2017年6月22日 更新

飽くなき向上心と繊細な感性で築き上げられた、「TAKAZAWA」の世界観(高澤義明)

料理人・高澤義明が生み出す料理は、ひとつひとつが小さな芸術だ。あるものは雨が上がったあとの濡れた花のような。あるものはバリの小さな美術館で観た絵画のような。「日本の良き風土・人・食材、伝統的な世界を再構築してモダンに供する」というテーマを掲げ、世界のありとあらゆる要素を盛り込んだ最先端の料理を生み出し続ける高澤。その情熱は一体どこからくるのか。そして、何に支えられているのか。世界中の富裕層や美食家をうならせている高澤の原動力に迫る。

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2015.11.9

■料理との運命的な“再会”

それは赤坂の裏通りに隠れ家のようにひっそりとあった。扉を開け、階段を登ると、目の前に表れる幻想的な空間。10席しかない小さなダイニングの中央で、「TAKAZAWA」と刻印された大きなアイランドキッチンが圧倒的な存在感を醸し出している。ここが、新進気鋭の料理人として世界から注目を浴びる高澤のSTAGE(舞台)だ。
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高澤の経歴はユニークだ。料理人の家庭に生まれ、周りがファミコンで遊んでいるような小さい頃からお店の手伝いに明け暮れた。もちろん、アルバイト代などもらえるわけもない。文字通り「手伝い」をしながら親の背中を見て「こんなに大変な商売は嫌だな」と思っていたという。

しかし、高校卒業後の進路を考えたときに、周りと同じように自分探しのために大学へ行くのは避けたかった。そこで、ふらりと行ってみた料理学校の体験入学で魅力的な先生と出会い、入学を決める。これが、高澤と料理との運命的な“再会”となった。

■葛藤が「TAKAZAWA」の世界観を生んだ

卒業後は、手当たり次第に様々なジャンルの料理と職場を経験した。老舗のフレンチ、チェーン展開しているダイニング、コアなワインバー。そして、転機となったのが、ウェディングのバンケットだ。

ウェディングというのは、お客様にとって一生に1回だ。ゆえに、すべての想いをその1回にぶつけてくる。しかし、ゲストは時に100人を超える。いくら料理人としての全力を尽くしたとしても、100人のゲストに完璧に応えることは現実的に不可能だ。この矛盾に対する出口の見えない葛藤が、独立への決心とつながった。

高澤は言う。「料理人として経験を積む中で、自分の好きなもの、こだわりたいものが、どんどん蓄積されていったんです。やっぱりこうじゃない、やっぱりこっちのほうがいい、って。それを具現化したいと思ったときに、少ない席数で手をつくしておもてなしをするという今の世界観が見えてきたんです」。
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■ラグジュアリーな“非日常”を売る

料理だけでなく、人と人との関わりも大事にしている。10席という少ない席数だからこそ成し得る、お客様同士が濃密に会話し、食事を楽しめる時間。それを演出する、妻でもあるマダムの接客にも絶対的な信頼を寄せる。そして、高澤自身が会話に飛び入り参加することも日常だ。「この距離感が、心地よく楽しんでもらうのに非常にいいんです。ラグジュアリーな“非日常”を売るのが、TAKAZAWAですから」。

その空間の心地よさに、これまで数々の世界の大富豪や美食家がTAKAZAWAの虜になってきた。「お客様が来店した瞬間に、その人の雰囲気とか、オーラとか、身なりとかで、ああ、この人は、こんな感じだなっていうのを経験値で判断できます。そこから接客に入るので、とてもやりやすいですね」。そう、サラリと言ってのけた。

高澤の五感は類まれな鋭さを放つ。奇遇にも、インタビュー中にそれを証明する出来事があった。質問に答えながらも、その一瞬の間をぬって隣のキッチンで仕込みをしているスタッフに「放ったらかしにするな」「もう30秒たっているぞ」と叱咤する。音を聞くだけで誰が何の仕込みをし、どのような状況にあるのかが手に取るようにわかるという。

■「世界」の洗礼が、「日本」と向きあわせてくれた

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高澤の生み出す、最先端でありながらも芸術的な料理は、いまや国際的な料理学会からも注目を浴びるまでになっている。

2007年には世界的権威であるスペインの国際料理学会“Lo mejor de la Gastronomia”から日本代表として招待された。願ってもいないチャンスに、高澤の心は躍った。そして意気揚々と発表に臨んだ高澤を待ち受けていたのは、「世界」の洗礼だった。
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