用な情報を逃さずキャッチすることで頭の「アンテナの本数」が増え、いつでもアイデアが出しやすい状況が生み出せるという事。
③は、メモを取ろうとする積極的な姿勢が相手に伝わることで、相手もより良い情報を提供してくれるようになる。いわゆる「聞く力」が身につくという事です。④と⑤は、自分にとって分かりやすいメモの取り方をしていくうちに、頭の中が整理されてインプットはもちろん、誰かに情報やアイデアを伝えるアウトプット能力も向上するという意味です。メモに驚きの能力が隠されていたことが分かりましたが、さらにその説得力を増すエピソードも紹介されていました。
「SHOWROOM」誕生のきっかけもメモだった!
幼い頃に両親を亡くした前田氏は、小学生の頃から食べていくために駅前で音楽の弾き語りをしてはお客さんを増やすためのアイデアや「気付き」をメモしていたのだとか。そして、メモをきっかけに重要なことに気が付きます。
①カバー曲を歌うと、オリジナル曲のときよりもお客さんに立ち止まってもらえ、リクエストに応えるとさらに仲良くなれる。その後にオリジナル曲を歌うと、もっとお金がもらえる。
②仲良くなるには双方向性が大切で、人は「うまい歌」ではなく「絆」にお金を払う。
②仲良くなるには双方向性が大切で、人は「うまい歌」ではなく「絆」にお金を払う。
それから数年の時を経て、①と②の「気付き」から、双方向性があり、絆が生まれるネットの仕組み「SHOWROOM」が誕生しました。これはメモの力を信じるには十分すぎるエピソードなのではないでしょうか?
メモの効果を最大にする「抽象化」!
路上ライブでお客さんの行動を記録したメモを活用して斬新なアイデアを生んだ前田氏ですが、このとき最も重要なのは①「カバー曲を歌うなどして、仲良くなることでよりお金をもらえる」というメモから②「人は絆にお金を払う」という考え方に至ったこと。
この作業は、いわば具体的な事実(ファクト)から本質を導き出し「要するにこういう事」と簡単に説明できる言葉に書き換える作業。具体的な事象がもっと広い場面に当てはまるように置き換える(=汎用性を高める)ことから「抽象的」と呼んでいます。
「あの作品はなぜヒットしたのか?」「この店はなぜ居心地がいいと感じるのか?」そんな身近な感動や興味を積極的にメモして、同時にその本質を考える。その思考の蓄積が自分の中である種の法則となり、将来ヒットを狙う作品を考えたり、居心地のいい場所作りをしたりする際に絶大な効果を発揮するのです。
メモの本質は「姿勢」!
本書では前田氏が実際にメモをしたノートの写真も掲載され、より実践的なメモの取り方やコツを紹介したブロックもあります。しかし、そんなノウハウよりも前田氏が重要視するのがメモを取るという「姿勢」。あらゆる情報をアイデアに変えるために、その種となるメモを取りまくる!そんな貪欲な姿勢こそが最も重要で、どんな分野でも通じるアイデアマンになる最短の道だと前田氏は考えています。
あのエジソンは3,500冊もの膨大なアイデアノートを残しネット上にも公開されていますが「ノートは見開きで使う」など前田氏と共通する使い方が見られ驚きました。ただ議事録的に取るメモと違い、アイデアを生むためのメモ。これを自分にとっての「魔法の杖」にするためにもメモを取ることを習慣化したいと思います。