2018年10月4日 更新

賢い消費者になるためには?- 行動経済学のトリックを知る

「こんなもの買うつもりじゃなかったのに!」このように後悔した経験はありませんか。それは行動経済学の「ナッジ理論」を活かしたマーケティングに惑わされてしまったのかもしれません。どうすれば惑わされないか、それは「ナッジ」のトリックを知ることです。

2018.10.4

消費者は「ナッジ」されている

人間は感情や社会的な常識という心理学的な要素に大きく影響を受けて、合理的でない意思の決定をしてしまっている、という事を実証するのが行動経済学です。
行動経済学は今に始まった学問ではありませんが、最近特に注目されるのは、シカゴ大学のリチャード・セイラー教授が2008年に行動経済学に「ナッジ」(いい方向へさりげなく仕向ける、誘導する)という新しい理論を提唱し、その理論が政策や実社会で活用されて、2017年にノーベル経済学賞を受賞したからではないでしょうか。
本来、セイラ―博士は心理学に基づいた不合理な意思決定のパターンを利用し、個人や社会にとって有益になるように「ナッジ」することを目的としましたが、マーケティングでは「売り手」にとって有益になるように消費者を「ナッジ」するトリックを考え出しました。

どんなトリックによって、「ナッジ」されてしまうのかいくつか例をご紹介します。

「おとり」に惑わされる消費者

マサチューセッツ工科大学(MIT)のダン・アリエリー教授が著書『予想通りに不合理(原題:Predictably Irrational)』の中で挙げているのが「デコイ(おとり)効果」の実証です。
アリエリ―教授は、イギリスの『エコノミスト』誌の一年分の購読料が下記のように案内されていることに気が付きました。

デジタル版のみ $59 
プリント版のみ $125
デジタル版+プリント版 $125
この案内についてMITの学生達にアンケートを行った結果、3つの選択肢のうち、「プリント版+デジタル版」を選ぶ人が圧倒的に多かったそうです。しかし下記2つの選択肢では、「デジタル版のみ」を選んだ人の方が多かったそうです。

デジタル版のみ $59
デジタル版+プリント版  $125
3つの選択肢では、同額の「プリント版のみ」を(おとりとして)選択肢にいれることで「デジタル版+プリント版」の 利得が多いという事を強調し、ナッジしているのです。これが、「おとり効果」です。

アリエリ―教授によると、人間は相対的優位性という、価値が簡単に比べられるものを対比して利得を決める癖があるからだ、と「おとり効果」の理由を説明しています。
2つの選択肢の場合、「デジタル版のみ」の値段が妥当なのかわからないため、比較できないが、「プリント版のみ」と「デジタル版+プリント版」が同じ値段であれば、「デジタル版が無料」という点で満足感を得てしまうのです。

しかし、これは合理的な選択でしょうか?デジタル版だけでも十分だった人も、この「おとり」のせいで高いセット価格を選んでしまうのではないでしょうか。
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K. ブリーン K. ブリーン
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