若者の力でお祭りを支援する、オマツリジャパンとは?
STAGE編集部:まず、オマツリジャパンについて紹介していただけますか。
お祭りでその地域を盛り上げる仕事をしている日本で初めての会社です。いわばお祭りのプロデューサー役で、企画、運営から広報、協賛金集めまで何でもやります。参加者にお祭りをもっと楽しんでもらうと同時に、企業に事業の機会を増やし、地域の人たちの運営を支援するのが目的です。
設立して3年で、メンバーは今のところ6人、他に業務委託の方が5人と、ボランティアのサポーターが300人います。地方創生の観点から応援していただき 、株主にはキリンビールをはじめとする5社が入ってくれました。
STAGE編集部:具体的な仕事の内容を教えて下さい。
お祭りのインフラになりたいと考えています。中心はIT事業と企業向け、自治体向け事業です。IT事業ではオマツリジャパンリーダーズというサイトで、イベント告知だけでなく、資材、機材の手配、警備スタッフ、保険、補助金の手配など、お祭りに関して面倒と思える部分を一気に片付けるワンストップサービスを展開しています。
企業向けでは、協賛金をもらってお祭りでその企業や製品のPRを進めます。ただ、従来通りの提灯に企業名を入れるような手法では、広告効果が薄れてきました。そこで、こちらからSNSでの情報拡散などアイデアメニューを示し、賛同を得ています。自治体向けはいわゆる観光PRです。見物だけでなく、若者や外国人がお祭りに参加できるツアーを企画することもあります。
STAGE編集部:加藤さんは学生時代に美術を専攻していたそうですが、どんな学生生活でしたか。
専攻は美術でも現代アートですから、一般の人には理解しにくい分野でした。幼稚園のころから、画家になりたいと思っていて、美術大学へ進んだのです。3年生のときに東日本大震災が起き、学んできた美術をこんな時期にどう生かしたらいいのか考えたところ、何も生かせないのではないかと思えてきました。急に絵やアートがつまらなくなっていったのです。
そんなとき、祖母の家がある青森県青森市でねぶた祭を見て、感動しました。ちょうど震災の直後でしたから、人手が少ない感じがしましたが、ものすごくポジティブな印象を受けました。幼いころから親に連れられ、見ていたのに、なぜかそう感じたのです。
次の日に新聞を見ると、参加者や運営スタッフが減ってねぶた祭がピンチに陥っていると書かれていました。それなら若者の力やアートの表現力を生かせるのではないかと感じました。これがお祭りとの出会いですね。
Facebookの投稿が予想以上の反響を生み、ビジネスへ動き始める
STAGE編集部:お祭りとの出会いをビジネスに持って行こうと、学生時代から考えていたのでしょうか。
当時はこれがビジネスになると思っていませんでした。普通に働きながらお祭りの手伝いができたらいいぐらいに考えていました。オマツリジャパンも最初、社会人サークルのような感じで立ち上げたのです。そのうちにいっしょに活動する仲間が増えていき、次第に「これってビジネスじゃないか」と思えるようになってきました。
それでたくさんのビジネスプランコンテストに応募したところ、いろいろな賞をいただき、ビジネスに向かって動き始めました。コンテストに応募する際、資金計画や事業計画をまとめ、みんなの前で説明しなければなりません。そうするうちに、意外と簡単に現実化でき、街の人たちを喜ばせられるのではないかと思えてきたのです。趣味がいつの間にかビジネスに変わっていったような感じです。
STAGE編集部:最初にFacebookのページを立ち上げ、仲間を集めていったそうですが、どんな方法を取ったのでしょうか。
フェイスブックは社会人1年生のころ、趣味でそこら辺の祭りを撮影し、写真をアップして感想を付け加えていただけです。そのうちに仲間が増え、ビジネスプランコンテストに応募するようになりましたが、それまではとてもつまらないページでしたね。
集め方はいろいろ試しましたが、有効だったのはとてもゆるい方法でした。2週間に1回ぐらいのペースでお祭りをさかなに飲み会をしたところ、結構な数を集めることができました。盆踊りで歌って踊るツアーみたいなものを企画したこともあります。広がりはまだ関東中心ですが、和歌山県から「何かできることはありますか」と問い合わせてきた人もいます。
お祭り事業の問題を解決し、誰もが気軽に行けるお祭りを目指す
STAGE編集部:お祭りの未来はどうなると思いますか。
調べてみると、日本にはたくさんのお祭りがあり、毎日どこかで開かれているといっていいくらいです。経済効果も日銀の試算だと、ねぶた祭で238億円。日本は人口が減っていますが、お祭りを含めたイベント消費額は増え続けています。全国的に見れば、日本を元気にできるほど大きくなるのです。
でも、ほとんどのお祭りが何か困りごとを抱えています。地方は人口減少と高齢化で運営スタッフなどの人手不足が深刻です。予算不足やマンネリ化に伴うアイデアの枯渇も、主催者側にとって頭の痛い問題です。お祭りで日本を元気にするなら、こうした課題を解決しなければなりません。
STAGE編集部:今後の会社の方向性やビジョンを教えていただけますか。
お祭りのムーブメントを作っていきたいですね。日本人はお祭り好きですから、お祭りに参加する敷居をどんどん押し下げていく方向で事業を進めたいと考えています。
動物園や映画館へ行けば料金がかかりますが、お祭りは無料で行くことができます。それなのに、大人になると行かなくなる人もいます。面白いお祭りを発掘し、みんなが気軽にお祭りに行けるようサポートできる会社にしていきたいですね。
また、主催者側は、最初10の質問答えるだけで、お祭りに必要な資材、スタッフ、保険、補助金等のすべてが分かる、気軽に利用できるサービスにできたらと思っています。
あとは、サイトの英語対応といった、外国人向けの対応も力を入れていきたいですね。
加藤優子さんにとってお金とは
STAGE編集部:メーカー勤めから会社を立ち上げた加藤さんにとって、お金とは何でしょうか。
今までは決まった額のお金をもらい、自由に使っていましたが、会社に出資や投資してくれたお金は私のものではありません。好きなように使うわけにはいかないし、適当なことに使う人がいたらイラっとする謎の責任感が生まれてきました。使うお金の額がけた違いに増えたのにも、最初は驚きましたよ。
今はお金が選択肢を増やしてくれると考えるようになりました。出資が入ったとたんに仲間が多くなり、やれることも増えました。東京都内を自転車で移動していたのが、いまや飛行機で福岡へ行き、海外にも飛び立てます。仕事の幅が広がり、より大きく貢献できるようになったのは、お金のおかげですね。
お金とは選択肢を増やすもの(加藤優子)