2024年1月19日 更新

新型コロナで株価が大きく下がっても、日本の年金が破たんしない理由

今年、新型コロナ肺炎大流行の影響で日経平均株価は最大32.2%下落しました。年金資産は株式でも運用しますが「年金制度が破たんするのではないか?」という心配は無用です。なぜなら年金積立金は約120兆円で、運用益の蓄積も約75兆円と大きいからです。

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2020.4.14

年金積立金は金融商品に投資・運用される

2月から3月にかけて、新型コロナウィルス肺炎大流行の影響を受け、国内、海外の株式は大きく値を下げました。1月17日に24115.95円まで上昇した日経平均株価は、3月19日には16358.19円まで下落し、その間の下落率は32.2%に達しました。
株式投資をしない人でも株価が下がると気にしだすのが「日本の年金は大丈夫なのか?」です。将来の自分への年金支払いを支える年金資産が株式でも運用されているからです。
日本の年金制度は2階建て構造で、1階の部分が「基礎年金(国民年金)」で、2階の部分が「厚生年金」です。
国民年金も厚生年金も、集めた年金保険料から年金支給分を差し引いた年金積立金がプールされ、さまざまな金融商品に投資・運用されています。年金積立金は運用がうまくいけば増え、うまくいかなければ減ります。その年金積立金が株価の下落で目減りしたのではないかといま、不安を呼んでいます。

「年金の破たん」とはどんな状態のこと?

「年金制度は破たんする」と怖いことを言う人がいますが、そもそも「年金の破たん」とはどんな状態を指すのでしょうか?
年金財政は「年金支給額(歳出)>保険料支払額+国庫負担分(歳入)」になると単年度収支が赤字になりますが、それだけでは年金は破たんしません。年金積立金を取り崩して単年度収支の赤字の埋め合わせができる限り、年金制度は健在です。年金積立金で赤字を埋め合わせできない「単年度収支の赤字>年金積立金」という状態になってはじめて、年金制度は破たんすることになります。
その単年度収支はどんな状況でしょうか?
厚生労働省が発表した「平成30年度 厚生年金・国民年金の収支決算の概要」によると、平成30年度(2018年度)の単年度収支はこうなっています。

<厚生年金>
歳入 47兆9827 億円
歳出 47兆3863億円 約5963億円の黒字

<国民年金>
歳入 3兆9330億円
歳出 3兆8130億円 約1199億円の黒字
厚生年金と国民年金を合わせると約7162億円の黒字です。
そして、平成30年度(2018年度)末の年金積立金が、厚生年金と国民年金の合計で119 兆9867 億円あります。
単年度収支は黒字なので、年金積立金を取り崩す必要はありません。

債券と株式の運用比率は50%と50%

そんな「虎の子」の年金積立金の多くはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が預かって投資・運用しています。2001年度にゼロで始まったその累計収益額は2019年12月31日現在75兆2449億円です。良い運用成果と言っていいでしょう。年金積立金とは別の運用益が年金財政を補強しています。
GPIFの運用は国内債券、国内株式、外国債券、外国株式、短期資産の5種類に分けて行われます。GPIFでは2020年4月1日からの5カ年における基本ポートフォリオ(資産構成割合)を「国内債券25%、国内株式25%、外国債券25%、外国株式25%」にすると発表しました。「株式が50%もあるのは危ない」と言う人がいますが、100%ではありません。債券とのバランスをとっています。
株式と債券は、好況時はリスクを取って株式に資金が集まるので株価が上がり、不況時はリスクを避けて債券に資金が集まるので債券価格が上がります。債券は不況に強く、それが株式の損失を埋めます。
2月から3月にかけてニューヨーク証券取引所で株価が急落した時、中央銀行のFRB(連邦準備銀行)は金利を何度も引き下げ、自動的にアメリカ国債の価格は上昇しました。株式のマイナスを債券の価格上昇である程度まで取り返すことが可能でした。
GPIFの過去の運用実績を見ると、2007年度はマイナス4.59%、2008年度はマイナス7.57%で、累計収益額を2年連続で減らしています。これが「リーマンショック」の爪痕ですが、2008年末でも累計収益額はマイナスになりませんでした。
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