タリフマンとイールドカーブの本質

「額歴」がぐんぐん上がる経済ホットレ
自称タリフマン(関税の男)ことトランプ大統領の言動と米国のイールドカーブが逆イールドになったというニュースが繰り返され米国の景気後退という悲観論が台頭していますが本当でしょうか。記事に流されず冷静にきちんと分析する必要がありそうです。
2019.6.7

逆イールドの本質を理解することが大切

最近、新聞やニュースで米国の金利が逆イールドになっているという言葉を見かけることが多くなりました。そして、この国債の長短金利差で分析するイールドカーブ分析における逆イールドは、景気後退のシグナルとして広く報道されています。この報道の根拠となるのは、イールドカーブ分析が1960年以降の米国の景気後退を何回も的中させてきたという事実です。これを踏まえ今後の米国の景気後退を予測する記事が増えていますが、そのまま鵜呑みにして良いのでしょうか。私は、イールドカーブ分析の有効性を認めつつも、今の背景をある種冷静に分析する必要があると思っています。
そもそも私が違和感を感じるのは、イールドカーブの定義が報道により恣意的にコントロールされているケースが散見されるからです。分析に利用すべきイールドの年限は、10年債金利と2年債金利、もしくは10年債金利と3カ月債金利とされ、信頼性の高い機関はこの年限を利用しているケースがほとんどです。しかしながら、記事によっては都合よい年限を選び逆イールドになっていると騒ぎ立てている場合がありますが、そのような記事には要注意です。
さて、逆イールドとは短期金利よりも長期金利が低くなってる状態をいいます。では、そもそも長期の金利が短期の金利よりも低くなるのでしょうか。長期の金利が下がる主な理由は、景気の先行きに懸念が台頭することで将来の利下げを先に見越して先導的に金利が下がることにあります。このように長期金利が下がっているのは、将来への景気懸念を背景に短期の金利がいずれ下がることを見越した結果なのですが、裏を返せばFRBが政策の転換をし短期の金利が下げる可能性があるともいえます。つまり、景気の下支えをする可能も同時にあるということを示しています。
実際に米国では金利が低下したことで住宅ローンの金利が低下し、不動産市況を下支えするという味方もあります。このように、イールドーカーブの形状だけで安易に判断をせず、今現在の状況でどのように影響が及ぶかを冷静に判断すべきです。

タリフマンの行動には引き続き注意が必要

トランプ大統領は、自らを関税の男(タリフマン)と称しています。実際、中国への関税措置、メキシコにも関税を掛ける協議に入りました。メキシコとの国境を越えて入国する不法移民があとを絶たないため、メキシコから輸入されるすべての物品に5%の関税を上乗せするとし、ついにメキシコにもかと市場関係者を驚かせました。アメリカの経済はメキシコで生産される自動車や食料品への依存度が高く、米中貿易戦争よりも影響が大きいという専門家のコメントが聞かれます。
この出来事は、対岸の火事ではありません。メキシコへの関税には日本に多大な影響を与えるとされています。日本の自動車メーカーは、メキシコにアメリカ向けの生産拠点を構えており、もし、本当に関税が上乗せになれば間違いなく大打撃です。いままでは、メキシコ、アメリカ、カナダにおける3カ国自由貿易協定があり、メキシコで生産されアメリカへ輸出される自動車は基本関税はゼロでした。しかし、日本の自動車産業は部材の調達だけでなく基本戦略の見直しになりそうな気配です。ただでさえ2019年度の日本の製造業は業績見通しが厳しく、このままいけば想定以上に向かい風になる可能性があります。
では、今後もこのようなタリフマンによる関税対象国は広がるのでしょうか。私はその可能性は高いと考えています。その最も大きな理由として、このようなトランプ大統領の強硬姿勢を支持する人が多いことにあります。しかも、共和党支持者にとどまらず米国内に数多くいるようです。
トランプ大統領の支持率は、2019年3月下旬に39%だったのものが同年4月下旬には45%まで上昇し、しかも、共和党支持者の支持率は91%と政権発足以来2番目の高さ、民主党支持者でも発足以来最高の12%と両党からの指示が高まっていることを示しています。さらに、政治アナリストによると今後支持率は50%を突破する可能性が高いし、来年の米大統領選での勝利を目指すトランプ大統領としてはこのまま強硬姿勢を維持したいと考えているとのこと。
このようなことからトランプ大統領の強硬姿勢は継続すると思われます。しかも、この強硬姿勢がツイッターで発信されることから市場関係者は株価の急変に備える必要があり、そのためなかなか本格的な株価回復に結びついていないようです。
しかし、関税をかける国や関税率にはいずれ限界が訪れます。その時こそが、市場に対するネガティブサプライズが排除されたとして投資家の本格始動につながる可能性があるのではないかと考えています。

渋谷 豊

ファイナンシャルアカデミー総研代表 、ファイナンシャルアカデミー取締役

シティバンク、ソシエテ・ジェネラルのプライベートバンク部門で約13年に渡り富裕層向けサービスを経験し、独立系の資産運用会社で約2年間、資産運用業務に携わる。現在は、ファイナンシャルアカデミーで取締役を務める傍ら、富裕層向けサービスと海外勤務の経験などを活かした、グルーバル経済に関する分析・情報の発信や様々なコンサルティング・アドバイスを行っている。慶応義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。
ファイナンシャルアカデミーグループ総研 http://fagri.jp/
ファイナンシャルアカデミー http://www.f-academy.jp/

STAGE(ステージ)