2019年11月23日 更新

ダイアナ妃が愛した日本の芸術家、世界の視線を集める吉田博の作品世界を体験。

SNS上の一般美術愛好家コミュニティ。世界中から投稿される作品の中によく登場する日本の作品・・・まずはHokusai(北斎)やHiroshige(広重)の浮世絵。そして、同じくらいよく出てくるのが、“Hiroshi Yoshida”・・・誰??

「劔山の朝」日本アルプス十二題  大正15(1926)年
「光る海」瀬戸内海集 大正15(1926)年
2019.11.23

Yoshida Hiroshiを知っていますか?

仕事柄、みんながどんなアートに興味が高いのかは気になるところです。日本語のページはもちろん(主に展覧会の感想投稿を拝見。SNS用写真撮影OKの展覧会も増えていますね)、海外のコミュニティもよく覗きにいくのですが、これが実に楽しい!
全世界数万人が参加する大きなコミュニティでは、「私この作品が好き、見て」という各国からの投稿が続々とあげられていて、まさに24時間無休の活気に溢れています。
自分ではそこそこ学習したつもりの、19~20世紀前半の作品に特化したコミュニティでも、知らない芸術家、作品がたくさん・・・ネット=まさに知の集積だ!と感動したり、自分の無知にへこんでみたりと、とても刺激的な時間です。
そんなワールドワイドな画面に、本当によく登場し、熱烈な「いいね」を集める日本人芸術家がいます。
“Yoshida Hiroshi”。
初めて聞いた、という人もいるのでは?実はあのダイアナ妃の執務室にも、その作品が飾られていたという、日本ではどちらかというとマイナー、海外でのほうが有名な芸術家代表、といった人物です。
「亀井戸」 東京拾二題 昭和2(1927)年
「神樂坂通 雨後の夜」 東京拾二題 昭和4(1929)年

世界の視線の先にいる芸術家、吉田博

吉田博(1876~1950年)。
日本の時代で言えば明治時代、まず風景画家として登場し、その後、当時はまだ珍しい幾度かの海外体験を経つつ、新しい木版画の創造をめざした芸術家です。
冒頭の作品は、北アルプス劔岳、瀬戸内海、そして東京の亀井戸と雨上がりの神楽坂の風景。尾根に射す桃色の光のグラデーション、水面の眩しいきらめきと藤の花の季節の空気、人々のざわめき。次に見たときには変化していそうな臨場感と繊細な線と色彩。
思わず見とれてしまう作品群・・・これ木版画なのです。
“仙人に憧れた山男”・・・「自然を尻に敷いている」西洋絵画の姿勢に対し、「けれども、私は自然を崇拝する側に立ちたい」と、各地を歩き画材を求めた吉田博。
彼は同時に本格的な登山家でもありました。
人物歴を見ると・・・
とにかく登る!登って登って、刻々と変化する光や雲を、納得がいくまで自分の眼で捉え、描く。そしてとにかく歩く!日本のみならず、アジア、アメリカ、ヨーロッパ・・・世界各国を訪れ、体感したその時の土地の空気と光を記録する。その驚くべき移動距離と活動量。
吉田博作品は、文字通り彼自身の自分の足と五感で捉えた「人の力を超えた、大きな自然の時間の流れの中のこの一瞬」なのです。
それを形にする、木版画の制作手法がまた精力的でした。版元の下、絵師・彫師・摺師による分業制が基本の浮世絵時代からの制作体制から独立し、彫師・摺師を抱え、自らも彫る、そして摺る! “摺る”とは、ぴったりとずれなく色を重ねていく、という慎重な、技術を要する作業。通常、浮世絵では10~20数度のところ、吉田作品の摺数は平均で30数度、作品によっては90度超え。どれだけの技術と労力を要したことか・・・想像するだけで身が細りそうな数です。

世界の熱気を日本で体験しよう

「妥協を許さない」吉田博の制作姿勢だけが到達できた表現の結晶。
完成した作品の美しさはもちろんですが、そんな制作背景が、単なる異国情緒趣味やノスタルジーに終わらない吉田博作品の引力となっている気がします。
あまたある風景画や浮世絵版画の中で、世界の人々の熱い視線を集める吉田博。
今年から、日本全国を巡る展覧会が行われます。日本の芸術家の作品体験であり、そして世界の視点を知る、パスポートなしでできるグローバル体験。
日本に住むみなさまにおすすめします!
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