2017年12月7日 更新

「見方ひとつで、借金は色々な形に変わる」第8章[第16話]

元銀行員の男が起業をして、一時は成功の夢をつかみかけたが失敗する。男はなぜ自分が失敗したのか、その理由を、ジョーカーと名乗る怪しげな老人から教わっていく。"ファイナンシャルアカデミー代表"泉正人が贈る、お金と人間の再生の物語。

2017.10.13
「君は経営者だったんなら、借金については、どう考えている?」
「はい、毎月支払わなければいけない負債と考えています。バランスシート上では右側の部分。帳簿上では、毎月の一定の支出額といった所です」
「まあ、そんな所だろう。
 それから、借金といって思い浮かべるのは金利だろう。一番最初に君に話したのも金利についてだった。
 私が、お金について学び始めたとき、つまり社会人になってからのことだ。この金利というものが最初にぶつかった疑問だった。そもそも、なぜ金利という考え方があるのか? このことについて、私の尊敬している経営者はこう言っていたよ。“借金は決して悪いことではない。借金額と金利の取り扱いを間違わなければ、大いに経営に役立つ代物だ。借金額はバランスを見て決めればいいし、金利はそのお金を調達するためのコストだと考えるのが一番筋が通る“
 その後、金利がコストという考え方は、会計学を学ぶ過程でも、至極真っ当な考え方だとわかった。つまり

借金は、借りたお金を材料、金利は調達コストと考える。

 これは、会計か経営をした人間に共通した考え方だよ」
「ちょっと高度な考え方ですね。そんな風にお金を扱ったことがありません。僕は銀行で 人にお金を貸す商売をしていたにも関わらず、実際、自分で借金したときは、落ち着かなかったです。やはり借金は負債。そして、金利は謝礼のようなものだと思っていました」
「たとえば、君が会社を経営していて一〇〇〇万円を借りたときに年間三〇万円の金利を要求されたとしよう。この三〇万円は、増えもしなければ、減りもしない。一年につき三〇万円を払い続ければ、一〇〇〇万円は返さなくていい。一〇〇〇万円を借りていることで生じる年間コストは、三〇万円だが、これを高いとみるか、安いとみるかはそれぞれの考え方だ。倒産を免れるために年間三〇万円を払って、手元資金をなくさないために、お金を借りておくというのは、一般的な会社ならどこもやっていることだ」
「でも、その一〇〇〇万円はいつかは返さなくてはいけないお金なんでしょう? それなら金利分の支払いは無駄になります。早く返さないと無駄金は継続的に増え続けますよ」
「しかし、この一〇〇〇万円が資金がショートしないように借りているお金なら、これは保険のようなものだ。決して無駄ではないだろう。この時、金利は事業が倒産しないための掛け捨ての保険代という考え方もできるようになる。要は見方ひとつで、借金は色々な形に変わる」
「でも、一〇〇〇万円を用意するコストが年間三〇万円なら安いかもしれませんが、僕に対しての金利がここまで安いことはないですよね。さっき十円をあなたから借りたときに決められた金利二〇%だと一〇〇〇万円を借りることで生じるコストが、年間二〇〇万円です。これが原因で会社がつぶれることになってもおかしくない額ですよ」
「そうなんだよ。信用がお金を生むというのは、借金でも発揮されているようだ。たとえば、A社だと三〇万円で済むコストが、B社だと二〇〇万円かかってしまうことがある。差額の一七〇万円はA社にとっては、信用が生んでくれたお金だ。だから金利は取り扱いが難しいんだ。君のように一〇〇〇万円を用意するのに二〇〇万もコストがかかってしまっては、とても立ち行かないだろう」
「三〇万円と二〇〇万円では大きな差が出てしまいますね」
「しかし、物事には両面があると、さっき話したね。つまり、

支払う人がいるということはもらう人がいる ということなんだ。

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泉正人 | ファイナンシャルアカデミー 泉正人 | ファイナンシャルアカデミー
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