2019.7.30
日本人はAIによる働き方改善にやや懐疑的
2019年4月から、働き方改革関連法の適用が順次始まっています。残業時間の「罰則付き上限規制」(原則月45時間、年360時間以内)、5日間の「有給休暇取得」の取得義務化、心身を休める「勤務間インターバル制度」の努力義務(10~11時間)、残業の「割増賃金率50%」の中小企業猶予措置の廃止、「産業医」の機能の強化、「同一労働・同一賃金の原則」の法制化、年収1,075万円以上の「高度プロフェッショナル制度」の創設、「2カ月、3カ月単位のフレックスタイム制導入」などが、その主な内容です。
そんな「ワークライフバランス」を目指す働き方改革で、情報通信技術(ICT)はどんな役割を果たせるのでしょうか?
総務省が日米のビジネスパーソンを対象に調査し2016年3月に発表した「ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究」によると、AI(人工知能)の導入で「業務効率・生産性が改善する」と答えた割合(「大きく改善する」「ある程度改善する」「少し改善する」の合計)はアメリカが69.0%、日本が60.0%です。「仕事の意欲が湧く」と答えた割合(「大きく湧く」「ある程度湧く」「少し湧く」の合計)はアメリカが43.4%、日本が29.1%でした。日本人はアメリカ人に比べ、AIの導入で自分の働き方が改善するかどうかにはやや懐疑的という結果でした。
それでも日本のビジネスパーソンにAIの導入・普及が雇用にもたらす影響に選択肢から選ばせると、「少子高齢化の進展に伴う労働力供給の減少を補完できる」「業務効率・生産性が高まり、労働時間の短縮につながる」が上位を占め、「雇用のミスマッチを招く」「人がAIに依存して創意工夫をしなくなる」「AIに雇用を奪われ失業率が上昇する」など否定的な意見は少数にとどまりました。
自由回答欄も「AIは万能ではなく、それで解決できることは限定的」「AIの利活用に適した業務とそうでない業務がある」といったクールな意見はあっても、「仕事がなくなるからAI導入に反対」といった意見はありませんでした。一部のメディアは「AIでこんな職種は捨てられる」などとあおりますが、当のビジネスパーソンは冷静なようです。
AIで働く人の心理状態を判断するツール
働き方改革に対応して、AIがそれを支援するツールもいろいろ登場しています。
オリックスグループのIT企業ユビテック(本社・東京)は2018年6月、リストバンド型端末を活用して職場環境を可視化し、働き方改革を支援するツール「Next Work」を発売しました。工場、オフィス、店舗などあらゆる業種、職場に対応しています。
働く人がリストバンド型端末を手首に装着すると、脈拍数やストレスなど自分の健康状態のデータをWeb上で確認できます。管理者は全員の健康状態をリアルタイムで把握でき、変調の兆しに気づきやすくなります。
位置情報や作業動線も可視化できるので、業務効率化のための検討データも得られます。経営者は部門ごとの労働時間などの労働状況のデータ、健康状態のデータを職場環境の改善やコンプライアンスの強化に活用できます。