2019.7.2
資格や転職と無関係にプログラミングを学ぶ
「コンピュータのプログラミングを学ぶ」といえば、「情報処理技術者」のような資格を取ってプログラマー、システムエンジニアなどIT関係の仕事につくというイメージがあります。そんな職種は慢性的な人手不足なので有資格者は即戦力として優遇されます。転職して収入アップを狙おうと勉強している人も少なくないでしょう。
ところが、IT関連企業に勤務していなくても、情報システム関係の部署ではなくても、営業や企画のような仕事でも、文系の出身でも、ビジネスパーソンがまるで「一般教養」を身につけるような形でプログラミングを勉強する動きが、静かにひろがっています。
IT教育に特化したオンラインスクール「テックアカデミー」を運営するキラメックスによると、2012年にプログラミング教育をスタートさせた頃は勉強の最終目的はエンジニアになることだという受講生が多かったといいます。しかし最近は、エンジニアなど専門職を目指すわけではなく、「一般教養としてプログラミングを学びたい」という人が増えているそうです。
若い世代だけでなく、初心者向けコースでは経営者、部課長などマネージャークラスの受講生も増えているそうです。ITの世界は「ビッグデータ」「AI(人工知能)」「IoT(モノのインターネット)」「5G(第5世代移動体通信)」など、新技術がどんどん現れています。「テクノロジーを知らずして、企業の経営はできない」と思って、プログラミングのようなITの基礎から学びたいというニーズが生まれているようです。
その人たちが若手だった頃は「技術屋さんに任せればいい」という風潮がありましたが、企業内で地位が上がると「わからないことがわからないままではいけない」となってきます。ましてや、今は最新テクノロジーの活用次第で企業の業績が左右され、将来が決まるとまで言われる時代です。
ということは、企業のトップクラスに出世したいと考えているビジネスパーソンが、若くて頭が柔軟なうちに一般教養としてプログラミングを学び、ITの基礎力を身につけることは、将来プラスになるはずです。
プログラミングで身につくのはこんなスキル
「テクノロジーを理解し、それをビジネスに役立てる」だけが、プログラミングを学ぶメリットではありません。ビジネスパーソンに不可欠とも言える「論理的な思考力」「プロジェクト管理の能力」「問題解決能力」を養うのに、その知識や実践は役に立ちます。
部下を持った時、「これとあれをやれ」と指示し、理由を問われたらいらついて「とにかくやれ」と言うだけでは部下は育ちません。「こんな理由で、こんな必要があるから、これとあれをやれ。やればこんな結果が生まれる」と筋道の立った説明をすれば部下は納得し、「やらされ感」も消えてモチベーションもアップ。部下から良い提案が出ることもあります。そうやって部下は成長し、「人材を育てたね」とあなたに良い評価がつきます。
プログラミングは、筋道の立った合理的な説明ができる「論理的な思考力(ロジカルシンキング)」を鍛えます。なぜなら、プログラムで仕事をやらせる相手は人間ではなくコンピュータだからです。あいまいな命令を出してもコンピュータは動きません。人間の部下なら「言いたいのはたぶんこうだろう」と推測して動くこともできるでしょうが、コンピュータは「こんな時は、こうする」と条件を一つひとつきちんと設定しておかないと、立ち往生します。「融通をきかせろ」と怒鳴ってもムダです。あいまいな命令、筋道が通らない矛盾した命令を出す自分が悪いのです。