仕事を抱え込む前に!2つの工夫でキャパシティを広げる

キャリア
仕事でミスが増えるのは、量、質ともに、キャパシティの限界が近づいているというサインです。気合でやり抜こうとしても、余計なトラブルを引き寄せるだけ。気負わず力まず、「傾聴」と「誰かに任せる技術」を心がけ、周囲の力を活用しましょう。

まずは、キャパオーバーのサインを知っておこう

「over capacity」略してキャパオーバー。許容量(キャパシティ)を超えてしまうことです。身近な例としては、ネームプレートに研修中と記された飲食店の店員さんでしょうか。大量の注文と業務をさばき切れず、思考停止になっている姿は痛々しいものです。
客観性を見失った状態なので、本人がそれを自覚するのは、周囲よりずっと後になります。しかし、あらかじめキャパオーバーに陥るサインを知っておけば、「よりによって何故あんなことを……」という後悔を避けられるはず。
いくつか、キャパオーバーになりやすいサインを挙げてみます。個人差があるので、自分なりのサインを考えてみてもいいでしょう。ちなみに私の危険信号は、「入浴が減ってシャワーが増える」です。
  • 物を落とす、物が見当たらない
  • よく体をぶつける
  • 読解力の低下(文字を追うと目が滑る、テーマを捉えられない)
  • 現時点の保留案件数を把握していない(あとで見る書類、あとでやる作業など)
  • まったく同じミスを繰り返す
  • 大丈夫?と言われる回数が増える(周囲にはテンパっているのが明白だから)

「傾聴」で、相手との最適な距離を見つける

職場では、たとえ相手がどんなに苦手なタイプでも、うまくやっていく必要があります。とはいえ、内心ストレスをためつつ、表面上だけを取り繕うなんて、精神衛生上良いはずがありませんね。
対人関係の悩みは、キャパオーバーを悪化させる大きな要因です。苦手なタイプと最適な距離を測るには、「傾聴」を心がけてみましょう。傾聴とは、アメリカの心理学者カール・ロジャースが提唱したカウンセリング・スキルです。
その目的は、相手の真意や本音、望みや意向、困っていることや不安の種を理解すること。理解した相手なら、いくらでも建設的な提案ができます。おたがいの警戒心が解ければ、ストレスもたまりません。
  • 肯定的な共感
  • 非言語的な表現(身振り、間、声の抑揚など)にも注目する
  • 不明点は率直に質問する
傾聴の実践には、上記のような約束事があります。あまり複雑に考えず、「全身全霊で耳をすます」という姿勢こそが、結果的には一番早道かもしれません。
相手の置かれた状況や心理を把握する傾聴というスキルは、感情的なクレーム処理、トラブルの原因究明にも役立つでしょう。近年は、コーチングにも活用されています。※念のためですが、傾聴は「相手を誘導するテクニック」では決してありません。

「誰かに任せる技術」を成功者に学ぶ

キャパオーバーに陥っている人に限って、手助けを申し出されても辞退するのはどうしてでしょう? 答えは、「自分でやった方が早い」と思い込んでいるからです
仕事を抱え込むクセがつくと、「誰かに状況を説明して分担してもらう行為」が面倒に感じます。状況を把握していないから説明できないという事実に、本人は一向に気が付いていません。
成功者の多くは、「誰かに任せる技術」に長けています。任せる技術は、丸投げする技術とは違います。たとえば松下幸之助の「任せて任さず」という言葉は、適任者に仕事を任せるが、フォローが必要なら飛んで行き、失敗したら自分が責任を持つという意味です。
失敗したら自分の責任だとしても、それでも仲間に任せてみよう! この選択こそが、人間としてのキャパシティを広げるのではないでしょうか? 実業家アンドリュー・カーネギーの言葉を紹介しましょう。
「人間は、優れた仕事をするためには、自分一人でやるよりも、他人の助けを借りるほうが、良いものが出来ると悟ったとき、その人は偉大なる成長を遂げるのである。」
カーネギーの墓標には、こうも刻まれています。「己より優れた者を周りに集めた者、ここに眠る」。

抱え込むのをやめると、周囲がよく見える

他人を理解するために傾聴を心がけ、仲間を信頼するために「誰かに任せる技術」を身につけましょう。ひとりで仕事を抱え込むのをやめたとき、あなたのキャパシティはひと回り広がっているはずです。

参考/小宮昇著『プロカウンセラーが教えるはじめての傾聴術』ナツメ社,2012年